裏蘭子降臨!

 私は西園寺蘭子。霊能者です。


 久しぶりに一緒に寝泊りした弟子の小松崎瑠希弥がG県に去り、親友の八木麗華が大阪に帰ってしまい、人恋しさが倍増していた私。


 仕事に没頭して、寂しさを紛らわそうと思っていた時、埼玉県の菖蒲学園という女子校から依頼がありました。


 これ幸いと学園に向かった私でしたが、それは罠だったのです。


 悪霊を退治して欲しいというのは嘘で、むしろその悪霊と化している学園の創業者である初代園長を祀っていました。




 教頭先生と生徒さん達があられもない姿で私を取り囲んでいます。


「さすが、音に聞こえた西園寺蘭子。そう簡単にはいかないようですね」


 教頭先生はプルンプルンと三段腹を揺らせながら言います。


「ええ。そう簡単にはやられませんよ、私は」


 私はスーツの内ポケットからお札を取り出し、祠に投げつけました。


「な、何をするう!」


 祠にお札が張り付くと、教頭先生が絶叫しました。


 どうやら、初代園長の霊は、教頭先生を触媒にして、その力を生徒さん達に及ぼしているようです。


「その禍々しいお札を剥がしなさい!」


 教頭先生が生徒さん達に命じました。彼女達は言われるがままに祠に向かいます。


「させないわ……」


 それを阻止しようと思って動こうとした私を、別の生徒さんの一団が取り押さえました。


「く……」


 大柄な生徒さんが私を羽交い絞めにして、もう一人が両足首を押さえつけたので、完全に動きが取れなくなりました。


「お姉さん、早く私達の仲間になろうよ」


 一人の生徒さんが焦点のあっていない目をして私に近づきます。


「オンマリシエイソワカ」


 印が結べませんが、摩利支天の真言を唱えてみます。


「効かないわよ、そんなの」


 やはり印を結ばないと威力が半分にも満たないようです。


「ほらあ、早くう」


 その生徒さんは私のブラウスのボタンを外しにかかり、他の生徒さんがスカートのファスナーを下げています。


 女子高生に脱がされる。何という仕打ちでしょう。涙が出そうです。


 ブラウスのボタンが全部外され、スカートもずり下ろされます。


「ストッキングは面倒だから破いちゃいなさい」


 教頭先生が復活して言いました。ということは、お札が剥がされてしまったという事ですね。


 ストッキング……。それ、安くなかったんですけど……。


 無残な状態にされてしまいました。


「わあ、お姉さん、このブラ、私が小学生の時にしていたのと同じだよ」


 生徒さんの一人がそう言ってケラケラと笑いました。


 いけません。ブラの事をそんな風に言っては……。


 しかも、言うに事欠いて、小学生の時のブラと同じですって!?


 もうダメです。私自身が限界です。


 バシュンと何かが弾けるような音がしました。


「きゃあ!」


 私を押さえつけていた生徒さん達が一斉に後ろに吹き飛び、尻餅を突きました。


「だ・れ・が、小学生のブラだ!」


 完全に怒りMAXの状態で、「いけない私」が降臨しました。


「てめえら、年上の人を敬う気持ちを持ちやがれ!」


 いけない私はいつになくまともな事を言いました。


 確かにその通りですが、今そんな事を指摘している場合ではありません。


「む? 気の質が変わりましたね? 貴女はどなたです?」


 教頭先生がようやく、というか、急に教育者らしい顔つきになりました。


 とは言え、三段腹とすっかり垂れ下がった乳房を丸出しにしていますが。


「はあ? 何言ってるんだ、このクソババアは? 私は西園寺蘭子様だよ。頭悪いのか?」


 いけない私は絶好調の毒舌を放ちます。年上の人を敬う気持ちはないのでしょうか?


