第3話 おばあちゃん「翔太だよ」

おじいさんの家に着くと門の隣りの車庫の前でおじいさんはパンクを直し始めた。

車庫から工具を取り出してとても手際よく修理してくれた。


「昔は道が悪いからしょっちゅうパンクしたものさ、いつもおじいさんが直す係り だったんだよ」


最後に空気入れでタイヤに空気を入れてくれた。


「さぁ、これで大丈夫。気を付けていきなさいな」

「ありがとうございます」


翔太はおじいさんに頭を下げてまた走り出した。


「何て親切なおじいさんなんだろう」


翔太は嬉しくなって口笛を吹きながら施設に向かった。

施設に着いて自転車を入口の横に停めた。

中に入ると窓口におねえさんが座っていたので名前を言っておばあちゃんの部屋に

連れて行ってもらった。


「おばあちゃん、翔太だよ」

「おやおや、翔ちゃん、一人で来たのかい」

「うん、一人でおじいちゃんの自転車に乗って来たんだよ、これおみやげだよ」


お母さんにお饅頭を渡すように言われて来たのだった。


「ありがとうね、おじいちゃんの自転車ってそんなのがあったかねぇ」


おばあちゃんは体は元気だけど前のことはあんまり覚えていられない病気みたい

だった。


「入口のところに自転車置いてあるから見に行こうよ」

「そうかい、よっこいしょ」


少し腰が曲がっているおばあちゃんは、施設の出入り口まで廊下の手すりに

つかまりながら歩いた。

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