第3話「塩です塩」「ああ塩ですか」

尾崎首相との密談が終わっても、二人の社長はそのまま帰る気になれずにいた。


 タクシーで新宿に出て、一杯やることにした。


もう仕事の話はご免だと、二人とも思いながらも

ついつい仕事の話になってしまう。


 「ところで社長は、朝の歯磨き、どうされてますか?」

「いやあ、わたしが今それをお聞きしたいと思っていたんですが・・。」

「どうやら二人とも同じ穴のむじなのようで・・」

二人は顔を見合って苦笑した。


「私は、もっぱら塩です」

「塩?」

「故郷の海岸の塩を取り寄せて、それでしょっちゅう磨いてます」

「そうですか・・。塩ねえ・・」

「社長はどうされてますか?自社製品を使われてますか?」

「とんでもない。あんな毒を口に入れるのはまっぴらごめんで・・」

言いかけて二人は、周りを見たが、怪しい奴も,

変な輩もいない。


静かに冷酒を味わいながら二人はその後、黙ってしまった・・・。


 「しかし、なにやら因果な業務に手を染めてるようで・・・」


「まあ、日本の年金財政を立て直す為ですから・・・・」


「とは言うものの何やら後ろめたくて・・・・」

「そんな弱気でどうしますか!目的意識さえきちんと持っていれば

 何も恐いものは・・」

「・・・・・・・」


深夜になり二人は、「じゃあ」「じゃあ」の静かな連呼で別れた。

どうにも眠れそうになかった・・・。

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