エロ住職現る

 私は西園寺蘭子。霊能者です。


 元カノの逆恨みで操られ、私を強姦しようとしたイケメンの長良邦彦さん。


 親友の八木麗華が長良さんを気に入り、催眠商法紛いの方法で契約を交わし、私達は長良さんと共に逆恨みの元の大久保美薗さんが住んでいる町に行きました。


 ところが、その町全体が怪しげな宗教団体に制圧されており、町中の男達が淫靡な目で歩いていました。


 人海戦術で追い込まれた私と麗華は、一計を案じて敵の本拠に連れて行ってもらう作戦に出ましたが、乗せられたトラックが冷蔵車で、麗華は閉所恐怖症を発症し、役立たずになっていました。




「ほうほう。なかなかの上玉ですな」


 黒い袈裟を着た僧侶風の老人が現れました。


 僧侶風と表現したのは、その人の醸し出す気が決して修行を積んだ仏法者のものではないからです。


「貴方は何者? 袈裟を着ているけど、お坊様ではないわね?」


 私は男達に押さえつけられながらも、その老人を睨みつけて尋ねました。


「ほっほっほ、これはまた気の強いお嬢さんだ。私が僧でないとおっしゃるのか?」


 老人はにこやかな顔で尋ね返して来ます。


「失礼だぞ! この方こそ、明日の日本の仏教界を背負われる方だ!」


 美薗さんは目を血走らせて怒鳴りました。


 これは洗脳などという生易しい方法ではありません。

 

 魂を縛り、全てを掌握する邪法です。


 ますますお坊様ではありませんね。


「お坊様ならば、何故周りにいる人達を邪法を使って操っているのか、答えてください」


 私は更に押さえつけて来る男達に抵抗しながら言いました。


「なるほど。これはお仕置きが必要ですね、大久保さん」


 老人はニヤリとして美薗さんを見ました。


「はい。是非、一番きついお仕置きをしてください」


 美薗さんも嬉しそうに言います。


「始めなさい」


 老人の目が鋭くなり、ギラッと光ります。


 すると男達は私と麗華を抱え上げ、移動しました。


「何をする気?」


 私は高々と掲げられてスカートの中が丸見えなのを気にしながら、老人を見ました。


 麗華はすでにパンツ丸出しで運ばれていますが、まだトリップしたままのようです。


「皆に子種を注ぎ込んでもらう。そして、大久保さんを傷つけたあの男に罪を背負ってもらうのだよ」


 老人は狡猾な顔で答えました。


「そんな事をしたって、DNAを調べれば、長良さんが犯人じゃないってわかるわよ」


 私が言い返すと、


「そんな事はわかっている。しかし警察は『私がやりました』と言った者を犯人にするのさ。その方が楽だし、手っ取り早いからね。もちろん、実際にあいつの子種も混ぜるしね」


 老人は更に悪い顔になって高笑いしました。


「何ですって……?」


 私は思わず美薗さんを見ました。しかし彼女は完全に老人に操られているため、一緒に笑っているだけです。


「でも、被害者の私達が証言するわ。この人は犯人ではありませんて!」


 私は向きを変えられて見えなくなった老人に叫びます。


「無駄だ。貴女達は強姦されて殺される事になっている。証言はできんよ」


 老人のその言葉に私は唖然としました。


 いくら長良さんが憎いと言っても、このままでは彼は無実の罪で刑務所行きです。しかも、悪くすれば、死刑……。


 美薗さんは本当に長良さんの事が憎いの?


 それが気になりました。


 


 私と麗華はお堂の中に連れて来られました。


 そこには、象に似た巨大な歓喜天の像が飾られていました。


 やはり、これは真言立川流の流れをくむもののようです。


 その流派には、男性の子種と女性の愛液を混ぜ合わせて髑髏どくろにそれを百二十回塗り、加持して祀り上げるという儀式があると言われています。


 あの老人はそれを実践するために美薗さんを利用しているのでしょうか?