「おやまあ、口の利き方を知らない人ですね。そんな人に私の可愛い生徒についてあれこれ言われたくはないわね」


 教頭先生の顔が凶悪になりました。


「お仕置きをしないといけませんね」


 いけない私はそんな事を言われると喜ぶタイプです。


「へえ。お仕置き? この蘭子様にかい? そりゃあ面白い。やってみなよ、できるものならさ」


 いけない私はニヤリとして大股開きになり、挑発します。


 今はブラとパンティのみなのですから、あまり脚を広げないで欲しいです。


「やっておしまいなさい」


 教頭先生の号令がかかりました。


「何が始まるのかな?」


 いけない私は嬉しそうに呟きます。その時でした。


「うおお!」


 いきなり頭上から液体を大量にかけられました。


 どうやら、部室棟の二階の窓からかけられたようです。


「な、何だこれは!?」


 いけない私はその液体がかかった身体を見て言いました。


 ヌルヌルしています。何でしょう?


「さあ、その礼儀知らずのお姉さんにお仕置きをしてあげなさい」


「はい、教頭先生」


 生徒さん達がニコニコしながら一斉にいけない私に近づきます。


「わわ!」


 そのヌルヌルはどうやらローションのようです。


 用途はよくわからないのですが、麗華がよく買っているのを見ました。


 ヌルヌルは足元まで届いていたので、いけない私はその場にドスンと倒れてしまいました。


「わわ、やめろ、何考えてるんだ、私は女だぞ!」


 生徒さんに圧し掛かられていけない私が動揺しているのは面白いのですが、これはまずい状況です。


「わはは、やめろお!」


 生徒さん達が私の身体のあちこちを舐め始めたようです。


 いけない私は、最初はくすぐったがっていましたが、そのうちに、


「あああ……」


 感じて来てしまったようです。いつの間にか、ブラもパンティも剥ぎ取られています。


「くうう……」


 ある箇所を舌で舐め回され、いけない私は痙攣しました。


 どうやら、いけない私はこの手の攻撃に弱いようです。


 いや、私自身も弱いですけど。


「さあ。貴女も私達と同じ神を崇めるのです、西園寺さん」


 教頭先生の後ろから、園長先生が現れました。


 園長先生ももちろん全裸です。しかも、プルプルした三段腹の下の股間に何か着けています。


 天狗の鼻のような……。


 え? もしかして……。


 あの、えーと……。テンパってしまって、どういう事かわかりません。


「ああ!」


 私は両手両足を押さえつけられ、股を開かされ、迫って来る園長先生を見ている状態です。


 嘘! いくら何でも、初体験がこれって……。いえいえ、こんな状態でそんな事、絶対にしたくありません!


「さあ、力を抜いて、西園寺さん」


 園長先生がすぐそばで膝を着きます。


「痛くないから、安心して。この子達も皆こうして我が神の世界に入ったのよ」


 満面の笑みで恐ろしい事を言う園長先生。


 その言葉に、いけない私ではなく、本来の私が切れました。


 まだこれからいろいろと経験して育って行くべき子達に何て事を!


 全身の気が一気に高まり、爆発的に膨らみました。


「ひいい!」


 園長先生は元より、私を押さえつけていた生徒さん、そして周りにいた生徒さん、教頭先生、全てを巻き込んで、私の中の気が炸裂しました。


 やっと身体の自由を取り戻し、いけない私も引っ込んでくれたので、ホッとして起き上がります。


 取り敢えず、この人達はもう大丈夫ですが、まだ本体が残っています。


「我が願いを邪魔するのか、娘?」


 どうやら初代園長が降臨されるようです。


 祠が揺れ、中から禍々しい気が噴き出して来ました。


 悪霊化していますね。もう浄化は無理でしょう。


 吹き飛ばすしかないようです。


「え?」


 私はその本体の気の大きさに驚いてしまいました。


 祠から出て来た初代園長の霊は、まさしく神に近づこうとしていたのです。


 決して神にはなれない禍々しさですが。


「許さぬぞ。我が百年の計を邪魔する事は断じてさせぬ」


 ゆっくりと初代園長の姿がはっきりして来ます。


「あら?」


 更に驚いた事に、初代園長は享年二十七歳。


 私よりほんの少しお姉さんなだけですね。現在の園長と違って美人でスタイルもいいです。


 服装は神社の巫女のような衣ですが。


 しかも、百合の世界にのめり込んでいたので、男性を知らないまま亡くなったようです。


 何とも因縁深い霊ですね。


 何とか説得できるでしょうか?

 


 西園寺蘭子でした。

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