第18話 ライバル

少し寒い。

そう思い目を開けると、目の前にあった猫じゃらしの葉っぱから水滴が落ちる。濃い霧に覆われて、うっすらとしか見えないが、その向こうにプレハブ小屋が建っている。おそらく、みんなはあそこで寝ているのだろう。

俺は前に寝たところから再スタートになるため、こうして地面で寝ているのだろう。起き上がり、大きく伸びをする。

深い霧にうっすらと差し込んだ光が優しい風に当てられて、目の前に広がる湖が揺らめく。まるで蜃気楼のような湖に近づき、水を掬い、口を付ける。

新鮮な水が体の中を駆け巡り、朝が来たことを体に伝えてくれる。俺は大きく深呼吸してから、空を見上げる。

最後の一仕事と言わんばかりに、藍色の空に星が瞬いている。真夜中に見る星とはまた違う美しい星に眺めていると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。

振り返ると、一糸纏わぬクランが立っていた。

「あ……」

クランは柔らかい肢体を隠すこともなく、驚き立ち尽くしている。

早朝から大きな声を出されたらまずい。早く目を逸らさないと嫌われる。そう思うけれども、普段見ることの出来ない部分から、目が離せない。

お互い放心状態のまま、しばらく見つめ合う。先に口を開いたのはクランだった。

「そ、その……私の体、綺麗ですか?」

そう言って極上の霜降り肉を持ち上げるクラン。男なら誰でもその気になってしまうほど、妖艶な姿だ。

俺は壊れた玩具のように、何度も首を縦に振る。

「なら、良かったです」

少し頬を赤らめるクラン。そしてそのまま、俺の横を通り、何事もなかったかのように水浴びを始める。

その姿は女神のようだった。

「ご、ごめん。すぐに向こうに行くよ」

クランの冷静な態度を見て、ようやく俺も冷静さを取り戻す。

「いえ、大丈夫です。それより、少しお話しませんか?」

「え?」

真剣なクランの眼差しに俺は動けなかった。それを肯定と取ったのか、クランが話を始める。

「どうしてなのかわからないんですけど、ダイスケさんに見られるのだけは恥ずかしいんですよね……」

水の中で腕の汚れを落とすクラン。次に首を、その次に、大きな胸を持ち上げて洗う。

「昔から、胸が大きいね。なんて言われてよく裸にされてました」

たぷたぷと胸を揺らすクラン。胸を洗い終わると、今度はお腹の辺りをこすり始める。

「そ、それはいじめじゃないのか……」

「他の人と比べてもダントツで大きかったですから、やっぱりみんな、どういう風になっているのか見たかったんだと思います」

クランは左胸に手を当てる。

「でも、戸隠さんに見られると、というか、戸隠さんが傍にいるのを意識すると、胸の奥が熱くなって、こう、ドキドキしてしまうんです」

いくら三十路まで童貞だったとはいえども、これだけストレートに思いを伝えられては、彼女が俺を好いていることくらいわかる。普通の男ならここで押し倒すのだろうが、俺はクランを仲間として見ていて、この先のことも考えているので、どうしてもそれができなかった。

それに彼女たちの恋は少し違う。彼女たちの恋は「一緒に住んでもいい」という、どちらかというとルームシェア的な感覚で、相手のことを愛して、人生を共に歩むなんて感覚は一切ない。

そしてクランは、自分の気持ちが俺たちの世界で一般的な恋だとわかっていない。俺はそんな彼女を押し倒すのは少し違うと思った。

もしかしてこの世界に残った初代三十路童貞勇者は、恋の形が違う彼女たちを襲うことが出来ずに、でも抑えられない性欲をぶちまけないために、人魚の国でずっと生活していたのだろうか。もしこの世界に残ることになったら、俺はそうすると思う。

