探さねば。

第32話 妄想→確証→罪証延延

 ウリッツァ班がヴィーシニャ崩壊を上官に報告した翌日、自分のベッドの上に座って頭を抱える者がいた。

 マギヤ・ストノストである。

 思い詰めた顔でぶつぶつと今までのあれやこれやを疑わなかった自分を責めていた。


 トロイノイがヴィーシニャに違和感を覚えたと報告したあの日、

 その日から時々無意識に髪の短いヴィーシニャを描いてプリストラに眼鏡の度数とヴィーシニャへの感情を心配されたあの日、

 ウリッツァ曰くかき氷の少年から見たヴィーシニャっぽい少女を描いたあの日、

 夏祭りの日に見たヴィーシニャを書くつもりがプリストラ探しの道中に会った浴衣の少女を描いていたあの日、

 ハロウィンから数日のちに気まぐれにペンを走らせたら桜髪ウェーブの白雪姫を描いていたあの日、

 ヴィーシニャにプリストラの火で焚き火をしようと誘われたあの日……?!


「……にしても今までのヴィーシニャが偽物だとしたら本物のヴィーシニャは一体どこに……」

「あの人の所です」

 マギヤが食いぎみに、確信のこもった言葉を放つ。

「え? なんであの人……ロリなんとかさんが出てくるんだ?」


 ウリッツァの質問を聞いた直後、マギヤは黒と緑の鉛筆を取り出し、シュババババと絵を描き上げ、ウリッツァに、覚えて、と言って見せる。

 後ろ髪は肩にかからない程度に、前髪は眉辺りでまっすぐ切り揃えられた黒っぽい灰色の髪に、緑色のつり目の整った顔立ちの少年が鏡の前で上半身裸で立っている絵……「な、なあ、なんか顔の中身が消えていくんだけど?!」

「先に『覚えて』と言ったでしょう。描いてから二十秒もすれば消えるんです。

 まあ、少し前まであの人の体全てが消えてしまい、貴方に顔以外も全て覚えろと言うのも酷でしょうと思ったので長らく見せられなかったんですが、

 これがあの人の上半身です」

「……下半身はいいのか?」

「今、一糸まとわぬあの人を知ってどうするんですか?」

 そう聞かれたウリッツァは少し考えて、それもそうか、と答える。


「……あの人に両親を殺されてから今日までずっと、絵を描こうとする度、無駄にきれいに、はっきりと、主に父の遺体を犯しているさま心の底から見たくないものや、微妙にくだらないものを描かされていたんです。

 ある日、一人で鏡の前に立つあの人を描いたと同時に消えていって確信しました。

 今までのあれやこれやはあの人が見た景色だと」

 そう言いながらマギヤは自分の机からノートを数冊取り出し、絵を見せる。

「……これからは皆で、本気で、あの人について調べましょう」

「そうだな……」

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