第3話 必殺スキル

 オウギワシとリカオンのトレーニングは何日も続いた

リカオンはフック、アッパーといった打撃からスウェーバック、ダッキングといった防御法を完璧に身につけた

パンチのキレは初日とはうってかわって鋭いキレのあるものになった

ある日オウギワシは一つの提案をリカオンに持ちかけた

オウギワシ「よぅリカオン、そろそろ実践的なトレーニングをやってみねえか?」

リカオン「というと?」

オウギワシ「グローブをはめてだな、ちょっと戦闘ごっこしてみねえか?」

リカオン「ええ!?危ないよ!」

オウギワシ「野性解放しないでグローブしてりゃあ大した怪我はしないさ」

リカオン「そうかな・・・?」

オウギワシ「今のうちに実戦に慣れとかないとあとで泣きをみるぜ、さっ、早いとこグローブつけな」

リカオン「うん・・・」

グローブをはめた二人は原っぱの真ん中あたりに立った

誰も見ていない邪魔する者も居ない二人だけの空間に少し張りつめた空気がながれる

オウギワシ「よっしゃ!どっからでもかかってこい!」

オウギワシは威勢よく構えた

リカオン「よし・・・!」

リカオンはやや固くなっていたがいつも通りのフォームになっている

僅かな間を置いてリカオンが先に仕掛けた

リカオン「シッ!」

弓矢のような素早いジャブ、それを軽いステップでかわす

続けざまにリカオンが右ストレートを放つ

オウギワシはそれを右腕ではじきつつ中に入り込んでリカオンの顔面にジャブの連打を見舞った

オウギワシ「ははは!どうしたどうした!そんなもんじゃねえだろ!」

リカオン「くっ・・・シッシッ!シッ!」

リカオンは果敢に突っ込んで攻め立てたが撃ち落とされるかかわされる

オウギワシは余裕の表情を見せていた

オウギワシ「今度はこっちからいくぜぇ!シュッ!」

目にも止まらぬコンビネーションを繰り出すオウギワシ

リカオンはガードするので精一杯だった

リカオン(コレじゃ攻撃なんてムリだ・・・距離をとらないと)

リカオンはガードしたままバックステップを踏んで距離を取る

しかしオウギワシは食いついて離れない、リカオンはガードを保ち尚逃げる

円を描くように一歩詰められたら二歩引くような絶妙な間合いをとって逃げた

そうしてるうちにオウギワシのパンチが段々とみえるようになってきた

リカオン(パンチがみえる・・・目がなれてきたのか)

オウギワシ「どうしたリカオン!打ってこい!逃げ回ってちゃセルリアンはやれねえぞ!」

オウギワシも段々と疲れてきたのか攻撃の鋭さが落ちているのにリカオンは気づいた

するとリカオンは逃げるのをやめその場で構えた

オウギワシ「その気になったか!?いくぜリカオン!」

オウギワシの激しいラッシュがリカオンに襲いかかる

それをリカオンはガードしつつも甘んじて受けた

リカオン(・・・ここだ!)

オウギワシの素早いジャブからの大ぶり右フック

それを紙一重で交わしリカオンはオウギワシにジャブを叩き込んだ

ジャブの連打からのワンツーがオウギワシの顔面にまともにはいった

リカオンのパンチをうけてオウギワシはダウンした

リカオン「だ、大丈夫!?」

オウギワシ「ててて・・・やるじゃねえか!これだよ、私が求めてたのは・・・拳と拳をぶつけ合うこれだぜリカオン!さあ続きといこうぜ、今度はちょっとマジでいくぜ」

リカオン「・・・ゴクリ」

今までとは一気に雰囲気が変わったオウギワシにリカオンは身構えた

オウギワシ「いくぜ・・・!」

バサッ

オウギワシは羽を広げた

リカオン「あっ・・・!」

一瞬だった、羽を広げたオウギワシが一瞬で間合いを詰めてリカオンの真下からアッパーカット一閃

リカオンは宙を舞って地面に倒れ込んだ


大きな雲のような影のような物が見える

それに私は食いついていく、どこまでもどこまでも

突き放されそうになっても諦めないで食らいつく

何故こんなことを?

(・・・仲間・・・)

仲間って?私は何を・・・


バシャッ!

リカオン「うわっ!」

オウギワシ「おい大丈夫か?」

顔に水をかけられてリカオンは飛び起きた

ちょっとだけ心配そうなオウギワシがリカオンの顔を覗き込む

リカオン「大丈夫だよ、ちょっと寝ちゃったみたい・・・」

オウギワシ「あんなにキレイに私のマッハパンチが入ったからなぁ、ちょっと私自信もびっくりしたぜ」

リカオン「うん、すごい技だった・・・」

オウギワシ「アレはとっておきだからな、お前もきっと自分のとっておきの技があるはずさ」

リカオン「そのためにもっとトレーニングしないとね」

オウギワシ「ああ」

リカオン「ところで・・・なんでオウギワシは私にこんな親切にしてくれるの?」

オウギワシ「なんでって・・・そりゃ・・・その・・・」

オウギワシは困った顔で言葉を濁した

リカオン「拳闘が好きだから?」

オウギワシ「・・・そう・・・それもあるかもな・・・リカオンはどうだ?これまでやってきて」

リカオン「最初は素手で戦うなんてって思ったけどやっていくうちにコレほど自分に馴染むものもないかなって気がしてきたよ、とくにこの「ワンツー」は自信があるんだ、シッ!」

リカオンはその場でワンツーを軽く披露した

オウギワシ「ならそいつを磨いて自分の技にするといいかもな」

リカオン「その為にまたトレーニング付き合ってもらうことになるけど」

オウギワシ「フッ、そんなのお安い御用だぜ、それに・・・お前と拳を交えてるときが一番楽しいんだ」

リカオン「え?」

オウギワシは照れくさそうに鼻をかいて立ち上がった

オウギワシ「さて、もう暗くなってきたし帰って休むとするか」

リカオン「ボスにジャパリまん貰いにいかないとね」

オウギワシ「じゃあボスのところまで競争だ!」

リカオン「負けないからね!」


打ち合いの後にもかかわらず二人は元気一杯に沈む夕日向かって駆けていった

オウギワシのパンチはリカオンの心に深く刻み込まれ後の自身のスキルへの足がかりとなったのだった・・・

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