—06— 乾いた大地の村

 ウィル達がイナク村に着くとそこには村人達の倒れている姿があった。皆あばらが浮き出るほどやせ細り、着ている服の生地が余るようになっていた。中には子供の姿もあった。子供達はお腹が空いているはずなのにもう気力さえもわかないのか静かにただどこかを見つめているだけだった。想像以上にひどい状況に皆言葉を失った。


「ひどい・・・」


「これが今の村の現状です・・・。食べ物も水も摂れるものから搾り取っているのですがそれではとても足りずにこのようになってしまいました。まだ死人が出ていないのがせめてもの救いですが、それもいつまで続くかわかりません・・・」


「これはちょっと想像以上だね。なぁクラウ、国も王城に食べ物蓄えてあるんだろ?それを持ってきてもらうってことはできないのかね?」


「それは難しいな」


「なんで?この村の人達がこんなに困ってるのに・・・。王族や貴族なんて余る程食べ物もっているでしょ?」


「何も国も意地悪で食べ物を分け与えていない訳じゃねぇ。そういうもんはいろいろと大変なんだよ。この国の町や村の奴らは貧しいって訳じゃねぇが自分達が生きるために必死に頑張っている。そのうちの一つに施しを与えるってことは簡単なことじゃねぇ。この村がこのような状態ってことを調べて他の町や村に周知しなければたちまち不平不満が出るだろう。それに簡単に与えてしまうと他の町や村の人達は自分達も施しが欲しいと思うはずだ。一度そういう感情が湧き上がると抑えることもなかなか難しい。いずれにせよ慎重にことを進めないと国が不安定に成りかねない。・・・もどかしいことだがな」


「それじゃあこんな状況を放っておくっていうの?」


「それを何とかするために俺達が来たんだろ?それじゃあ嬢ちゃん、詳しい話が聞ける人のところまで案内してくれるか?」


「はい、あちらの建物で私達の村長がいるのでそちらまで付いてきていただけますでしょうか」


 ウィル達はコルネに付いていき、この村の村長からより詳しい話を聞くことにした。村長の家までの道中周囲を見渡したが、目に入ってくるのは異常なまでに干上がってひび割れした地面と枯れ果てたいくつもの果樹であった。


「この地方じゃこんなに乾燥することってあるんですか?」


 何も知らないウィルがクラウやフェルナに訪ねた。


「しばらく雨が降らなくて多少飲み水が不足するっていうことはたまにどこの村でもあるけど、この緑に覆われたグラス大陸じゃ珍しいことだね」


「あぁ、こんなことは今まで見たことも聞いたことはねぇ。それにここに来るまで周囲を見渡してみたが、この村と川の上流の方だけ異常に乾燥してやがる。川の上流の方で何か起きているのかもしれねぇ」


 ウィルは二人の言葉を聞いてこれが異常気象であることを理解した。そうなるとオーパーツが関わっている可能性がかなりある。自然の力で異常気象が発生することは当然あるがそのようなことはこの気候が安定したグラス大陸では稀である。しかし、このような場所でもオーパーツの暴走により異常気象が発生することは容易に考えられる。


「なるほど、村の人もいろいろと調べてはいたかとは思うのでその辺の話も村長から聞いてみますか」


 そのようなことを話しているとやがて村長の家に着いた。中に入るとそこにはほかの村人と同様かなりやせ細って杖をついた白髪の老人がいた。

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