第12話

前回由夏が現れてから2週間が経ち本格的に夏の暑さを感じるようになり俺は日々を過ごしていた。

相変わらず相川の唯へのアプローチは止まらず、少し冷や冷やしながら後ろの席で眺めていた。


なんで邪魔しないのかって?

多少なりとも唯との距離を二日間で縮められたと思ったからだ。

ほんの少しだが。

まあ日付も進んでいるしやり直すことも無いのだろうと安心していた。


今日は7月24日月曜日。

どうやら今日は夏休み前最後の登校らしい。


「ちょっと淳一聞いてるの?」

「あ、すまんなんだって?」


今日も今日とて朝は唯と一緒に登校している。

俺めっちゃリア充だな。


「だからー、淳一は夏休みどっか行く予定あるの?」

「いや、特には。」

「ふーん、でしょうね。淳一基本暇だもんねー。」

「うるせえ!お前はどっか行くのかよ?」

「ふふふ、よく聞いてくれたわね!今年は家族で箱根旅行行くのよ!お父さんが福引で当てたの!」


唯は嬉しそうに自慢げに話す。


「ほー、よかったじゃねえか。」

「うん!だから今から楽しみなの!温泉いっぱい入るんだー」


唯と温泉か…入りたい。

思わず唯の裸を想像してしまった。

昔は一緒にお風呂入ってたなあ。

幼稚園の時だが。


「淳一…今変な想像したでしょ!!」

「し、してねえよ!」

「うそ!絶対した!!変態!!」


唯はそう言うとおきまり腹パンを繰り出した。


「いってえ!!」

「ふん、淳一が悪いんだからね!さっさと学校行くわよ!」


こいつ…毎回毎回手加減というものを知らねえんだからな…

昔唯は空手を習ってたからパンチの威力がそこら辺の男より断然強いのだ。


教室に着くといきなり相川が唯に話しかけた。


「おはよー!唯ちゃん!今日も可愛いね!」

「い、いきなり可愛いとか!」


唯がまんざらでもなさそうに答える。

唯と相川は隣の席なので俺は後ろからやり取りを眺めている。


くそう…楽しそうに話しやがって…

俺は唯とショッピングデートしたんだぞ。

いい雰囲気にもなったし。

相川より仲いいんだぞ。



「唯ちゃん、夏休みどこか行く予定ある?」

「家族で箱根行くわよ。お父さんが福引で当てたの。」

「へえー、いいね!他には?」

「他はないけど…」

「じゃあ、僕と花火大会行かない?ほら来週丸滝川でやるやつ!」

「ええ!?わ、私を誘ってるの?」


唯は驚いた様子で相川に問う。



「うん、唯ちゃんを誘ってる。」


相川はやや真剣な顔でそう答えた。

すると唯は俺の方を振り返り何か言いたげな顔をしたが、俺が視線をそらすと唯も視線をそらし相川の方へ戻った。


「いいけど…花火大会…行っても…。」


「やったー!じゃあ来週花火大会!約束だよ!」

「う、うん…」


相川は嬉しそうにそう言った。

そして唯はまんざらでもなさそうに頷いた。


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