「ダイスケさんのことを考えていると、その、夜も寝られないことがあって……」

今にも泣きそうな表情のクラン。

必死になって頭を働かせて、今まで覚えてきた単語を総動員して言葉を作るけれども、なんと言ったら良いのかが全くわからない。

「サニーさんに聞いても、シレーナさんに聞いても、そんなの聞いたことないって言われました。やっぱり私、おかしいんでしょうか?」

クランの瞳から涙が零れ落ちる。

それを見て自然と体が動いた。

俺は湖の中で涙を流すクランを、ゆっくりと抱きしめる。

「今、どんな気持ちだ?」

「……すごく恥ずかしいですけど、落ち着きます」

「それを俺たちの世界じゃ、恋っていう」

「恋?」

「人の事を好きになるってことだよ」

クランが不安そうな顔をして俺を見つめる。瞳からまた大粒の涙がこぼれ落ちた。

「私、サニーさんも、シレーナさんも好きです、恋をしています。でも、ダイスケさんに対する恋は、苦しいと言うか、その……」

言葉に詰まるクラン。俺はクランの頭をそっと撫でる。

「この世界の人たちの恋って、一緒に住みたいと思うことだったよな?」

「はい」

「う~ん。俺たちの世界ではさ、違うんだよな。気持ちを言葉で表現するのは難しいけど、傍にいたいとか、ドキドキするとか、触れたいとか、離れたくないとか……」

適当に思いついたことを上げていく。最後の言葉を聞いて、クランがさらに体を密着させる。

「でもどうして私だけなんでしょうか。やっぱり私がおかしいからですか?」

「あ~。俺と一緒にいる時間が長いからじゃないか?」

「なら、サニーさんもシレーナさんもそのうち……」

クランは小さな声で「それは嫌です」と言い、俯いた。

「う~ん。どうだろうな。クランは俺に、俺たちの世界の恋をしたけれども、サニーとシレーナも同じになるかわからない。ほら、クランだって村の人全員と恋をしたいと思わないだろ?」

頷くクラン。

「それと同じだ。サニーとシレーナは、俺のことを恋人として見てくれるかもしれないけど、それはクランが今感じている恋とはまた違う」

クランがもう一度頷き、しばらく俺に体を預けてから顔を上げる。その顔に先ほどまでの不安そうな顔はない。

「……なんか、釈然としません」

「心ってそんなもんだろ」

クスクスと笑うクラン。

「結局、ダイスケさんもわからないんですね」

急に恥ずかしくなって、俺は頬を掻く。

「でも、何となく感じました」

クランの綺麗な瞳が俺の目を捉える。

「ダイスケさん。貴方は今、ダイスケさんの世界の恋をしてますか?」

「……たぶん」

今の俺はそう言って、自分の気持ちを誤魔化すことで精いっぱいだった。



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たった一週間でここまで変わるものなのか。三人の魔法を見てそう思った。素人の俺でも、彼女たちの魔法の威力が段違いに上がっていることがわかる。そして詠唱時間がかなり短くなった。

これなら魔王も封印できる。一通り魔法を見せてくれた三人の顔は自信に満ちあふれていた。

「勇者殿、ちょっといいですか?」

俺を呼んだのはネージュさん。俺は岸辺に近づくと魔法をかけられて湖に引きずり込まれる。咄嗟に口を塞いで息を止めた俺を見て、ネージュさんが上品に笑う。

「正直なことを申し上げますと、あれでもかなりギリギリです」

地上よりも鮮明に、ネージュさんの声が聞こえる。

「え、そうなの?」

頷き、話を始めるネージュさん。話をまとめると、今回、体に流れる魔力のロスを抑える修行を重点的に行ったそうだ。魔法を使う際のロス量は、使った魔力の量に匹敵するそうで、それを抑えるだけで魔法の威力は格段に上がるらしい。

しかし威力が上がる分だけ体にかかる負担は大きくなり、これ以上訓練を行うと、急激な変化に体が付いていけなくなる。だから無理を承知でも、このままの状態で封印に望むのがベストだという。

