第17話 『彼』と少女、時々エカテリーナ

 彼と共に過ごしている少女チェルシーは不思議に思っていた。

「ねぇエカテリーナ……もといチェルシー」

「エカテリーn……じゃない、チェルシー」

「エカテ……チェルシー」

 なぜ彼はそこそこ頻繁に自分とエカテリーナを間違えるのか、そもそもなぜ祖母のことをわざわざ名前で呼ぶのか。

 前に彼が床にひびを入れたのを直していた際にチェルシーは、あなたも因子の持ち主なの、みたいなことを聞いたら、

 これはボクの能力じゃなくてエカテリーナもといおばあちゃんの能力、と言っていたのでエカテリーナは彼の祖母であるようだが、それだけとは思えなかった。

 エカテリーナと呼び間違えるにしろ、ちゃんとチェルシーと呼ぶにしろ、その時の瞳や声などに熱というか、甘えというか、色気というかがこもっているし、名前を呼ぶ最中、腕がこちらに伸びかけて戻すし。



 彼がチェルシーをエカテリーナと呼び間違えない機会があるとすれば、チェルシーの部屋の前で宙吊りになっているときである。

 ちなみに今日の宙吊りは天井側に頭がある直立姿勢ながら両腕は後ろで拘束されていて、その拘束部分が縄でぶら下がっている状態である。

 チェルシーがなぜこういうときは間違えないのか聞いてみたら、キミが本当にエカテリーナだったら宙吊りにならずとも同じベッドで目覚めていちゃいちゃできてるだろうから、と答える。

 さらにいちゃいちゃについて掘り下げたらこう返ってきた。

「……えっと、そもそもボクにとってエカテリーナは、おばあちゃんであり、おかあさんであり、お嫁さんなの。

 だからボクとエカテリーナは毎日何度でもちゅっちゅってするし、ぎゅってするし、あと……うう、キミにこれを言っちゃうのはちょっと恥ずかしいな……、……えっちな、ことも……いっぱい……あれ? 知ってると思ってたんだけど」

 チェルシーが彼の質問に対して知らないと答えた後、もしかしてわたしとエカテリーナを同一視してるの、と聞くと、そうだね、と頷き、こう続けた。

「キミはエカテリーナとおんなじ匂いがするから。……許されるならキミを抱きしめて、身体中にボクの、って印付けて、動けなくなるまでキミと……えっちしてたいってしょっちゅう思うぐらい。……キミはせいぜい最初の一つしか許さないだろうけど」

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