『幻影の谷』
ヒディーに乗ったホセは気を失ったユーリをしっかり抱えていた。
「お爺様、ユーリはだいじょうぶ?」
後ろからユーキスがきく。
「だいじょうぶだ。ユーキスしっかりジジイに捕まっているんだぞ。」
空が灰色になり赤い光がたつ。
「うっとおしいやろうだな。チビ助おちるんじゃねえぞ。」
ヒディーが勢いよく首をあげ炎を吐いた。
「ウワッやりすぎだヒディー。攻撃は他にまかせて『幻影の谷』に急ぐんだ。」
風が耳もとでなるホセの体にしっかりつかまりユーキスは顔を伏せる。
「オリャア、お前らなんて髭でじゅうぶんだ!」
黒い魔物の群をヒディーがけちらせる。
ホセのかかげた腕に文字が蔦のように舞う。
光がさし 魔物は消えた。
「視界がよくなったよし降りるぞ。」
光の矢のようにヒディーは巨大な滝が落ちる谷間に降りた。
「ネオス王家もおちぼれたな闇使いで息子を暗殺しようとするとわ。」
ヒディーが怒りで目を光らせる。
「なにが起こったの?ヒディー、ホセ様。」
金髪の女性が洞穴から出てくる。
「あの悪魔王子が闇使いをよこしたんだ。」
ヒディーの言葉に女性は眉を寄せる。
「孫が呪いを受けたんだアイリーン、手当てを頼む。私は王宮に向かう、ヒディーだいじょうぶか?」
「ちょっと腹が痛いぐらいだ。俺も怒鳴ってやんなきゃ気がすまない。」
ホセをのせヒディーが飛びたった。
「中にはいりましょう。私の名はアイリーンです。安心しなさいここに悪の闇は入れません。」
赤い空間に黒い渦がある
その渦の中心に男が立っていた
男は銀色に光る長い爪をユーリに伸ばしてきた
爪がユーリを捕らえようとした瞬間、光の翼を輝かせた銀色のペガサスが現れた。
「私の息子をお前の汚の犠牲にはしない。お前はこの空間ごと朽ちる。」
光の爆発した
ユーリは優しい光りに抱かれた。
「ユーリ、ユーリ!もういじめないから目を開けて。」
体をゆらされユーリは目を覚ました。
「落ちつきなさい。だいじょうぶだから。」
泣き顔のユーキスと金髪の女性が立っていた。
「ここはどこ?父上は無事?」
「お父上もまもなく到着しますよ。ここは『幻影の谷』の洞窟です。さあ二人ともこれをお飲みなさい。」
石で出来たワンに入った水を渡される。
「だいじょうぶユックリお飲みなさい。」
ふらついたユーリを女性は優しく支える。
水を飲むと体のしびれが抜けていった。
「ユーキスこの石をユーリの額に当てていてくださいね。私はご両親を向かえに行ってきます。」
キラキラ銀色に輝く石を額にあてられるとユーリはまた眠りに落ちた。
ユーキスも石をもったまま眠りについた。
「マーシャンは終わるかもしれん。今回の件はガーリィンは絡んでいないと思う。」
母の低い響きの声がする。
「そう思いたい。仮にも王家で教育を受けてきたのだからタウンを潰すことの恐ろしさはわかっているはずだからな。」
タウンをつぶす?
聖獣達が子供を産み育てる美しい『マーシャン』が……なくなる?
「救えないの?無くなったらみんな困っちゃうよ。」
ユーリが言う前にユーキスが言った。
「ユーキス起きたのか。だいじょうぶ父さんが必ず守るから。」
癖のある赤い髪をなでる。
「絶対だよ!ウルンが言ってたんだウルン達みたいに空間を移動出来ない弱い者はこの地と共に生きるんだって。『マーシャン』が無くなったら死んじゃうよ。」
聖獣や魔力を持つ生き物と仲のいい息子達はたまにドキッとすることを言う。
「母はしばらくして帰れぬかも知れぬ。母が帰るまでこの洞窟でおとなしくしているんだ。」
二人はうなずく。
「俺は残ろう。城には父上が行ったようだし。ティム、お前はカラーと行くんだ。」
岩の上でうずくまっていた金色の鳥がカルメンの肩に乗る。
「留守を頼む。」
髪を結わえ直しカルメンは出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます