—07— 干魃の原因

 その村長はコルネとウィル達の姿を見つけるとふらついている足を杖で支えながらウィル達の方へと歩いてきた。途中倒れそうになったところをコルネが駆け寄っていき支えた。


「客人よ、このような姿でもてなしもできずにいることをお許しくだされ。コルネ、この方達はギルドの方かえ?」


「はい、村長。この村のためにヴィオラの街から来てくださったギルドシャムロックの方々です」


「おぉ・・・ギルドの方よ、心の底から感謝します・・・」


「俺達が来たからって問題が解決する訳じゃねぇさ。まずは話を聞かせてくれないか」


「そうですな・・・ではこの老いぼれの話を聞いてくだされ。あれはおおよそ五ヶ月ほど前のことでした・・・」


 そういうと村長は自分が知っている限りのことをウィル達に話し始めた。村長の話によると、約五ヶ月前くらいから川の水が完全に干上がってしまい、村へ水が供給されなくなったようだ。水が供給されなくなったことにより果樹も畑で育てていた穀物も枯れてしまい収穫ができなくなった。日々過ごしていくための最低限の食べ物しか生産しないこの村には食べ物もお金もそれほど蓄えがあるわけではなかった。そのため、このままではまずいと思った村の男達が川の上流の方まで行って調べてみると、どうやら源泉が枯れているようだった。しかし、調査を続けるもこの源泉が枯れてしまっている理由が全く分からず、現在のような状況になってしまっているようだった。


「その源泉は突然枯れてしまったのですか?それまでに地震や周囲の山の噴火などはありませんでしたか?」


 ウィルは原因を絞るために基本的なことを確認した。地下水脈は地形の変動により水質が変わったり流れる経路が変わったりすることがあるからだ。


「いえ、そのようなことはありませんでした」


 ウィルの質問に対してコルネが答えた。


「私達にも何が起きているのか全くわからないのです。干上がって水は不足しているとは言いましたが、雨は普段通りに降るのです。それにも関わらず川には水が流れず、まるで水だけが地面が無いかのように抜けていって無くなってしまうのです。雨のときに多少は容器で貯めることができるのですが、自分達の飲み水を確保するだけで精一杯で畑や果樹園に回すことができません」


「雨が降るってのに干上がっちまうのか?そいつは妙だな」


「この周囲で何かしらの異変が起きていることは間違いなさそうだね。なあウィル、何か原因がわかりそうかい?」


 フェルナは右手を口に当てて考え込んでいるウィルに訪ねた。ウィルはフェルナの問いに答えずしばらく考え込むような仕草をした後口を開いた。


「村長さん、コルネさん。この付近に遺跡みたいなものはありませんか?」


「遺跡・・・ですか?それであればこの村から少し川に沿って上っていった近くにあるにはありますが・・・」


「しかしあの遺跡はもう二十年も前にディガー達によって調査され尽くして荒れ果ててしまっていますじゃ。今は誰も近寄ろうとしません」


「そうですか・・・もしかすると・・・」


「何かわかったの?」


 原因がわかったのかと気になったラスがウィルに話しかける。周囲の皆も何かわかったのかと視線をウィルにじっと向ける。


「あくまで可能性の一つですが、これはオーパーツによるものかもしれません」


「オーパーツって・・・でもこんなに広い範囲に影響があるオーパーツなんて聞いたことないよ?」


「私もメルトと同じで聞いたことなんてありません」


「確かにもしかしたらオーパーツかもしれないな。お前達が知らないのも無理がないかもしれないが、結構影響範囲が広かったり効果が強くて危険なものってのは大体王国騎士団が回収して管理しているんだ。俺もこれほどの範囲に影響があるようなオーパーツは流石に王国騎士団にいたことにも見たことはないがな」


「遺跡は調査され尽くしたとは言っていますが、調べてみる価値はありそうです。俺もこの街に来るまでにいくつもの遺跡に潜ってはいたのですが、よく調べてみるとまだ発動していない仕掛けがあることが多くていくつものオーパーツが眠っていたこともあったので今回も何か見逃している可能性があります」


「なるほどねぇ、入念に隠されたオーパーツがあるかもしれないってことか。確かにそれはなんかやばそうなもんがあるかもしれないね」


「はい。そういったオーパーツが何かのきっかけで力が発動して付近一帯が干上がってしまったのかもしれません。本当にオーパーツなのか、オーパーツだとしてもどのような力を持っているのかは全然想像つきませんが」


「まあここにいてもこれ以上何かわかりそうにないしとりあえず遺跡に行っちゃえばいいんじゃない?遺跡なんて初めてだからワクワクしちゃうよ!」


「ちょっと、メルト!不謹慎でしょう?でも確かにメルトの言うとおり遺跡に行ってみた方がいいかもしれませんね」


「でもラス、遺跡に行くっていってもここの遺跡に入る資格は持っているの?私もクラウもあなた達もディガーの資格は持っていないはずよ?」


「それなら大丈夫よ!ウィルがLv.2のディガーの資格を持っているから。ね、ウィル?」


 この国にある遺跡はディガーの資格を持っていないと入ることができない。フェルナはそのことを心配していたようだが、何故かラスが得意げにウィルが資格を持っていることを告げた。


「はは、そうだね。ラスのおかげでなんとか。村長さんの話では調査され尽くしたってことだからLv.2の資格があれば中に入って調査することができるはず。一人ディガーが入れば同行者も認められるはずだから皆で入れるはずだよ」


「おっし、なら決まりだな!とりあえずその遺跡に行ってみっか!」


「「「「おーっ!」」」」


 一同は川の上流にある遺跡に向かうことにした。コルネが案内を申し出たが遺跡の調査は危険を伴うこともあるので弱ったコルネには酷だろうと判断し、簡単な地図だけ書いてもらってウィル達だけで向かうことにした。


「あ、でもちょっとその前に・・・」


 不意にラスが自分の荷物をがさごそと漁り始めた。そして中くらいの包みを取り出した。


「コルネさん、これ。そんなにたくさんはないけどこの前のお粥ギルドにあっただけの材料で作ってみたの。足しになるかわからないけどこれ村の皆で分けてください」


「ラスさん・・・何から何までありがとうございますっ。村の皆も喜びます」


「ふふっ、それじゃあちょっと行ってきますね!」


 そう言うとウィル達は遺跡に向かって出発した。

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