めんめ

「少しだけ、嬉しかった」

 きょとん、と。目を丸くします。

 坊ちゃんは笑っていました。

「僕は、考えたことがなかったんです。僕の目が、何かの役に立つかもしれないということを」

 坊ちゃんは、とても嬉しそうにしていました。

「僕は少しだけ、嬉しかった」

 水たまりの消えた庭の名残を足で小突いて、僕は恥ずかしそうにしました。


「僕は、生きていてもいいのですね」


 当たり前ですよ、坊ちゃん。

 溢れそうになる贖罪を堪えて、私もまた、笑いました。

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