第2話 変化球ヒロイン


微妙に整地したのかしていないのか分からない位の砂利道に軽やかに踏みつける足音が響く


「んん 今日はいい天気 オフの日だし 幸せだぁ」


少女は装飾品を好まないため中指に付けた指輪以外はシンプルな格好をしている


「おや カンミちゃんじゃないか」


「あっ こんにちは リンベルおじさん」


話しかけてきたおじさんは外でやっていた靴の整理の手を止めてカンミを見る


「今日はどうしたんだい?こんな時間に」


「こんな時間に ってやだなぁおじさん まだ昼間ですよ」


「いやいや カンミちゃんだから珍しいんだよ」


「あぁ…そうですね 今日は休みをもらったんです」


カンミは多忙なため仕事以外では休日の散歩以外はほとんど人と会わない

だが ここまで親しく出来るのはカンミの人柄の良さと言えるだろう


「とっところで あの…」


カンミは言い出しづらそうに体をモジモジさせる それを察したおじさんは「今日は出かけてるんだ」と言う


「そうですか…それでは今日は失礼します」


一瞬気を落としたかの様に肩を低くするが すぐに速く歩き出す


「まったく 嵐のような子だな」


恐らくおじさんだけでなくこの通りのカンミの知り合いがみんな思っていることだろう そんなカンミの歩く道には不思議と日がいつも照りさしている


「さてと クラナちゃんはいない事だしどうしよっかなぁ 図書館でメニちゃんの所に行く?…うぅん でもなあの子館内では厳しいしなぁ やっぱりいつも通りアクリの店かな…」


大きな独り言を踊るように話し 考えをまとめていると 目線の先に花屋が見える


「あれ?前までは無かったのに…」


カンミの足は自然と花屋に向き期待から軽い感じの足取りになる


「…」


しかし足は直前で止まり一つ前の路地にコソコソと身を隠す 目の前の光景…正確には人を見てカンミの口角は自然と上がり 耳は嬉しさから赤くなっていく


「かっ…かわいぃ… なにあの子花屋の娘さんかな? にしても…じゅるり 特にあの笑顔だね 花とよく合ってる」


花屋の前でお客さんと話している若い娘さんを見て 流れ出てきたヨダレをカンミは拭き取り 誠にだらしなく頰を緩ませて 「はぁ はぁ」と興奮した風に息を荒げる


「あの こんにちは」


「はい こんにちは …お花ですか?」


カンミからの好奇の顔に娘さんは視線と話題を逸らす


「そうです 店先のセンスがいいなって思って」


「そうなんですか! ありがとうございます 本当はおばあちゃんの店なんですけど私に任せるって言って」


見ただけで声を荒げるような危ない人を通常女の子に近づけたりしないがカンミ自体の美しさと人柄から話しかけてもあまり警戒されない


「店の感じも良いですよね こちらも娘さんが?」


「いえ 店はおばあちゃんが改装したもので まぁ 細かい所は私がしましたけど…」


「細かい所っていうと…あのライトとか?」


カンミは店先から中を興味深く

それは決して単なる興味では無く女の子好き特有の変態的な目だった


「はい!そうなんです どうですか…?」


恥じらいに赤く染め天然的に可愛い仕草にカンミは「はぁ はぁ」と気持ち悪い万能だ


「お姉さん…?」


「はっ…はい!ライトだよね うんすごく良いよセンスあるよ!絶対」


二回目の問いかけにカンミは慌てて冷や汗を流している 取り繕った言葉はかなり怪しかったのでカンミは勢いでフランクに流す

そこからカンミは不自然な変態的行為を取りながらも娘さんと店や花の話に花を咲かせる


「じゃあ また来るねコナハちゃん」


「はい ありがとうございましたカンミさん」


目の保養用女の子と更にもう一人仲良くなったカンミは嬉しさに足を弾ませて歩く


「…ちょっと君 待ちなさい!」


そんな中 路地裏からそんな声が聞こえた

覗いてみると警備員が二人 少年を挟んでいる その時 カンミに浮かんだ考えは


「きっとあの二人は悪党だわ あの少年を助けなくちゃ」


とんでもない勘違いだった







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迷走フラグ 大原 慎太郎 @oohara_shintaro

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