第4話 修理したのはおじいちゃん?

「ほら、これがおじいちゃんの自転車だよ」


しばらく眺めていたおばあちゃんは思い出したように言った。


「そうだよ、おじいさんの自転車だね、翔ちゃんが乗ってきちゃったらおじいさん

 が困っちゃうんじゃないのかい?」


おばあちゃんはおじいちゃんが亡くなったことを覚えていないみたいだった。


「ほら、翔ちゃん見てごらん、おじいさんが歩いて来たじゃないか」


施設の門の方を見ながらおばあちゃんは言うけれど誰もいない。


「おばあちゃん、誰もいないじゃない。おじいちゃんはいないよ」

「何を言ってるんだい、さぁさ、おじいさん、こちらに入って」


おばあちゃんは幻覚を見ているのかもしれないと思った。


「そうですよ、それがおじいさんの自転車でしょ、翔ちゃんが乗ってきてしまった

 んですって」


おじいちゃんと色々お話をしているみたいだった。


「あらそうなの、翔ちゃん驚いたでしょう?」

「え?何が?」

「公園で小さい子を轢きそうになったんでしょ?おじいさんが後ろから自転車を  引っ張って停めてくれたって」


翔太は何のことだか分らなかった。


「タイヤもパンクしちゃったみたいねぇ、おじいさん修理が得意だから直してくれたんだってね」

「違うよ、パンクしたけど近所に住んでいるおじいさんが直してくれたんだよ、

 うちのおじいちゃんはもう死んじゃってるじゃないか」

「あはは、翔ちゃん、おじいさんはここにいるのに何を言ってるんだい」

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