「今日は仕上げをしますので、出発は明日のお昼にしましょう」

「わかった」

最後にネージュさんは、「お熱いですね」と言って俺を岸に連れて行く。

どうやら今朝の密会は、ネージュさんにばれていたようだ。



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三人が水の中で修行している間、俺はランニングや筋トレに勤しんでいた。といってもそんな長時間続けて出来るわけではないし、明日以降に響いてもいけないので、森の中を探索したり、湖で泳いだりしながらのんびりと過ごした。

小さい頃は近くの山の中で朝から遊び回り、お昼ご飯を食べて、お腹が膨れたら木陰で昼寝をしていた。そしてまた遊んで夜ご飯を食べて、また眠る。あの時と同じ、優しい日差しに包まれながら、子供の時の事を思い出す。

そういえば小学校に行き始めた頃、こうして昼寝をしていて、目が覚めたら、たぶん十五、六歳の、知らないお姉ちゃんが横に座っていたことがあった。とても綺麗な黒髪が、実家にある日本人形のようで怖かったのを覚えている。

それに俺と同じくらいの子供が誘拐された事件が連日テレビでやっていた時期だったので、俺は「このお姉ちゃんが犯人だ!」と思った。でもそのお姉ちゃんはすごく優しい目で俺を見ていて、すぐにこのお姉ちゃんは誘拐犯じゃないな、と思った。

どんな内容だったか覚えてないけど、少し話をした。彼女は人を探していた。なんて名前だったか全然覚えていないけれども、外国の人だったはずだ。俺が知らないと言うと、「そう、ありがとう」と言って、立ち上がり、大きく伸びをしてから「この辺りは本当に良いわね。さっきまで言ってた場所とは全然違うわ」と言ってからこちらを振り向いて、「あなた、都会と田舎、どちらが好き?」と聞いてきた。俺は当時、都会がどんな所か全然わからなくて、怖い場所だと思っていたので、「田舎」と答えた。

すると彼女は「私と一緒ね」と言ってから。人差し指でおでこを突き、「あんた、格好良い大人になるわよ」と言って立ち去った。最後に名前を聞いた気がするけれども、覚えていない。

彼女は何をしに来たのだろう。そして今思うと、彼女は俺の住む世界の住人だったのだろうか。

疑問を解決する術はもうないわけだけど、聞かなくても答えはわかる。俺がこうして世界を越えたのと同じで、彼女も世界を越えたのだろう。それも、何度も。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



次の日、お昼ご飯をいただいて、一服してから湖を出発した。

自信満々の三人とは対照的に、俺は色々なことを考える。魔王の封印どころか、レイトを倒すのもかなり難しいと言われた。なのでレイトも、なんとか封印する方向で考えなければいけない。しかしどうしたら良いのか見当が付かない。

