夏の学生の宿命
第19話 魔法等実技試験、女子編
広義の学生が長期休暇前と聞いて頭をよぎる物、それは期末試験である。
モンス島では座学科目の試験の他に、魔法実技科目と武器術科目にも試験がある。
武器術を選択していない一般生徒は魔法のみの力を見る試験を、
武器術を選択した一般生徒や日常警護班の生徒たちは武器術と魔法を融合させた実戦形式の試験を行う。
実戦試験のルールを簡単に説明しよう。
まず、実戦試験を受ける生徒には試験用の武器類と
衣類を
この装備の損傷ポイントが一定値に達するか、持っている武器や自分を観客席まで飛ばされるか、
十五分の制限時間経過後、装備の損傷ポイントが高い方になったら敗北となる。
この日は、実戦試験の決勝のトーナメント表が張り出されていた。
そこに名を連ねるのは、武器術を選択した一般生徒達が事前に予選として戦って優勝した生徒の名と、
その予選を免除された聖女親衛隊日常警護班の各個人名である。
そんなこんなで座学試験を終え、実技試験当日。
まずは女子の試験である。
トロイノイの最初の対戦相手は女子班ことリカ班のミト・フレーシかレイ・ポンドのどちらか――トロイノイは女子の中で圧倒的成績上位者ゆえにシード枠として戦闘回数が一回減る――である。
聖女親衛隊日常警護班の女子陣で随一の
動きやすい青色のドレスに、豪奢かつ上品な黄色い装飾をドレスや靴にあしらって、手に持った杖から魔法で応戦するレイ。
同班と言えど容赦のないレイの魔法でミトの装備の損傷ポイントが一定値――股間や女子の乳首など全年齢対象作品で見せたら苦情が来そうな所しか覆えない程度――になり、トロイノイとレイの対決が始まる。
トロイノイが、緑色メインのシューズに紺色のタイツをはき、ハーフマントと白に近い緑の長袖トップスと緑色のミニスカートを身にまとい、腰に鞘のついたショートソードを左右に一本ずつさげて、レイの待つ試合会場へ足を踏み入れる。
「……レイ、
試合が始まる前のトロイノイの第一声がこれである。
勝者になると、司会から次戦待機か休息かを聞かれる。
「あら、こう見えてわたくしの
このように黙っておいた方が有利になりそうなことをペラペラ喋るせいで、リカとトロイノイ以外の女子から影で「ポンコツお嬢」と呼ばれているのを本人は知らない。
「つまり戦わなかったあたしより魔力量ないってことじゃない」という言葉を飲み込んだトロイノイをよそに試合開始の合図が鳴る。
「とはいえ、加減はしませんわ! そびえ立て!
トロイノイの周りの地面が隆起し、高い壁となる。
モンス島の魔法の名前には三つの段階あり、最後にアをつけると初級魔法、アラをつけると中級魔法、アラレをつけると上級魔法になる。
「オーホッホッホ! わたくしの魔法の餌食となりなさい!」
そう言ってレイが魔法で高く飛び上がり、壁の中を覗くと中には誰もいなかった。
あら? とレイが呟いた直後、背後から殴られ、 レイは地面と衝突し、レイの服が弾け飛び、試合終了の合図が鳴る。
レイが高く飛ぶ呪文を唱えると同時に、トロイノイは
「な、なぜ
土の壁が消え、ミトに負けず劣らずの巨乳を揺らしながらレイは起き上がる。
「学園で教わらなくたって無詠唱行使はできるってことよ。……知り合いもそうだったし」
幼い頃トロイノイは、ローレンスが何気なく魔法を無詠唱行使するのを見て、自力で出来たという彼に教わって習得できた。
トロイノイはさらに質問を返す。
「そういうあんたこそ、
レイはその質問には答えず、瞬間移動の呪文を唱えて去った。
その後、司会から
次の対戦相手はリカ班の一人、フォーレ・ウッズ。
トロイノイと同様シード枠の一人で、トロイノイの直前にトロイノイの同室者アイン・ミーチャンに勝った少女。
戦闘装備は動きやすさを徹底した服と靴――ちなみに、フォーレの胸はトロイノイよりは大きいがリカ班では一番小さい――で、武器は双短剣である。
「あんたたちと胸で負けるのはちょっと悔しくはあるけど受け入れてやるわ。でも、テストでは、テストでだけは負けたくないのよね」
「そう。あたいも身長や成績であんたに負けても
風と風、双剣と双剣が激しくぶつかり合う。
両者一歩も譲らない戦いで決め手となったのはトロイノイがローレンスに教わった技の一つ、『双剣それぞれから風魔法と水魔法』である。
特に技名等は決めていない。
実技試験で衣装を身につける理由、それは大ダメージを食らった者の生死を確認するためである。
倒れた者――ここではフォーレ――の脈拍も呼吸もないと判断されると相手は失格になる。
判定結果は……問題なし。トロイノイの勝利である。
ついに最終戦、三人目のシード枠にして、最後のシード枠である女子一人に対して男子三人の逆ハーレム状の班の班長、フィー・ジクスに勝った、女子班ことリカ班班長のリカ・アルコとの対決である。
リカの戦闘装備を一言で表すなら赤い甲冑。
といっても、鎧はビキニアーマーのようなロマン鎧ではなく普通の鎧だが、裸などと大差なく動け、装備を縁取る黄色は光沢から黄金を思わせる。
そして地面には、リカの武器である、相対するトロイノイからはリカの下半身が見えないほどの太い剣が刺さっていて、その柄のてっぺんにリカは両手を添えていた。
「待っていたわ、
そして私に勝利を捧げなさい」
リカは
トロイノイに幅広の炎の斬擊が迫り来る。
トロイノイは急いでそれを回避したが、マントの端に火がついてしまい、それを水で打ち消した後、瞬時に風で乾かした。
「さすが、完璧すぎる大魔導師の娘。見事な対応ね。けれど、これはどうかしら?」
リカは瞬間移動でトロイノイとの距離をつめ、大剣を叩きつける。
トロイノイはとっさに双剣で受け止めたが、さらに来る下からの重い一撃を防ぎきれず後ろに倒れるトロイノイに、リカは大剣を振りかぶってこう言う。
「とどめよ、
「あのねえ!」
瞬時に起き上がったトロイノイは短い文句を言いながら、リカに渾身のアッパーを食らわせた。
「ねぇ、人の名前を呼べない家訓でもあるの? ないでしょ? あたしの名前呼ぶと死ぬ奇病にかかってんの? ないでしょ?!」
リカにこう説教をしている内に五カウントになり、トロイノイの優勝が決まった。
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