第2話 「これは・・日本の為の賭けなんです」
「ここだけの話ですが、年金財政は、既に破綻しております。
トランプ相場で若干の増益を見ましたがそれも一瞬。
危なくて株投資は続けられません」
「そうでしょうなあ。我々のような高齢者ばかりが増え続けておるのですから
国も大変ですなあ。 企業で置き換えてもすぐにわかります。
古参社員ばかりでは戦えませんからなあ。経費ばかりかかってペイ出来ない」
小峰社長の発言に頷きながら、室津が続ける。
「しかも世をあげて健康、健康で、大掛かりな予防対策をとるもんですから
年寄りが死なない。年金を受け取り続ける。
こんなことなら、年金は、終身年金でなく、確定年金にして
80歳くらいで打ち止めにすべきでしたなあ」
「いやあ、小峰さんのおっしゃる通りです。しかし、今となっては難しい・・・」
眉間に皺を寄せた尾崎首相に、小峰が
「昔のように、七輪で年寄り夫婦が、目刺を焼いて細々と老後を過ごし
70歳前で順々に消えていった社会なら、何とかなるんでしょうが・・」
「そうなんです。医者にかかりながら高額の医療費を受けながら
長生きする高齢者を何とかしないと・・・」
・・・・・・・。
尾崎が続けた。
「どうでしょうか、極めて短兵急な考えですが、歯磨き剤の毒性を
もう少しあげて、発ガン速度を早めてもらえませんか?」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
二人の社長は、うつむいて、黙ってしまった。
恐るべき密談である。
片方の手には、ご長寿のお祝い品を持ちニコニコ笑顔で表彰する。
もう片方の隠された手には、年寄りを殺す武器が秘かに準備されている。
しかし、これは、まぎれもない現実であり、日本の社会が超高齢化を
脱す何十年か先まで続く恐るべき国民殺戮作戦である。
死亡率を短期で急激に増悪させる戦争が、今までのように起きない
現実ではこうでもしないと年寄りが減らない。
尾崎首相は、国力維持のために高齢者を減少させる賭けに出たのである。
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