一番強いのは誰?
私は西園寺蘭子。霊能者です。除霊、お祓い、占い、骨董品鑑定、人探しも承っています。
「しっかし、何であんたんとこ、全然儲かっとらんのや?」
親友の八木麗華が、見えちゃうのを気にしていないのか、見せたいのかわかりませんが、ソファにふんぞり返ります。
ここは私の事務所です。麗華が、九州のお土産を持って来てくれたのですが、私は魚の卵が苦手です。
「あんたとの付き合い長いけど、知らんかったわ。今度からは気ィつけるわ」
どうしてなのかよくわかりませんが、麗華は真面目な表情で詫びてくれました。
「別に私にはお土産はいいわよ。貴女が何事もなく帰って来てくれたのが、何よりのお土産よ」
私はちょっと嫌味っぽかったかなと思いながら、言いました。
「おおお。蘭子、あんたはホンマにええ子や」
何故か麗華は泣き出してしまいました。
「どうしたのよ、麗華? 泣くほどの事じゃないわ」
私はそれでも子供のように泣く麗華の頭を撫でました。
本当は麗華が九州で何か仕出かして、酷い目に遭うのではないかと心配していたなんて言えません。
「九州、事務所でけへんかったんや」
麗華はようやく泣き止み、涙で潤む目を私に向けてそう言いました。
何か可愛いです。私は決してそういう趣味はありませんが。
「何があったの?」
麗華は涙を拭いながら、
「あいつが現れた」
「あいつ?」
麗華はキッとして、
「あの呪い女や!」
呪い女? 誰の事でしょう? 私には思い当たりません。
「忘れたんか、G県でウチに呪いをかけた女や!」
「ああ、小倉さんね」
ようやく思い出しました。小倉冬子さん。
G県の霊感少女箕輪まどかちゃんのお兄さんである慶一郎さん(通称慶君)の婚約者だと思い込んでいる人です。
以前、東京で慶一郎さんと冬子さんが一緒にいるのを見た麗華が激怒して、G県に行き、慶一郎さんを問い詰めた時、冬子さんが現れて、麗華は倒されてしまいました。
その日以来、麗華は「打倒黒尽くめの女」を掲げて、パワーアップを図っていたのです。
まどかちゃんからメールで教えてもらったのですが、麗華は冬子さんをやっつけるためにG県に行って、彼女と戦ったそうです。
リベンジは成功し、あと一撃を加えようとした時、まどかちゃんが冬子さんを庇い、麗華もそのまどかちゃんの優しさに免じて、冬子さんを許したのだそうです。
「あの女、この前ウチがぶちのめした事を根に持って、九州に現れたんや。執念深い女やで」
冬子さんも、麗華にだけは「執念深い」と言われたくはないでしょう。
「違うと思うけどなあ、私は」
「何やて?」
麗華がキッとしたので、私もちょっとだけキッとして彼女を睨みます。
「す、すまん。何でや?」
麗華が素直なのはいいのですが、最近すっかり恐れられている気がして、ちょっぴり悲しいのも事実です。
「冬子さんは貴女を怨んでなんかいないわよ。彼女の事をもっとよく見てごらんなさいよ」
「え?」
私は、冬子さんの本当の姿を知っています。
彼女は純真な女性です。少し度が過ぎるところはありますけど。
「あ」
麗華もわかったようです。
「貴女が事務所を出そうとしていたところは、以前たくさん人が死んだビルだったのよ。場所を変えれば大丈夫」
「ホンマや……。何でウチ、気づけへんかったんやろ?」
「あまりの激安に、目が曇ってしまったんじゃないの?」
私はズバリと指摘しました。
「う」
図星ですから、麗華は何も言い返して来ません。
「今度会うことがあったら、礼、
麗華は恥ずかしそうに笑って言いました。
「そうね。そうしなさい」
私も微笑んで言いました。
でもその時はまだ、私は知りませんでした。冬子さんが麗華を助けてくれた本当の理由を。
彼女は、麗華が私の親友だとまどかちゃんから聞き、とんでもない事をしてしまったと怯えていたそうです。
その事を後でまどかちゃんから聞いて、私が落ち込んだのは言うまでもありません。
私は、昔、冬子さんに何をしてしまったのかしら? 全然思い出せない。
西園寺蘭子でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます