第9話 現実問題


石垣市内でも大型店舗に入るサンエーに向かい、美緒用の寝具を購入して車の後ろに積み込む。

その足で近くにあるリサイクルショップに立ち寄り、店に入るなり店員に声をかけた。

「パイプベッドとハンガーラックが欲しいのだけど」

「ベッドなんて別に要らない」

「ベッドの方が石垣じゃ良いんだよ。湿気が篭らないからな」

美緒を強引に納得させ、店員に案内され実物の物を確認して即決で買い求める。

これも内地とは違いほかと見比べてなんて事をしていると直ぐに他の誰かに買われてしまうからだ。

パジェロミニに取り付けているキャリアーに強引にパイプベッドとハンガーラックを縛り付けて持ち帰る。

店員が不安そうな顔をしていたがそんな事はいっこうに構わない。

多少の事なら警察も多めに見てくれるだろう、荷崩れなどを起こさない限り。


マンションに着くなり、俺は掃き溜めもとい物置になっていた洋間の片づけを始めた。

段ボールに入っていた酒類は6畳の居間代わりの押入れに置いてあるカラーボックスに綺麗に並べる。

そして、DIYに使う工具類は俺の部屋の物入れにしてある場所に片付けるべく部屋に運ぶ。

溜まったCDや書籍などもとりあえず部屋へ、大きなクーラーボックスやシュノーケルのセットなども運び出した。

残るは錆び付いているが十分以上に使用に耐えるスチールラックが3台と手作りの大き目の折りたたみテーブルに昔々大量に育てていたクワガタやカブトムシのケースなどが多量に段ボールに詰め込まれていた。

「こいつらをどうするか、確かあれに……」

使用頻度が最低ラインの洋間についで低い居間に置いてある放り込んだばかりの古新聞入れの籠を漁る。

「あった!」

俺が見つけたのは『ガラパ』と言う石垣島を元気にすると言うフリーペーパーだった。

「確か、この中に」

何でも屋かリサイクルショップの何でも買いますの広告を見つけて携帯で連絡をする。

すると運良く今からマンションまで来てくれるとの事だった。

「ふぅ、これでひとまずどうにかなりそうだな」

「なぁ、何かする事は無いのか?」

「今は別に無いよ」

俺の言葉に美緒は不思議そうな顔をしながら家の中を見て周っていた。

しばらくするとチャイムが鳴り業者がやってきて不要な物を見積もっていく。

今すぐに伺いますと言って直ぐに来た、この業者は案外信頼できるかもしれないと思ってしまった。


昔、クーラーの取り付け工事を石垣市内では有名な電気店に頼んだ時に『午前中に伺います』と言われて電気屋がやって来たのが11時50分過ぎだった事があった。

確かにお昼を回っていないのだから午前中には変わりないのだが、仕事に遅刻していく羽目にあったことがあったからだ。


直ぐに見積もりが終わり金額を伝えられた、引き取り料などを引いてプラスマイナスゼロに近かったが良しとした。

元々、誰かに無料であげてしまおうと考えていた物だし他のゴミゴミとしたものまで処分してくれると言うので喜んで引き取ってもらった。

業者が運び出した後で綺麗に掃除と雑巾掛けをしてクーラーが動くか確認をし、パイプベッドやハンガーラックを組み立てて何とか美緒の寝る場所を確保する事が出来た。

「これで一応、現実問題としては何とかクリアーできたかな」

「へぇ~」

美緒が意味ありげに俺の顔を見上げていた。



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