嵐の前の静けさ
怒りを久々に爆発させた。
コーリィンがいなければ『マーシャン』を留守に出来ない。
ガーリィンはユーリとユーキスを暗殺しようとしていた。
国王が呪を受けたのは二人のせいだとガーリィンは言いたいらしい。
「穢れはそなただ、なぜわからない?」
婚礼の儀式に呼ばれた相手がくる枝を垂らした大きな木が燃える。
カルメンの激しい怒りに水の流れる窪みからも湯気があがる。
「カラーもういいだろ。聖獣達が怯えているぞ。」
コーリィンに肩をゆすられ我に還る。
「すまん。」
紋様が赤く肌に浮き出ている。
マーシャンの地には一時しか半分は光がささない。
闇を見守り新入をふせぐのがアマリリス家の役目、光を守るのがネオスの守人だ。
「いばってても子供だな。」
カルメンの胸にもたれて眠るユーキスを見てコーリィンが目を細める。
「どれだけ修行したんだ。ユーキスが帰ってから食事もせずに寝るなんてめずらしい。」
カルメンは伸びてきた赤毛を優しくなでる。
ユーリもコーリィンの膝に頭をのせ眠そうだ。
「ユーキスが荒業をユーリにかけるからお仕置きしただけさ。負けるユーリもユーリだがユーキスは手加減しないから怪我するんだ。」
投げ出された腕には布が巻かれている。
ユーキスはあちこちで冒険するので毒虫にやられた刺し後だらけ、ユーリはユーキスの荒業でいつもどこかしら包帯巻いている。
「誰に似たんだろうなあ?ガーリィンはユーリぐらいの時は闇と立ち向かうぐらいは戦えたしカラーだって戦えただろ?」
「私はその頃は王宮にいたから魔力はあまり使ってはいなかったが安定はしていたな。ユーリはユーキスより強い力はある。コントロールが出来ないのは赤子の時にベガの乳で育ったからだと思う。」
ペガサス、タイガーは聖獣と呼ばれている。
聖獣は骨や血、毛皮すべてに力が秘められているという。
乳にも力があってもおかしくない。
大きすぎる力は幼子には負担がかかりやすいカルメンもユーリぐらいの時には力を制御する鉱石を髪に付けていた。
「腕がいい制御する物を作れる者がいれば良いがなかなか見つからない。ユーリとユーキスが来る前から術師達の集落で突然、術が使えなくなるという事件が多発していて鉱石を加工する技術師が居なくなってしまったんだ。」
カルメンも最近になってそれを知った。
民に不安を与えないために守人と王の間だけの極秘ごとになっていたことだったのだ。
「ガーリィンはいずれ闇に喰われるかもな。純血がなんだと私は言いたい。」
ガーリィンはネプチューンから暗殺者を雇ったらしいと噂がたっている。
「そうだティムからの伝言があったんだ。アイリーンさんの提案で『幻影の谷』に二人をしばらく隠したらどうかと?」
『幻影の谷』は闇との境い目、ディア山脈にある谷だ、そこに迷いこんだ者は帰ってこないという。
「アイリーンが言うなら安全な隠れ場所があるんだろうな。ティムが帰ってきたらアイリーンに返事を書こう。闇の旅から帰ってきたのか良かった。」
ティムは闇を調べるために兄弟のティセラと共に旅にでていたのだ。
「ああ、伝説のティみたいになって帰ってきたよ。あいつの尾が短くて輝きないとカミュがバカにしていたが、今は立派に伸びて輝いているぞ。」
自由奔放で庶民のように口の悪い王子とティムは会えば言い争いをする。
「カミュか、どこにいるんだれうな?王都にはいないようだが。そなたはほんとに王家を捨てて良かったのか?」
「心配ないさ俺は純血じゃないからね。俺の母は三目族でも混血だったんだ。血でいえばガーリィンかマヤがふさわしい。」
王家の王子は王が外で作った子が大半だ。
第二王妃は心が広い人で王子達を平等に育てくれた。
第一王妃、コーリィンの母は気性の激しい人で王の浮気ぐせに痺れをきらせ闇に飛び込んだという。
乳母に育てられたコーリィンは実母のことは知らない。
「ラルゴ王も気の毒といえばきのどくだが私は王の浮わついた気持ちが闇を広めたんだと思うぞ。」
カルメンの言葉にコーリィンは苦笑しながら寝てしまったユーリを抱き上げた。
「ンッ?カラー用心したほうが良いぞ今夜はお客が来そうだ。」
コーリィンは足で飛んできた黒い虫を潰した。
「闇使い、刺客か。子供達を上で寝かせよう。」
リィー様が息を吹きかける岩屋に闇は届かないだろ。
そう思いたい。
「ユーリを置いてきたら俺はヒジリ達と警護にたとう。」
ガーリィン、闇に果てたか?
マーシャンが闇にのまれればネオス王国はパニックなることをガーリィンは知っているはずだ。
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