第5話 セルリアン

 澄み切った青い空に白い雲、空の彼方から照りつける太陽が眩しい

 晴天のジャパリパークの地上から遥か上空をオウギワシは飛んでいた

 空からワシ特有の鋭い目で索敵をするのが目的だ、オウギワシにかかれば小さなセルリアンでも上空から捉えることは容易だ。


 山伝いに飛んでいると谷の方に妙な影を見かけた

 オウギワシは一瞬何かを見間違ったかと思ったがどうも気がかりで高度を下げて辺りを捜索した

 すると谷を流れる川沿いから少し外れた所にそれはいた


 オウギワシ「なんだアイツは・・・」


 それは大きさは自分とほぼ同じ、だが・・・明らかにセルリアンの様相だ

 オウギワシはそのセルリアンからはかなり離れた所から観察した

 幸いこちらには気付いてないようだ、ゆっくりとした速度で進んでいる

 どこへ向かうのか何が目的なのかさっぱり分からない・・・セルリアンはそういう物だ

 幸い周りにはフレンズの影はない、あのくらいなら自分ひとりで片付けられるか?

 攻撃をかけようと思ったその時


 オウギワシ「!?、なんだありゃ・・・あれは・・・!」


 ゆっくり動きながらセルリアンはグネグネと体を変化させて形態が変化した

 まだ不完全な形だがフレンズのような形だ

 フレンズ型のセルリアン、他のハンターから聞いたことはあったが目にしたのははじめてだった

 何れにしてもセルリアンはセルリアンだ、ここでカタをつけておかないと他のフレンズに被害がでるとも限らない

 拳を握りしめてオウギワシは飛び上がりヒューッと滑空してセルリアンの前に立ちはだかった


 オウギワシ「止まれ!悪いがここで消えてもらう!さあいくぞ!」


 拳を突き出し構えるとセルリアンは蠢きながら言葉のようなものを発していたが言葉になっておらずくぐもった唸るような声だった

 おかしい、普通のセルリアンなら相手を取り込まんとすぐに襲いかかってくるのに・・・

 姿形も奇妙だが行動も読めない、ハンターの勘が何かを予感してオウギワシは動けなかった

 するとどういう訳かセルリアンも腕のような触手のようなものを突き出し同じように構えた


 オウギワシ「コイツ・・・どういうつもりだ?…まあいい面白いじゃねえか!来やがれ!」


 オウギワシは距離を詰め挨拶代わりのジャブを連打した

 キレのいいジャブの連打をまともに受けセルリアンはのけぞる

 そこからワンツー、ボディ連打からの右フックが決まった

 オウギワシの攻撃を受けてセルリアンの体が削れキラキラとサンドスターが溢れる


 オウギワシ(コイツ、私と拳闘やろうってのか?・・・打たれっぱなしだが倒れる感じはねぇ・・・手応えはあるのに・・・)


