第6話

色々ありすぎてもう滅多なことが起きても驚かないと思っていたが

どういうことだ?俺の孫だと?


「何言ってんだ?俺の孫だと?俺は孫どころか子供もいねえし嫁どころか彼女もいねえんだが」


自分で言っていて辛くなるが事実だ。

それなりの恋愛はしてきたが28歳現在の俺には彼女はいない。


「はあ、1から説明するのは面倒なのよねー。実際に見てもらうしかないわね。」

「?見るってなんだよ。」


俺の孫、由夏はそう言うとスマホに似た小型端末を取り出した。


「これを見て。これは今のお前の・・・おじいちゃんの過去を変えた場合に起こることをまとめた動画よ。」


由夏はそう言うと端末の動画を再生し始めた。

大勢の人がにぎわっているそんなシーンから始まった。

結婚式だろうか?新郎と新婦が並んで座り笑いあっている。


ん・・・?

この二人見覚えがあるぞ?

クリっとした大きな目、黒髪のショートカット。間違いない唯だ。

そんで新郎の方は・・・・俺じゃないか!!


「な、なんだよこれ!!唯と俺が結婚???どいうことだよ!!」

「うるさいわね、いいから黙って見てなさいよ」


画面が切り替わり、次の場面に移る。

どうやら俺と唯は二人で暮らすことになったようだ。

新居は決して裕福ではないことが分かる1LDKのアパートだ。

贅沢な暮らしはできなくてもそれを上回るほど幸せそうな二人の姿があった。


一緒に料理をする俺と唯、幸せな新婚生活とでもいえるだろうか。

こんな未来・・・かつて俺が望んだ未来じゃないか・・・・


「この2年後私のお母さんが生まれるの。」

「俺に娘ができるのか…?」

「そうよ、お母さんすっごく美人なの。おばあちゃんに似たんだわ。」

「………。」


「大体分かった?おじいちゃんは唯おばあちゃんと結婚してお母さんを産んでそしてお母さんは私を産むの」

由夏はそう言うと端末をしまった。


「それは分かるけどな、こんな未来11年後の俺の過ごしてきた11年とは違う。どういうことだ?」


「そう、このままだとおじいちゃんは唯おばあちゃんと結婚できないし、お母さんは産まれないし、私も産まれない。」


「だから過去を変えるために私はおじいちゃんを過去に戻したのよ。私を現実世界で生かすために。」


「お前…過去を変えるのはだな…大体のお話ではいけないことなんだぞ。分かってるのか」


「分かってる…けどおじいちゃん…唯おばあちゃんのこと大好きなんでしょ?」


「そ、それはそうだが…過去を変えてまで手に入れたいとは……………思う。」


「…思うんかい。」


思えば…これから先唯の背中ばかり追いかけて生きるんだよな

唯のことは大好きだ。

いつからか覚えてないが多分物心ついた時から好きだ。


だが相川が現れたことがきっかけで以前のような距離感ではなくなってしまった。


それから唯のことは諦め、何人かの女の子と付き合ってはみたが、やっぱり唯以上には好きになれなかった。


「やっと乗り気になってくれたのね…おじいちゃん。」


「ああ…」


そうだ…これは俺の意志で決めよう…

もう遠慮はしないぞ唯と結婚するため過去をやり直そうではないか。


「とりあえずこれからの11年で私のお母さんが産まれることをゴールに頑張ってねおじいちゃん。とりあえず選択肢には気をつけることね。また戻っちゃうかもしれないわよ。」


「ああ、お前を現実世界を存在させてやる。」


「……そうなるといいけど。とりあえず今日のところは失礼するわ。」


由夏はそう言うとあっという間に姿を消した。

同時に唯の姿が見えてきた。


「淳一、早くご飯食べて学校行くわよ。」


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