第4話 岸田香里22歳
アパートの浴室で岸田香里は浴槽に流れる自分の血液を呆然と見つめていた。
気が着くと浴室でリストカットしていたのだ。死んでいない自分に気がついて傷口をタオルで巻いた。こんな事を何度も繰り返していた。
「自分はこの世にいない方がいい」
友人と口論になったり、試験の成績が悪かったり、財布を落としたり、何かあると必ずこう思ってしまう。香里は大学4年生だが今年1月から大学を休学していた。授業が全く頭に入ってこない。学校へ行くのも億劫になっていたからだ。落ち込みやすい性格。半日も壁をじっと見つめていたりする日々。
「消えたい」
「生まれて来なかったことにしたい」
冷静に自分を見つめることができる時間もある。
「どうしてこんなふうに落ち込んだりしちゃうんだろう」
香里は思い切って精神科の病院に行ってみた。診断結果は『女性ホルモン分泌低下に起因するうつ病』だった。薬で治せるとのことだが長期の治療を覚悟しなければならない。そしてカウンセリングに通うことを進められた。うつ病が悪化しないためにも必要らしい。
「カウンセリングなんてイヤ。先生に色々なことを聞かれて今までのことを思い起こされたら余計落ち込んじゃう。」
香里はカウンセリングには行かず薬も時々した飲まなかった。
すべてをリセットしたいという願望はおさまらない。やっぱりこの気持ちは死ぬことでしか消えることはない。死ぬなら、誰にも存在がわからないように死にたい。
どんな方法があるのかな?
香里はネットで検索した「自殺サイト」のある掲示板にたどり着いた。
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