第2話 山田勇輝26歳

山田勇輝は26歳独身。東京都世田谷区の小さな自動車整備工場で働いていた。

しかし、自動車業界の不況もあって、去年9月に会社は倒産してしまった。

しっかり者で明るい性格。クルマが大好き。ガレージで自動車の整備をしている仕事が好きだった。


会社が倒産してから、都内の自動車整備工場を調べて片っ端から電話をかけたが求人をしている整備工場など1社も無かった。ハローワークで失業保険を受けながら職を探していたが見つからずいよいよ失業保険の給付期間も来月で終わってしまう。


「どこにも就職なんてできない。この世でひとりぼっちだし。何て世の中なんだろう。希望なんて何もないよ。もう生きていても仕方が無い。死んだ母さんのところに行こう」


勇輝は、すでに他人が住んでいる長野の実家の近くにある母の墓を訪れた。荒れた墓を丁寧に掃除し線香と花を手向け手を合わせた。


「かあさん、ごめんな。俺こっちでもう生きていられないよ。そっちに行ってもいいよな?そっちでかあさんの手打ちうどん、また食わせてくれよ」


長野から帰京する中央本線特急電車の中で勇輝は目の前を飛び去っていく田園風景を眺めながら考えた。


「かあさんは女手ひとつで俺を育ててくれた。そして俺の幸せだけを願って死んでいった。これ以上苦しむ俺を見たくないんじゃないだろうか。『辛いならこっちへおいで』って言っているんじゃないか、そうだきっとそうに違いない」


勇輝は思わず電車の中で声に出してしまった。「かあさん、俺、そっちに行くからな!」


でもどうやって死んだらいいのだろう。苦しんで死んだらかあさんが悲しむだろう。やっぱり一瞬のうちに死んでしまわないと。


「どんな方法があるんだろう・・・」


勇輝はネットで検索した「自殺サイト」のある掲示板にたどり着いた。

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