第2話 新しい友達

「最初に「おじいさん」と声をかけた時は本当にびっくりしていたけれど、

 だんだん色々おしゃべりをするようになっていったんだよ」

「そうなの、すごいね」

「おじいさんは1日中私とおしゃべりをすることが楽しくて仕方がなかった

 みたいで私もとっても嬉しかったんだけど先月、おじいさんは亡くなって

 しまったんだ。それで私はここに引き取られて来たってわけさ」

「それじゃぁおしゃべりする相手もいなくなっちゃったんだね」

「でも、今日は君とお話しできてうれしかったよ」


亮介はなんだか寂しい気持ちになりました。

そこへパパが小さなテーブルを買い終わって亮介のところに戻ってきました。


「ねぇパパ。僕、この椅子が欲しいんだ」

「亮介、こんな古くて汚い椅子買っても困るだろ?椅子が欲しいならもっと

 きれいでふかふかの椅子を探そうよ」

「ううん、僕この椅子がどうしても欲しい」

「そうか、わかったよ、どうせ安い椅子だ。それじゃパパのテーブルと一緒に

 家に運んでもらおう」

「ありがとう!パパ」


亮介が椅子の方を振り返るととても小さな声で「ありがとう」と聞こえた。

その2日後、椅子は亮介の家に運ばれてきました。


「こんな椅子を買ったのかい?どうするのこれ」椅子を見たママは困った顔を

 して僕をみた。

「僕の部屋に置いて使うよ」


そう言って部屋に運んでもらい、狭い部屋のベッドの横に椅子を置いて座って

みました。


「いい部屋じゃないか」

「狭いけど僕の大事な部屋だよ、今日から椅子さんもこの部屋の住人だよ」

「嬉しいね、しばらくお店の中で独りぼっちだったからね。ところで亮介、

 私は椅子さんじゃなくて『いすお』って言うんだよ」

「『いすお』?変な名前」

「おじいさんがずっとそう呼んでくれていたからね」

「そっか、じゃぁ『いすお』さんって呼ぶね」

「『いすお』でいいさ」

「わかった、今日から友達だね」

「私は亮介よりずっと年上のおじさんだけど友達でいいかな」

「うんもちろん!ねぇ『いすお』、パパやママとも友達になってくれる?」

「いやいや、それは困るよ、きっと気持ち悪いからって捨てられちゃうよ、

 だから亮介と私だけの秘密にしておいてほしいんだ」

「そうか、わかった、じゃぁ二人だけの秘密ね」


この日から亮介は毎日『いすお』に腰かけて、学校の事や友達のことを

おしゃべりしていました。

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