「ああ……」


 麗華は服を剥ぎ取られ、すでに全裸にされています。


 そして彼女を押さえつけている男達も全裸。


 しかも、えーと……。描写できません。


「きゃっ!」


 私も男達に服を脱がされ、スカートを切り裂かれ、床に押し倒されました。


「さあ、皆さん、思う存分注ぎ込んでおあげなさい。そうすれば、貴方達は必ずや極楽浄土に行けましょう」


 そんな事をして極楽浄土に行けるのなら、エッチなビデオに出ている男優さん達は神になっていますよ。


「まずはご住職様からお願い致します」


 何故か裸になっている美薗さんが言いました。


 結構胸が大きくて、あそこの……。おっといけませんね。


「わかりました。では私が手始めに見本をお見せしましょう」


 老人は袈裟を脱ぎました。


 道鏡という奈良時代の僧は、


「道鏡は座ると膝が三つでき」


と江戸時代の川柳に歌われるほど、えーと、あれが大きいと言われていたそうですが、この老人も凄いです。


 私は本当に男性経験がないので、大きさとかはわからないのですが、間違いなく凄いと思います。


 ジッと見てしまいそうになりましたので、目を閉じました。


「ふむ。こちらのお嬢さんは、まだ少し成育が足りないようですね。こちらのお嬢さんは毛深いですが、なかなかの名器のようですな」


 老人が言うのが聞こえました。


 成育が足りない? 冗談ではありません! 私はもう二十四歳です。


 十分成育していますよ! その言葉、あの子にも聞かれてしまいましたよ!


 どうしてくれるんですか、もう!


 ああ、いけません、また出て来てしまいそうです。いけない私です。


「ぬあ!」


 私を押さえつけていた男達は、私の身体から放たれる強烈な気によって跳ね飛ばされ、床に叩きつけられました。


「む?」


 麗華にのしかかろうとしていた老人が動きを止め、私の方を向きます。


「何なの?」


 美薗さんも驚いて私を見ています。


「成育不足で悪かったな、デカマラジジイ!」


 いけない私はピョンと飛び起き、老人を睨みつけました。


「何ですか、貴女は? 先程のお嬢さんも気が強かったが、貴女はそれどころではない。人間ですか、本当に?」


 老人は眉をひそめて私を睨み返します。


「人間だよ、ジジイ。てめえらのようなエロエロな化け物とは違って、正真正銘の人間さ!」


 そう言いながら、いけない私は中指を突き立てます。


 ああ、忘れたい……。


「ほう。それは面白い。これは犯し甲斐がありますね」


 老人は怯むどころか、更に闘志を燃やしたようです。


 根っからのスケベなのでしょうか?


「この西園寺蘭子さんを犯す、だと? 言葉に気をつけろよ、ジジイ!」


 いけない私がヒートアップします。


 そんな事を言っている間に、麗華がピンチです。


 まだ閉所恐怖症から脱していない麗華は、まさにされてしまいそうです。


「インダラヤソワカ」


 いけない私は何度も申し上げておりますが、情け容赦がありません。


 操られているだけの人達でも手加減などせず、制裁を加えます。


「ぐぎゃあ!」


 帝釈天真言の雷撃が炸裂し、麗華にのしかかっていた男達が吹っ飛び、気を失いました。


「は!」


 そしてようやく麗華も長旅からご帰還のようです。


「げ、蘭子……」


 麗華は途端に私がいけない私になっている事に気づき、顔を引きつらせます。


「おう、麗華、まだ未遂だったか。良かったな」


 そう言ってのけ反って笑ういけない私。


 ああ、記憶から削除したいです。


「西園寺蘭子……。なるほど、貴女があのサヨカ会を壊滅させた霊能者ですか」


 老人はニヤリとして言いました。


「何だ、あの化け物と知り合いか?」


 いけない私はフッと笑います。すると老人は、


「知り合いではありませんがね。その件に関しては、お礼を言わせていただきますよ。サヨカ会は我らにとっても邪魔な存在でしたからね」


とちょっとビクッとするような事を言います。


「何だと?」


 いけない私はムッとしたようです。嫌な奴に礼を言われるのが気に食わないのでしょう。


「さてと。ご挨拶もすみましたから、そろそろ儀式を始めましょうか、西園寺さん」


 気のせいかも知れませんが、老人のあれがさっきより更に大きくなりました。


 もう「膝」どころではありません。


 子供の顔くらいあります……。気持ち悪いです……。


 本当に大丈夫かしら?


 


 西園寺蘭子でした。

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