「ダイスケ、どないしたんや、浮かない顔して」

「そうですよ。湖を出てからずっと難しい顔をしています」

「何か問題でもあるのかしら?」

三人が俺の顔を覗き込む。

「いや、元の世界の仕事の事を考えてただけだ」

本当のことを言ってモチベーションを下げてしまうといけないので、俺は適当に嘘を吐いた。

「なんやそれ。うちらの心配とかはないんかい?」

「少なくともサニーは心配しないな」

「なんやと~」

俺のまねをしてパンチを打ち込んでくるサニー。運動神経が良いだけあって、かなり筋が良い。

前を歩いていたクランが足を止める。その先にはプロクスが立っていた。

「待っていたぞ三十路童貞勇者ダイスケよ……」

いつもと様子が違うプロクス。

「俺は、お前を倒して、魔王様に報告する」

「おい、あんたどないしたんや?」

「来るわっ!!」

サニーの問いには答えずに、今までよりも大きな炎の球を、ほぼ詠唱せずに作るプロクス。その炎がゆっくりと龍の形に変わっていき、俺たちに襲いかかる。

「グランシェル!!」

シレーナが俺たちの周りに薄い黄色の壁を張る。龍は壁に当たると四散して消えてしまう。が、すぐに第二波が来る。

「シレーナさん、せーので防御壁を解除してください」

「わかったわ」

「いきます。……せーのっ!」

炎の攻撃が消えたと同時に壁も消え、特大の水魔法がプロクスを襲う。今までとは比べ物にならない威力。プロクスの炎魔法を凌ぐ威力だ。

その攻撃はプロクスに直撃する。が、しかし、

「む、無傷……?」

プロクスは微動だにしていない。よく見れば濡れた跡もない。

「シレーナ上や!!」

サニーの声で見上げると、聞いたことのないような轟音と共に、炎の球が俺たちめがけて落ちてくる。

目の前に迫ったそれは、黄色い壁に阻まれて止まり、そして四散する。

「あ、あぶなかったわね……」

いつもシレーナの顔を隠している帽子がひらひらと舞い、地面に落ちる。

「よ、よく防げたな、シレーナ」

いつもお気楽なサニーもポーカーフェイスのシレーナも、さすがに血の気が無くなっていた。どうやらシレーナの壁はプロクスの魔法を上回ったようだ。

「シレーナ、俺に強化魔法をかけてくれ」

「わかったわ。魔法を使うのね?」

俺は頷く。

「クランは攻撃魔法の準備を、サニーは飛ぶ準備をして」

シレーナが杖をサニーに渡す。

「どうするつもりや?」

「クランの水魔法の中に、サニーとダイスケが入ってあいつに接近する。そしてダイスケが魔法で倒す」

「おいおい、また無茶なこと言うな、あんた?」

「あら、無理なのかしら?」

「余裕に決まってるやろ。あんたこそ、クランの魔法に負けへん防御魔法を使ってや」

「もちろんよ。クラン、私があいつの攻撃を防ぐから、回避を気にせず魔法を詠唱して」

「わかりました」

クランが頭上で杖を大きく回しながら詠唱を始める。

その間にシレーナが俺とサニーに強化魔法をかける。魔法がかかると体が羽のように軽くなる。ギュッと拳を握りしめると、前よりもさらに力が入る。今なら岩だって粉砕できそうだ。

「シレーナさん、いけます」

プロクスに何があったのかはわからないが、言葉も魔法も通じないのなら物理しかない。

「サニー、いけるか?」

「任せとき」

サニーがシレーナから借りた杖にまたがる。俺は杖に足を乗せて、いつでも飛べるような体勢を取る。

「ダイスケ、その体勢、大丈夫かいな?」

「たぶん。いつもより力があるから、しっかり捕まれるし、仮に落ちてもシレーナの防御魔法があるから大丈夫だろ」

シレーナの方を向くと、「当たり前でしょ」と言った。

「クラン、せーの、で出来るだけ大きな水魔法を打って。その中にダイスケとサニーが入るわ」

「サニーさん、魔法の速度は落とした方が良いですか?」

「そのままでかまへん。むしろ上げてほしいくらいや」

「わかりました。じゃあ最大出力で行きます!!」

クランが杖を大きく振り、家ほどもある大きな水魔法を放つ。それを見たサニーは、地面を蹴って杖を浮かせて、俺と共に水の中に突っ込む。辺りは水に囲まれて何も見えない。しかしサニーはピッタリのタイミングで水の中から出る。

