第2弁 Dandelion 後編
ドアをくぐるとそこには小さな酒場のような風景が広がっていた。
長いテーブルが1つとそこに並べられた椅子、そしてカウンター席。奥には円テーブルを囲むように椅子が並べられている特別な場所っぽいのがある。
部屋には何人か人がいた。
テーブル席で何やら本を読んでいるローブのようなものを着た白髪の男。
テーブルの上で寝そべっている緑色の髪のチャラそうな男とその男の腹の上で寝ているヒヨコの色をハトにしたような鳥。
カウンター席でカウンターの中にいる黄金に輝く目が特徴的な赤髪の女性と話している黒髪の雰囲気はギャルみたいな感じだが外見は清楚な女と…
俺とおっさんを合わせて6人か…
俺は今から何をするんだ?
「おーい、小僧ー。早く来いよー。」
おっさんが奥の円テーブルで呼んでいる。
俺はテーブルに近づく。
「おい、ルフィアー。準備できてるかー?ん?おぉ、小僧。座っていいぞ。」
おっさんがカウンターの中にいる赤髪の女性に声をかける。俺はおっさんの反対の椅子に座る。
「あ、はーい。できてますよー。今持っていきまーす。」
「よーし、お前らあー!!集まれー!!!」
おっさんがいきなりデカい声で叫ぶ。少し耳が痛い。
「お?やっとか。腹減ったぜー。な?タピー。」
「チュッ、チュ、チュピー!」
チャラ男と鳥が会話を成立させている。
そして、バラバラに座っていた他の人達も円テーブルに集まり座る。
「はーい、お待たせー。」
そう言って赤髪の女性が両手に2つずつと頭の上に1つ料理の乗った受け皿を乗せ持ってきた。いや、なにそれ。どこで覚えたのその芸。
目の前には様々な料理が並ぶ。
ここ5年ほどはずっと盗んだものを食べていたのでこんなに豪華な料理を見るのは久しぶりだ。
そして、俺の目の前に誰が見てもビールだと言うような液体が入ったジョッキが置かれた。
「よーし、お前らあ!準備はいいかー!?」
「おー!!!」
俺以外の全員がジョッキを持って声を揃える。
「おい、小僧。どうした?早くジョッキ持てよ。」
「え、でも…これって…」
「いいから、ジョッキ持てって。よし、もっかいいくぞー!」
俺は半ば強引にジョッキを持たされる。
「よーし、お前らあ!改めて…準備はいいかー!?」
「おー!!!」
「お、おー…」
俺も少し遅れて、声を出す。
おっさん達はジョッキとジョッキを合わせて音を鳴らせている。
これは…カンパイ?だっけ。昔やってたのを見たことがある。
おっさん達が俺の前でジョッキを構えて待っている。熱い視線と共に。
俺は少し控えめに自分のジョッキをおっさん達のジョッキに合わせる。
その瞬間におっさん達が一気にジョッキに入ってる液体を飲み干した。す、すげぇ…
また熱い視線を浴びる。なんだ。俺も同じように飲めってか。
…目の前のジョッキを見つめる。これってやっぱビールだよな…どう見ても。
いや、そんなことはもうどうでもいい。
どうせ俺はもう死んでるんだ。そうでなきゃ、俺の目の前にこんな豪華な料理が並ぶなんてありえない。きっとここは死後の世界だ。
だったらいいだろ!ビールでもなんでも飲んでやれ!!!
俺はジョッキを口につけ、液体を流し込む。
「ごくっ、くっ、ごくぅっ…ごっくん!」
………
「ふっ、ふふふっ。」
おっさん達が奇妙なものを見るように俺を見つめる。
「ふっ、ふふふっ。ふははっ。ふっ、はははは。はははははははは!!!」
おっさん達はすでに引いている。
だが、そんなのはどうだっていい。
俺は抑えられなかった。
「ふはははははははっ!!!はははははははっ!!!な、なんだよこれ!!!うっ、うっ…美味過ぎるううううーーー!!!」
俺がそう叫ぶとおっさん達の顔は段々と笑顔に変わっていった。
「ガッハハハハー!!そんなに気に入ったか!!!よっしゃ!俺達もどんどん飲むぞー!!!」
そう言っておっさん達は目の前の料理を片っ端から食いあさる。
俺も様々な料理を手で掴み、そのまま口に放り込む。どんどん、どんどん止まらず放り込むが、しっかりと一つ一つの味を確かめながら食べる。
な、何なんだこれは…最高か!!!
その後俺達は今ある食材が全てなくなるまで食べ尽くした。
翌朝、俺は窓から差し込む光で目を覚ました。
はしゃぎ過ぎたせいか、いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。
他には誰も起きていない。チャラ男なんかは床で寝てやがる。
俺が立ち上がろうとすると、おっさんが目を覚ました。
「ん…あ?お、小僧。起きたか。どうだ?調子は?」
あ…今言われて気づいたが、俺は全く調子が悪くない。大人とかは酒を飲んだ次の日は気持ち悪いというが、俺はなんでどうともないんだ?
「いや…別に…。でも、なんで俺はどうともないんだ?昨日あんなにたくさん酒飲んだのに…」
「あ?酒?なんのことだ?」
「えっ…き、昨日飲んでただろ?あのジョッキに入った…」
「あーあれか。あれは酒じゃねぇよ。あれはシュワーンつって見た目はほぼビールだが、味は全然違うし、アルコールも入ってねぇよ。」
「な、なんだよ…よかった…」
てっきり犯罪者になるとこだったぜ…ってまぁ今までに何回も盗んでるんだけどな。
「あっ、そうだ小僧。お前まだ入団手続きしてねぇよな。今からすっか。」
あ、まただ。入団とか…一体何なんだ?
「な、なぁ。一体俺はここで何をするんだ?ここは死後の世界じゃないのか?」
「は?死後の世界?何言ってんだ小僧。いいか、よく聞け。」
そう言うとおっさんはひと呼吸おいて、その場にいる全員が目を覚ます位のデカい声で言った。
「ここはこの俺、ズィーガーを団長とする守護者達の団体(ガーディアンズギルド)Dandelionだ!!!そしてお前は今日からこのギルドの一員として、俺達と一緒に世界一のギルドを目指すために冒険をしてもらう!!!」
「え…だ、だんでらいおん?」
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