第2話 拳闘
草原を駆けていた、必死に・・・死に物狂いだった
何かに追われているのか・・・追っているのかも分からない
誰かに呼ばれている・・・いや、呼んでいる?
(リカオン・・・!)
名前を呼ばれている・・・貴方は誰?何をしている?
呼ばれた方向に駆けていくとそこでプツリと世界が途切れた
リカオン「んっ・・・」
オウギワシ「おはよう!ほら、朝飯!」
オウギワシがジャパリまんを放ってきた
リカオン「おはようオウギワシ・・・ふわぁ」
オウギワシ「よく眠れたみたいだな」
朝から元気あふれるオウギワシを尻目に
リカオンは寝ぼけ眼をさすりながらジャパリまんを食む
リカオン「今日からトレーニングだけど、どうするの?」
オウギワシ「ここからちょっと行った所にいい所があるんだ、水場もあるし最高だぜ?」
リカオン「へぇ、丁度水が欲しかったし早速行ってみようか」
オウギワシ「よっしゃ!じゃあ早速ランニングだ!付いてこい!」
平原を抜け森林を進んでいくと小川の近くに開けた野原があった
よく見るとオウギワシが置いたのであろう何かがそこかしこに備えられていた
オウギワシ「到着!」
リカオン「ここかぁ・・・ところで、オウギワシは何も私に合わせて走らなくても飛んだほうがいいんじゃ・・・」
オウギワシ「走った方がトレーニングになるんだよ」
リカオン「なるほど」
オウギワシ「さて、とりあえず水でも飲んで一服するか」
リカオン「そうだね」
小川の水際に座り込み透き通った清水を二人で啜った
オウギワシ「ぷっはー!あーうめぇ!」
リカオン「冷たくておいしいね」
オウギワシ「よっしゃ!それじゃあ水も飲んだし早速はじめっとすっか!」
リカオン「よろしくお願いします!」
オウギワシ「ハンターになるにはまず、強くないくちゃならないそこで、自分の武器をまず磨くことが先決だ」
リカオン「武器・・・私の武器・・・かみつく?」
オウギワシ「違う違う、コイツだ」
オウギワシはリカオンの手を掴み指を一つづつ折って握りこぶしの形をつくった
リカオン「え?素手!?」
オウギワシ「そうだ、お前の武器はこれだ、そして私の武器も・・・これだ!」
ニッと笑いながらリカオンの目の前に拳を突き出す
リカオン「ええ・・・素手でセルリアンと戦えるのかな・・・」
オウギワシ「戦えるさ!だから私が戦い方を教えてやる、そう拳闘(ボクシング)をな」
リカオン「拳闘・・・」
はじめて聞く言葉だが何故か聞き覚えがあるような気がする言葉にリカオンは息を飲む
オウギワシ「いいか、まず左足を一歩前に出して僅かに前に体重をかけて、上半身の構えはこう、肩幅に拳を掲げ顎を引いて・・・もっと肩の力を抜いて・・・・そうだいいぞ」
リカオンの背中にピタリとついて手取り足取りオウギワシのコーチが始まった
オウギワシ「いい感じだ、その構えを忘れるな、それからそのまま左の腋を締める感じで素早く射抜くように内角に打つべし!」
リカオン「シッ!シッ!」
オウギワシ「いいぞリカオン、それが”ジャブ”だ!これを磨きあげるとこういうことだってできるんだ!」
オウギワシが構え目が光ると目にも留まらぬ速さでパンチを連続で繰り出した
オウギワシの拳は風を切るような鋭い音をだしていた
オウギワシ「フッ!シッシッ!」
リカオン「す、すごい・・・なんて速さだ・・・」
オウギワシ「このパンチが私の必殺技の秘訣さ、よし、次いくぞ!」
リカオン「は、はい!」
オウギワシの凄まじいパンチに気圧されていたリカオンにオウギワシは喝をいれた
オウギワシ「次は”ストレート”だ!右拳に体重をのせ右足と腰の回転を使い相手をぶち抜く!」
リカオン「ハッ!フッ!」
オウギワシ「流石だリカオン!そうだ!そのパンチだ!」
リカオンは自分でも分からなかった
構えといいこのパンチといい、元から体得していたかのように馴染んでいく
スポンジが水を吸うようにオウギワシの教えた事を吸収した
オウギワシ「いいかリカオン、ジャブとストレート、この2つを合わせたコンビネーション技、”ワン・ツー”だ!左の素早いジャブから右の重いストレートに繋ぐんだ!」
リカオン「左から右・・・シッ!フッ!」
オウギワシ「いいぞ!そうだ!だが・・・まだまだ足りない」
リカオン「足りない?」
オウギワシ「ああ、お前ならこの”ワン・ツー”をもっと昇華させられるハズだぜ」
お前ならできるときっぱりいい切ったオウギワシは自信に満ちていた
オウギワシの期待に応えるべくリカオンはジャブとストレートを磨いた
自然とステップを踏みながらパンチを空に打ち続けた
少しづつ動きがまとまって無駄のない形ができあがってきた
一心不乱にパンチを打つリカオンをオウギワシは真剣な眼差しで見つめていた
オウギワシ「よしリカオン、次はコイツを使ったトレーニングだ、その前に水でも飲んでおけよ」
リカオン「はぁはぁ・・・はい!」
水をのみ小休止したあとオウギワシは何かをリカオンに手渡した
リカオン「オウギワシ、これは?」
オウギワシ「これか、グローブってんだ、図書館でみた本で見よう見まねで作ったんだ」
リカオン「グローブ・・・随分使い込まれた感じがあるね」
オウギワシ「まぁな・・・」
オウギワシはどこか遠い目をしていた
オウギワシ「とりあえずそれを手につけてだな、私にちょっとパンチを食らわせてみろ、このグローブをしてれば当たっても怪我はしない、まあそう簡単には当たらんがな!はっはっは!」
リカオン「オウギワシ・・・これ付け方が・・・」
オウギワシ「おっとスマン、これはだなこうして・・・よし、さあ打ってこい!」
リカオン「よ、よし、じゃあ…シッ!シッ!」
リカオンは覚えたてのパンチを繰り出す・・・が
リカオンのパンチは空を切るだけで当たらなかった
リカオン「あ、当たらない!?」
オウギワシ「ふっ、だから当たらないといったろ、さあドンドンこい!」
リカオン「シッ!シッ!フッ!」
何度も何度もリカオンはパンチを繰り出すが一向にまともに当たらない
オウギワシの華麗なステップと紙一重でかわす身のこなしですべてを避けていた
オウギワシ「どうしたどうした!一発も当たらないじゃないか!」
リカオン「はぁはぁ・・・くっ・・・シッ!」
オウギワシ「私を倒すくらいの気持ちでこい!」
リカオン「はぁっ!シッシッ!」
バシッ!
リカオンのワンツーがオウギワシの顔面にヒットした
リカオン「あ、当たった・・・お、オウギワシ!」
オウギワシ「・・・それだリカオン!それがお前のワンツーだ!」
リカオン「これが・・・」
オウギワシ「その調子でどんどんこい!」
リカオン「はい!」
トレーニングは夕暮れまで続いた
リカオンのパンチが当たるたびオウギワシはニヤリと嬉しそうな顔になり
リカオンもまた拳闘というものが染み付くたびに本能的に心躍らされていた
リカオンのファイトスタイルはこうして確立されたのだった
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