第8話 現代っ子
学校の手続きが終わると昼過ぎになっていた。
雨も上がり太陽も顔を出した。
『とりあえず昼飯か?』そんな事が頭に浮かんだ。
「昼飯は何が食べたいんだ? 何か食べたい物があれば言ってくれ」
美緒の好き嫌いが判らないので本人に直接聞いてみた。
どこか適当に食事する所に連れて行けば良いのだが、とりあえず美緒の希望を聞いてみる。
「パンが良い」
「パ、パン? 現代っ子だなぁ」
「駄目なら何でも良い」
「まぁ、構わないさ」
パン屋ね、瞬時に壊れかけのパソコン頭が検索を開始し数件ヒットする。
その中で近場でお勧めのパン屋が2件ヒットした。
「それじゃ、パンでも買いに行こうか」
シルバーとワインレッドのツートンカラーのパジェロミニに乗り込んで検索でヒットしたパン屋に向う。
一旦、桟橋通りに出て南に下り、4号線を西に向かい南に下る一方通行の道を走る。
左手に『やきむぎや』と書かれた木の小さな看板が見えてきた。
まだ、営業中のようだ車を店の前に止めて店に入る。
「いらっしゃい。あら? お久しぶりね」
店内に入るなりお喋り好きな女性のオーナーさんが声を掛けてきた。
「お久しぶりです。最近は人気みたいですね」
「うふふ、お陰様で」
この店は午前11:00時頃オープンしてパンが無くなりしだいクローズしてしまうのだ。
他愛ないお喋りをしてレーズンパンやバジルを使った人気のパンを数点購入する。
美緒は何も喋らずに店内をキョロキョロと見渡していた。
そして、とりあえずもう一軒に向う。
その店は、730交差点を東に向かい。
ここ数年で乱立したホテルの裏手の方にあった。
丁度、これから向うサザンゲートブリッジが店から良く見えた。
「パンドウミー?」
「ここはクロワッサン生地のパンが美味しいんだ。好きな物を選びなさい」
「ふぅ~ん」
素っ気無い返事をして美緒が店内に入って行った。
ここでも美緒がチョイスしたパンを買い、飲み物を購入すべく近くのココストアーつまり石垣島のコンビニに向う。
「さんぴん茶? ウッチン茶? スコール? マブヤー? シィ……クヮーサーソーダ?」
「ジャスミンティーに生姜の仲間のお茶。ヨーグルト風味の炭酸系。沖縄の仮面ライダーに沖縄特有の柑橘類」
物珍しそうにドリンクのショーケースを美緒が覗き込んでいた。
「今はとりあえず飲み物を選んでくれないか?」
「う、うん。じゃ、あっ! Gokuriの真夏のパインだ!!」
ココをでてサザンゲートブリッジに向かい。
橋を渡った所にある人工島の公園の防波堤に腰をかけて、海を見ながらパンを頬張る。
時々、こうして海を見ながら食事するのが結構お気に入りだったりする俺だった。
美緒が三分の一程に千切りながら色々なパンを食べていく、その残りを俺が胃袋に放り込む。
しばらくするとどこからとも無く野良猫が現れ始めた。
ここの人工島の野良猫は野良でありながら人にかなり慣れている。
人工島故に人間は独りも住んでおらず餌は人間の弁当の食べ残しや餌を時々与えに来る人に頼っている為だろう。
「あっ、猫だ!」
そう言い残して美緒は木のテーブルとベンチの所で猫に食べ残しのパンを与えて猫と遊んでいた。
「さて、これからどうするか……」
とりあえず美緒の寝床を確保しなければならない、物置代わりにしている洋間にはクーラーが付いている。
必要な物と要らない物を整理して処分するしかなさそうだった。
まぁ、この際だ。元々不要な物を処分して身軽になろうとしていて躊躇していた所だったので丁度良い機会かもしれない。
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