いすおさん
ジャッキーとしお
第1話 おじいさんのいす
暖かい春の日・・・
おじいさんはお気に入りの茶色い木製の椅子に座って日向ぼっこをしています。
おばあさんは隣のテーブルでお茶を入れています。
そんなゆっくりとした時間を過ごしていた二人ですがやがて時が過ぎて
いきました。
そしてとうとうおじいさんは天国に旅立っていったのです。
おばあさんは息子さんのところに引越すことになりました。
その時に家具は全部、中古家具を扱うお店で引き取ってもらいました。
おばあさんは息子さんと幸せに暮らしたそうです。
亮介はこの春、小学校3年生になりました。
活発な男の子ですが去年引っ越してきたばかりの土地で親しいお友達もまだいませんでした。
日曜日にパパがアンティークなサイドテーブルを探しに中古家具のお店に行くというので亮介は一緒に付いて行くことにしました。
お店に入って、パパがテーブルを見ている間、店の隅に置いてある古い椅子を見つけ、少し眺めたあと、椅子に座ってしまいました。
そして足をぶらぶらさせて暇そうにあくびをしていました。
殺風景な天井を眺めていたその時、急に低い声が聞こえてきました。
「君は何歳かな?」
「えっ?だれ?」
驚いて周りをきょろきょろ見たけど誰もいません。
「名前はなんていうんだい?」
確かに聞こえている、そら耳なんかじゃない。
「加藤亮介だけど・・・」
「そうか亮介か、いい名前だ」
「誰なの?」
「今、亮介が座っている椅子だよ」
「ええっ」
亮介は椅子から飛び降りしゃがみ込みました。
椅子をよく眺めたけれどどうみても普通の椅子だ。
目も口もついていない。
「本当に椅子がしゃべったの?」
「そうさ、しゃべる椅子があってもおかしくないだろう?」
「おかしいよ、椅子がしゃべる訳ないじゃないか」
そういいながら亮介は椅子の足を蹴ってみた。
「痛いよ、蹴っちゃだめじゃないか」
「本当なの?本当に椅子さんがしゃべっているの?」
「そうだよ、どうして話ができるかっていうとね、わたしはあるおじいさんに大切に使ってもらっていた幸せな椅子だったんだ。いつもおじいさんは私に話しかけてくれていたよ。今日はお天気がいいとか、やさしいおばあさんの事とかね。私に座ってお昼寝したりお茶を飲んだり、といつも一緒だった。
長い間、一緒にいたのでわたしも言葉を覚えて話ができるようになったのさ。
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