告白
実をいうと、逢原さんへの恋心を抑え切れなかった僕は、高校入学時に彼女に告白していた。
すっごいベタだけど、ノートの切れ端を手紙にして、それを彼女の靴箱に入れて、放課後に屋上へ呼び出して。
たった一言、付き合ってくださいと。頭を下げて。多分その時、緊張で声が裏返っていたかもしれない。声だけでなく身体も、共振で校舎が揺れるくらいに、ガクガクに震えていたと思う。
人生で初めての告白だった。一世一代の大決戦。僕の人生、一生分の勇気を振り絞った会心の一言。 もし、断られたらどうしようとか、嫌われたらどうしようとか、そんな不安も無かったわけじゃない。 それでも知ってほしかった。彼女に、僕の気持ちを。僕が逢原さんを好きなことを、伝えたかった。
だが、彼女の返事はノーだった。「私はあなたと恋人関係にはなれない」と、はっきりと言われた。
心の底からショックだった。あの瞬間、僕の世界は暗黒の闇に支配され、目の前が真っ暗になった。
どうしてダメなのか。僕のことが嫌いなのだろうか。僕に悪いところがあるのだろうか。なにか特別な理由でもあるのだろうか。
いろんなことを言いたい気持ちを、僕はぐっと堪えた。
そして彼女に「今までどおり友達でいてください」と頼んだ。恋人にはなれなくても、逢原さんとの関係は続けたかった。
逢原さんも、僕と友達でいることには問題ないと言ってくれた。
僕はホッとした。告白したことで、僕と逢原さんの間に溝ができてしまうのではないかと、不安だった。
でも、取り越し苦労だった。僕と逢原さんは友好な友人関係を築き続けている。僕はこの関係を壊さないように、気をつけようと心に誓っている。逢原さんとは長い付き合いでいたい、絶対に壊してたまるものか。
クロちゃんの言うとおり、逢原さんのことはきっぱり諦めた方がいいのかもしれない。
新しい恋を探した方が、有意義な高校生活を送れるのかもしれない。フラれたのに、相手を思い続けるのは、時間の無駄だと笑われるかもしれない。
でも、僕は逢原さんの事が好きだ。その気持ちは今も変わらない、多分これからも変わることは無いだろう。
「(ったく、一途なのは結構だが、ストーカーみたいなことはやめろよ)」
「(分かってるよ)」
彼女を傷つけるようなことは絶対にしない、それはちゃんとわきまえている。ストーカーになんて、なってたまるか。
僕はクロちゃんに返事をしながら教室へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます