第19話

 もう一人の黒天使が去ってしまった後、彼の告げたとおり、惑星間パトロールが駆けつけて来た。

 ドナは目が覚めた少女たちと固まって、不安な思いで彼らを見やった。

「通報されたのはどなたですか?」

 ドナは知っていた。だが、言わなかった。

 自分たちを取り囲むようにして散乱した死体が、次々に取り除かれていく。

 事前の通報に、服を用意していたパトロールが彼女たちに尼僧服を渡す。

 このままだったら自分たちがどうなってしまったのか、だれも知らなかった。コルベートが関与していたことを知るのはドナだけだった。

 コルベートの遺体が監督室から運び出されていく。

「まったく……罰当たりな奴もいたもんだな」

 年配のパトロールが右手でべったりと顔をなでつける。

 ドナはあの黒天使に似た男のことが気になって仕方がなかった。黒天使の首は覚えていた。だが、黒天使とあの男が本当に別人なのか、自信がなかった。黒天使のふいに見せる人間らしさがあの男の放つものにそっくりだったのだ。

 黒天使に告げたかったこの思いを、彼に告げたかった。

「もう調査は終わったんでしょう?」

 なにも覚えておらず、知らない尼僧たちを持て余し気味の彼らにドナは思い切って言ってみた。

「まだ帰してあげられないんですよ」

「寺院に帰してくれなくていいんです。今から、大事な人が船で出て行ってしまうんです。見送らせてください。もう、二度と会えないんです」

 パトロール員は渋った。

「その後、何だってしますから。お願いです。あたしの大事な方なんです。もう、これが最後なんです」

「ほんの小一時間ですからね」

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