黒い着物の少女
死の予告
私は西園寺蘭子。霊能者です。
先日、親友八木麗華のあまりにも考えなしの行動をかなり強めに
嫌われてもいいと思って言ったのです。
でも、麗華はわかってくれて、謝ってくれました。
そんな私達のやり取りを見ていて、同居人の小松崎瑠希弥が、
「私も、先生と一生お付き合いしたいです」
と言ってくれたので、私は泣いてしまいました。で、瑠希弥は号泣。
涙脆い瑠希弥の波動が、私も涙脆くしたのでしょうか?
そんなある日。
仕事を終えて、私と瑠希弥は私のマンションに車で向かっていました。
「先生!」
霊媒師としては、私より遥かに勘が鋭い瑠希弥が何かを感じたようです。
「どうしたの、瑠希弥?」
私も自分の「アンテナ」を敏感にし、周囲を探りました。
「そこを左です。何かがいます……」
彼女は震え出しました。
私にはまだ何も感じられません。
「?」
大通りを左折して脇道に入ると、遂に私にも瑠希弥が震えたものの正体がわかりました。
「何、あの女の子?」
私は車を路肩に寄せて停め、ある中年男性の後ろにニヤニヤしながら立っている五歳くらいの女の子を見ました。
服装は黒い着物です。髪は腰まで届きそうな長さ。可愛い顔をしています。
彼女は当然の事ながら、人ではありません。
かと言って、悪霊でもありません。
でも、瑠希弥ばかりでなく、私まで震え出すほどの強烈な霊威を放っています。
その時、私達の後ろから一台の大型トラックが走って来て、その中年男性の方へ突っ込んで行きました。
驚いた事にそのトラックには誰も乗っていません。
「え?」
私と瑠希弥は、あまりの出来事に動く事ができません。
トラックは中年男性を跳ね飛ばし、その先の電柱にぶつかって停まりました。
男性は即死です。周囲にいた人達が驚いて集まり出しました。
後ろにいた女の子はその男性の霊を伴い、空へと浮き上がって行きます。
ほんの一瞬、彼女は私達を見ました。
生まれて初めて、死を恐れた瞬間でした。
「あ、あれは……?」
瑠希弥が震えたままで呟きます。
「死神、ですか?」
彼女は恐る恐る言いました。その言葉をあの女の子に聞かれるのが怖いかのように。
「死神かどうかはわからないわ。でも、尋常ではない霊威だった。人の死を
私の推理は何の根拠もないものですが、あの女の子は死神ではないと感じました。
「そうですね」
瑠希弥も少しホッとしたのか、少し微笑みます。
「帰りましょう」
「はい」
私達はマンションへ帰りました。
そして数日後。
私と瑠希弥は、またあの女の子を見ました。
今度はビルの建設現場の前です。
女の子の前には、携帯電話で話す若い男性が立っています。
女の子はその男性を見上げ、ニヤニヤしていましたが、私達に気づくとその笑みを消しました。
私と瑠希弥は女の子が何か仕掛けてくると思い、身構えます。
しかし、女の子は上を指差すと、消えてしまいました。
「え?」
私達はハッとして空を見ます。
次の瞬間、若い男性の上に数メートルはある鉄骨が落ちて来ました。
「う!」
私と瑠希弥は思わず目を背けました。
男性は鉄骨の下敷きになり、即死です。
辺りは騒然としました。
何者? 私は瑠希弥と顔を見合わせました。
『教えてしんぜよう』
不意にその女の子が私の足元に現れました。
私と瑠希弥はハッとしました。
すると女の子は面白そうに笑って、
『
と言うと、消えてしまいました。
つまり、先日の中年男性も、さっきの若い男性も、殺人者だという事です。
「
その
西園寺蘭子でした。
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