 押し込むようにオウギワシのラッシュが叩き込まれる

 セルリアンはサンドバックのように棒立ちで打ち込まれ体を削られる

 オウギワシに押し込まれ、大木を背にしたセルリアンは後退することが不可能になった

 オウギワシは勝機とみるや渾身の力を込めた右ストレートを放った瞬間

 セルリアンはオウギワシの体に潜り込むようにかがみストレートをかわして強烈なアッパーでオウギワシの顎を一閃

 モロに食らったオウギワシは真後ろに飛ばされるように倒れ込んだ


 強烈な一撃を喰らい世界がぐるぐると回っていた。口からは血の味がする

 何が起きたのか一瞬理解できなかったがすぐに正気を取り戻した


 オウギワシ「ぐっ・・油断したぜ・・・」


 パッと跳ね起き拳を固め構え直す

 心なしかセルリアンの形が幾分ハッキリしてきてる気がする

 オウギワシはセルリアンを睨みつけた


 オウギワシ「へへへっ・・・やるじゃねぇか、そうだよそう来なくっちゃ・・・こいよ、私もこっからは本気だぜ?」


 ギラリとオウギワシの目が光った

 野性解放してセルリアンに突っ込んでいく

 得意のジャブを見舞うもセルリアンは先程とは違いガードを固めた

 オウギワシはならばと左のフェイントをかけてからの渾身の右ボディー


 オウギワシ「オラァ!!!」


 体が浮かんばかりの勢いの強烈なボディーをくらいサンドスターを撒き散らしながら吹き飛んだ

 しかしすぐに立ち上がるセルリアン


 オウギワシ「なんてタフなヤツだ・・・今のでやったと思ったが・・・並のセルリアンじゃねえぞ・・・」


 敵のタフネスに怯んだがオウギワシはすかさず追撃した

 セルリアンは小刻みに動きはじめる、まるでステップでも踏むように

 そしてセルリアンが踏み込んだ、オウギワシと交差するような形からのがら空きだった左脇腹へのレバーブロウ

 よろめいたオウギワシの顔面にセルリアンの拳のような触手がオウギワシのテンプルに叩き込まれる

 鼻血を出しながらもオウギワシはガードを固め、攻撃をかわし小刻みにパンチを打っていく


 オウギワシ(こいつ・・・段々強くなってきてる・・・マズいな・・・だがこれは・・・)


 セルリアンとの戦闘だが正々堂々拳を交えて戦ってる

 やるかやられるかの戦いで理想の形ができていることに少し心が踊っていたのにオウギワシは気づく


 オウギワシ「だがコレは戦いだ・・・ここらでケリつけさせてもらうぜ」


 セルリアンの打ち込んできたストレートを半身になってかわしその触手をとり

 オウギワシ自慢の鳥類のフレンズ最強の握力で握り、握った手と反対の手で殴りつけた


 オウギワシ「オラオラオラ!!!いくぜ!トドメだ!!!」


 セルリアンを投げつけると、羽を広げ飛び上がり、大きく後方へ移動して

 セルリアンに向かって思い切り加速をつけ・・・


 オウギワシ「うおおおおおおお!!!!!!!」


 ゴッ!!!グシャッ!!!!ザバッ!!!


 ”急迫のマッパンチ”、オウギワシの必殺技が決まった

 吹き飛ばされゴムマリのように跳ねながらセルリアンは川に落ちた


 オウギワシ「やったか・・・?」


 ザバッ


 オウギワシ「!?」


 川から上がったセルリアンの姿をみてオウギワシは驚愕した


「オウギワシ・・・」


 オウギワシ「お、お前は・・・」


 唖然としたオウギワシの手は下がっていた

 それをセルリアンは見逃さなかった

 一瞬で間合いを縮め右フックを叩き込んだ


 オウギワシ「がはぁ!!!」


 オウギワシ地面に叩きつけられ頭を強打した

 右目の上は腫れ上がりカットされ出血していた

 倒れ込んだオウギワシに無慈悲なセルリアンの攻撃が叩き込まれる

 意識が朦朧としはじめてもうダメかと思ったその時


 ??「うおおおおおおおおおお!!!!」


 バキィ!!!


 物凄い衝撃音と共にセルリアンは弾き飛ばされた


 ??「大丈夫か!?」

 オウギワシ「くっ・・・な、なんとか・・・お前はヒグマ!」

 ヒグマ「オウギワシ…何故一人で!それにアイツは・・・」

 オウギワシ「ああ、あいつはきっと・・・あいつはどこだ!?」

 ヒグマ「逃げたよ、全くこんな傷だらけで、間一髪だったな」

 オウギワシ「スマンな・・・ううっ、ちょっと流石にキツいな・・・悪いが私の縄張りまでたのむぜ・・・」

 キンシコウ「ヒグマさーん!大丈夫ですかー!?」

 ヒグマ「ああ」

 キンシコウ「あのセルリアン何処かに逃げたみたいです、すごい脚が早くて・・・」

 ヒグマ「そうか、じゃあとりあえずコイツを届けるとするか」

 キンシコウ「知ってるフレンズですか?」

 ヒグマ「ちょっとな」


 ヒグマに担がれながらオウギワシはあのセルリアンについて考えた

 そして一つの確信を得たが傷ついた体と疲れで気が遠くなってきてフッと力が抜けた

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リカオン Episode 0 @zatou_7

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