プロクスの真横。俺は杖を蹴って、水魔法を防ごうとしているプロクスに飛びかかる。

「目を、覚ましやがれぇ!!」

箒を蹴った勢いのまま、俺は思いっきりプロクスを殴り飛ばす。

強化の魔法の効果もあり、プロクスは十メートル以上も吹き飛び、動かなくなる。少しやり過ぎたかと思ったが、あいつならそう簡単に死なないだろう。

「ダイスケ!!」

サニーの声が聞こえる。上を見上げると、今までの二倍はあろうかという炎の龍が襲いかかってきた。

俺に回避する手段はなかった。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



死ぬ前は走馬灯を見たり、真っ暗な世界でしばらく過ごすと聞いたことがあるが、残念ながらそういったことは経験できなかった。

目を開けて初めに見えたものは地面だった。

「だ、大丈夫かダイスケ」

俺はゆっくりと起き上がる。体の至る所が軋むが、どうやら致命傷はないようだ。それを見てサニーが一息つく。

「よかったわホンマに。咄嗟にシレーナが魔法かけてなかったら、あんた死んでるで」

そう言いながら回復魔法を唱えるサニー。柔らかい光が俺を包む。

「ふぅ。だいぶマシになった。ありがとう、サニ……」

当然の話だが、風が体を通り抜けることはない。だが俺の右足を風が通り抜けて行った。その右足は血で赤く染まっていた。俺は遅れてやってきた痛みに大きな声を上げる。

「ほっほっほっ。心臓を狙ったのですが、防御壁の効果で軌道がずれたようですな……」

手を叩きながら何度も「素晴らしい」と褒めるのはレイトだ。

「せっかくですから、もう一発いってみましょうか」

そう言うと指先に黒い小さな玉が出来る。小さいが、その魔力が尋常でないことはわかる。

「逃げろ!」と頭が体に警告するけれども、体は全く動かない。

「む……?」

突然、一厘先も見えない濃霧が立ち込める。

「静かにな。すぐ回復したるさかい」

そう言って傷口に手を当てるサニー。するとみるみるうちに傷が塞がっていく。

「とりあえずこれで大丈夫や」

サニーがニコリと笑う。しかしその顔も満足に見えないほど、霧は濃い。

何が起こっているのか聞こうと口を開けると、激しい風とともに霧が吹き飛ぶ。

「ほっほっほっ。人魚たちにでも教えてもらったのですかな。小賢しい魔法を覚えたようで」

「笑っていられるのは今のうちだけです!!」

クランが杖を地面に叩きつける。

するとレイトの足下が裂け、勢いよく水が噴き出し、レイトを飲み込む。

(やったか……?)

見上げるほど高く吹き出した水が収まる。

「ほう……。なかなかの強さですな。私がダメージを負うとは……」

少しよろめいた様に見えるが、まだまだ余裕そうなレイト。

「くそっ! あれでもあかんのか!!」

ネージュさんが言っていたことがようやくわかる。クランの高威力の魔法でも、レイトにまともなダメージを与えられない。これでは倒すなんて夢のまた夢だ。

「私も少し本気を出すとしましょうか」

目の前に真っ黒な槍を作り上げるレイト。その矛先は正確に俺を捉えている。

「きゃあっ!!」

「なんや?!」

「くっ……」

三人の足を黒い手が掴んでいる。

「では勇者殿、ごきげんよう」

「!!」

槍が飛んできたと思ったら、シレーナが張ってくれた防御壁三枚を破り、もうすでに腹を貫いていた。そしてもう一つ、信じられない光景が広がっていた。

「が、はっ……」

「俺を操るとは、いい度胸じゃねーか、レイト」

プロクスが炎の剣で、レイトを貫いていた。

「貴様、魔王様に刃向かうというのか……」

「俺は元々、魔王のやつに忠誠を誓っていたわけじゃない。ただ俺が認めるやつと戦いたかっただけだ」

「ふふっ。しかし貴様の魔力では私は倒せん」

レイトが不敵に笑うと、炎の剣の力が弱まり、どんどん傷口が塞がっていく。

「わかってるさ。でも命を使えばどうかな?」

「貴様、心中するつもりか……!」

レイトの顔に焦りが見える。

「ダイスケ! 俺さ、この世界のこと結構気に入ってるんだ! だから、後を頼む!」

プロクスの体が青白く燃えだす。

「どう思ってるかしらねーけど、俺はお前と戦えて楽しかったぜ! 最後まで決着が付かなかったのが残念だ!」

炎がレイトとプロクスを飲み込む。耳をつんざくレイトの断末魔と共に、二人の体が黒くなり、人の形を保てなくなり、炎と共に消える。

俺の意識はそこで、ぷつりと途切れた。




★ 次のULは 7/5(水) 19:00 を予定しております。

 UL情報などはツイッターにて報告します→@mirai_pretzman

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