麗華陥落

 私は西園寺蘭子。霊能者です。


 草薙留流さんの依頼を受け、彼女の親友が囚われている組織の本部がある八王子のある場所に向かった私達。


 到着したそこは、どの宗教なのかよくわからない建物が建ち並ぶ渾然一体としたところでした。


 出迎えてくれたのは、そこの当主である天野天童。


 その天童は薄い絹製の金ピカのガウンを脱ぎ捨てました。


 下には何も着ておらず、全裸です。要するに露出狂です。


 親友の八木麗華は狂喜していますが、私と弟子の小松崎瑠希弥は目を背け、顔が爆発しそうなくらい赤くなっています。


「美しいお嬢さん方、さあ、ここでは着衣は不要です。お脱ぎください」


 天童は淫の気を放ちながらあやしく微笑みます。


「はいー!」


 すっかり天童の虜となってしまった麗華は二つ返事で服を全部脱いでしまいました。


 そしてその豊満な乳房を揺らせて、天童に駆け寄ります。


「麗華!」


 私は仰天して麗華を呼び止めようとしましたが聞こえていないようです。


「さあ、おいでなさい」


 天童は麗華をにこやかに迎えます。


「お上手ですね、お嬢さん」


 天童は麗華の髪を撫でながら言いました。


 以前出会った蘆屋道允というインチキ陰陽師より凄い淫の気です。


「先生、私、何だか身体が熱くなって来ました」


 瑠希弥がトロンとした目で私に囁きます。


 まずいです。天童は瑠希弥に強力な淫の気を送って来ています。


「先生……」


 瑠希弥は私に抱きついて来ました。彼女の大きな胸がムニュウッと腕に当たります。


 天童は私と瑠希弥の気の流れを読んで、別の方法で仕掛けたようです。


「先生……」


 とうとう瑠希弥が私の耳を舐め始めてしまいました。


「ああ……」


 感じてしまいます。瑠希弥に舐められているという何とも形容しがたい背徳感が余計身体を火照らせます。


 ダメです。私達は三人揃って、天童の術中に嵌ってしまいました。


「瑠希弥……」


 私も自分が抑え切れなくなり、瑠希弥の唇を貪りました。


 互いの口の中を舌がうごめき、絡み合います。


「おお、これはまた美しい光景だ。さあ、貴女方も全てをさらけ出しなさい」


 天童の呪文のようなその言葉で、私と瑠希弥は互いの服を脱がせ合いました。


「瑠希弥」


「先生」


 もう何が何だかわからない状態です。


「先生……」


「嫌よ、瑠希弥……。蘭子って呼んで……」


 私は瑠希弥の乳房を舐めながら甘えるような声で言います。


「蘭子……」


 瑠希弥は潤んだ目で言いました。


「嬉しい!」


 私の舌は瑠希弥のおへそを通り過ぎます。


「素敵ですよ、お嬢さん」


 天童の淫靡な声が聞こえました。


「さあ、次は貴女達の番ですよ」


 天童は気を失ったらしい麗華を地面に倒すと、ゆっくり私達の方へと近づいて来ました。


 天童の放つ淫の気の質が変わりました。


「はい、天童様」


 私と瑠希弥は立ち上がり、天童に向き直ります。


 ですから、天童が舐めるように上から下まで見ているのに恥ずかしいという感情が湧いてきません。


 もう私と瑠希弥は完全に彼の手中でした。


「では、まずは貴女です」


 天童が私の手を取りました。


「ありがとうございます、天童様」


 心にもない事を言い、微笑む私。


 天童は最初に私の口を吸います。舌を絡め合い、まさしく貪るような激しいキスです。


 もしかして、これが私のファーストキスでしょうか?


 術が解けたら涙が止まらなくなりそうですが、今はそんな事を考える事もできません。


 そして天童の右手が私の乳房をもてあそびます。


「ああ……」


 私は感じてしまい、うめいてしまいます。


「いやん、天童様」


 気を失っていたはずの麗華が天童の背後から抱きつきました。


「これは驚いた。また意識を回復するとは、貴女は相当の色魔ですね、お嬢さん」


 天童が振り返るのを待ち切れないかのように、麗華は天童に飛びつきました。


「蘭子」


 ぼんやりと麗華と天童を見ていた私に瑠希弥が近づきました。


「もう一度……」


 私達も続きを始めてしまいました。エンドレスです。


 もうここに何をしに来たのか、わからなくなっています。


『おい、もう一人の蘭子、何してるんだ!? あのエロヤロウにすっかり取り込まれちまって!』


 心の中でいけない私が怒鳴りますが、今の私にはいけない私の声すら聞こえません。


「瑠希弥……」


「蘭子……」


 この世の終わりまでこうしていたいと思いながら、私と瑠希弥は互いを舐め合いました。


『ダメだな、もう。入れ替るぞ』


 いけない私は強制的に私と入れ替り、表に出て来ました。気の量と質が変わり、周囲につむじ風のような気流が起こります。


 その影響で私と瑠希弥にかけられていた淫術が弾け飛びました。


「いや!」


 瑠希弥は自分を取り戻したので、慌てて脱いだ服をかき集め、胸と股間を隠します。


「む?」


 また麗華と楽しんでいた天童の動きが止まります。


「誰だ、お前は?」


 天童の顔が急に凶悪になりました。いけない私の力を感じたようです。


「私は西園寺蘭子様だよ!」


 後ろに引っ込んだ途端術が解けた私はいけない私の態度に赤面しそうです。


「なるほど、お前があの噂の裏蘭子か? そして、この淫乱が八木麗華、そっちの巨乳が小松崎瑠希弥だな?」


 天童は麗華から離れ、ニヤリとしました。


「これほどの上玉が罠にかかってくれるとは思わなかったぞ。本日は大漁だな」


「やかましいよ、変態ヤロウ。これからこの蘭子様がたっぷりお仕置きしてやるから、覚悟しな!」


 いけない私は仁王立ちで大見得を切りますが、全裸なのでちょっと迫力に欠けます。


 それに恥ずかしいのでやめて欲しいです。


「なるほど。果たしてできるかな? お手並み拝見といこうか」


 天童はまた凶悪な顔になって言いました。


 いけない私は大丈夫なのかしら?


 


 西園寺蘭子でした。

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