第4話 反地球連合
アレクはセブンと供に飛行船の中に乗り込んだ。出迎えたのは意外なことに小さな黒猫だった。
『ただいま、キャロット。探していた新しい仲間よ。』
セブンは、今までにない笑顔をその猫に見せた。アレクは横目でそれを見て少し羨ましかった。
『紹介するわね?この子はキャロット、私達の仲間の仲間よ、そして勇敢なる戦士よ。』
アレクは耳を疑った。
『えっ!猫だよね?普通の?』
と、その時に黒猫はすっと二本の脚で立ち上がったのだ。
『やぁ!初めまして。僕はキャロット!これでも反地球連合の幹部なんだよ?どうだい?驚いたかい?ニャハハ!』
キャロットが急に話し出したのでアレクは開いた口が塞がらなかった。
『そうか~アレクって言うんだね?よろしくね!アレク?ニャハハ!』
セブンがしょうがないと言った顔でこちらに振り向いた。
『キャロットは人の心が見えるの。だからあなたの全てを出会った瞬間に理解したわ。先ずは第一関門クリアって所ね。』
『だって、キャロットは私達の副司令なんですもの。』
アレクは、ますます混乱してきた。
『副司令って猫が?いったいどうなってるんだ。』
キャロットはアレクを見つめて言った。
『アレク、僕は君なら必ず成し遂げてくれると信じてるよ。まだ、解らないだろうけどいつか必ずその日は来る。それまでは僕達は君を守る義務がある。心配いらないよ!僕はこう見えて強いからね?ニャハハ!』
アレクはキャロットに見つめられた瞬間にアレク自信もキャロットの事を理解した。
アレクの左目はセブンに出会い、キャロットに出会い…一枚一枚薄皮を剥いでいくように鮮明に見えてきている事に気が付いた。
『そうか。わからない事だらけだけど今は前だけ見てるよ。この目が信じろって言っているからな?』
アレクもいつの間にか笑顔でそう答えた。
キャロットも満面の笑みを浮かべていた。
『それじゃあ、総統の所へ行きましょう。ちょっと変わった人だけどね。』
アレクは、セブンを見返した。
『変わったって言った?今?セブンさん?』
『さぁ、行くわよ?』
セブンは、アレクの言葉をバッサリ切るように前にそびえる大きな鉄のドアに手をかざした。
ゆっくりと扉が開いていく。
中は思った以上に広く蒸気機関では無く電子機器を用いた地球式の飛行船だった。
中央のやや高い位置にその人はいた。
白い軍服に白いマント髪は黒く肩まであった。シュッと整った顔立ちの女性らしき人物がいた。
アレクは思わず見とれていた。
『総統!セブン アシュフォード。只今戻りました。例の少年も一緒です。』
セブンが報告をした。
総統は、こちらに目を向けてきた。
アレクは、ドキッとして思わず目を一瞬閉じて開いた、、、いない。
『あれ?総統は?さっき迄そこにいた…』
アレクは背筋に冷たい気配を感じた。
『セブン?なかなか可愛い子じゃあないの?あたしの私物にしても良いかしら?』
『総統。戯れは止めてください。気持ち悪いです。』
アレクは唖然とした。あんなに綺麗なのに声は男だった。いや、アレクの左目がそう断言していた。男だと。
『あんたは、本当に男なのか?』
『あら?いきなり失礼な事聞くのね?でも可愛いわ?特にその左目が気に入ったわぁ?流石あの人の作品ね…』
アレクは思わず聞き返した。
『あんた!この左目作った奴の事知っているのか?!』
『知っているわぁ?でも今は言えないの?ごめんなさいね?時が来たらちゃあんと話してあげるからね?』
アレクは全身の力が抜けた。その場にぺたりと座り込んでしまった。
『そうか。わかったよ。いつか教えて貰えるならそれで良い。何せ火星に来てから3年の間誰もこの左目の事を知っている奴はいなかったんだからな…』
アレクの意識は少しずつ遠退いて行った、そんな意識の中で総統はこう呟いた。
『ようこそ。新たな戦士よ。今はゆっくり休みなさい。あの人の子なら絶対に死なせないわ。』
最後に総統が何て言ったのかハッキリとは聞こえなかった、、、アレクは静かに目を閉じた。
暖かな温もりの中に包まれて行く気持ちだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます