12話 個性

「竹田黎と、申します!今年で23歳になります!中学時代から剣道をやっており、現在は三段、全国大会出場の経験もあります!今朝、車に轢かれそうになっていた少女を助けてくるなど、悪運と、それに立ち向かう程度の正義感は持ち合わせているつもりです!よろしくお願いいたします!」


……意気込んだはいいものの、実は大してまとまっていないのであった。


語るべき自分の特徴など、塵ほどにない。


黎は自分自身に関して、ほとんどの事柄において平均より少し上であるだけの器用貧乏だ、と考えている。


ほとんど、であるため、もちろん例外もややある。

平均より劣るものもあれば、特段優れているものもある。


剣道、悪運、正義感の3つは、黎の中でもとりわけ特徴的な要素だと言えた。

とはいえ、どれも衝撃に欠ける程度の要素であろう。


自分の中では特筆して語るべきものであるが、一般的には「へェそうですか」で終わるものだ。

警視庁ともなれば剣道で段位を持っているのは普通のことであるし、正義感など言うまでもない。

悪運に関しては、むしろあって望ましいものではないのだ。


今朝、文字通りに人を救ってきたという点だけが、唯一ここにおける強烈な印象となりえたのではないかと思える。


……黎の頬には、うっすらと汗があった。


二人からは、歓迎を表す率直な拍手が送られている。

だが、藍梨は腕を組んだまま、手を動かす気配はなかった。


何を、考えているのか。


黎の首を、汗がしたたる。


……そして、藍梨から言葉が送られた。

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