第20話 魔法等実技試験、男子編
女子の魔法等実技試験の決勝戦を終えた翌日、男子の魔法等実技試験の決勝トーナメントが開催される。
そしてウリッツァは、なんと準決勝まで勝ち進んだ。
その準決勝の対戦相手は、なんと、
「マ、マギヤ?!」
そう、ウリッツァ班対決にして同室対決である。
「ウリッツァ、トーナメント表を見ていて、こうなることを想定できなかったんですか」
「いや、お前からアドバイスがあったとはいえ、ここまで勝てるとは思ってなかったから嬉しい半分戸惑い半分で……」
試合準備の掛け声とともに、ウリッツァは腰から下げた長剣を抜き、
マギヤは背中の矢筒から矢を取り出し、弓にあてがう。
試合開始の合図が鳴り、マギヤはウリッツァに矢を放つと同時に、こう声をかける。
「アドバイスは覚えてますよね?」
「ああ、一つ! 『
モンス島で戦う上で主な防御手段は二つある。
一つは避けること、もう一つはほんの少し
矢を避けてそう言いながら切りかかってきたウリッツァをかわすマギヤ。
「ええ。ですが、もう一つのアドバイスを実践するのを忘れていますよ!」
「え! なんだっけ?!」
「『試合開始前及び試合中に相手を誉めない』です!」
マギヤがそう言った直後、ウリッツァに大量の矢のようなつららが降り注ぐ。
全て避けたり武器で斬ったりしながらウリッツァは言う。
「今の
「いえ、
マギヤのように弓などの遠距離武器を扱う者には特権と特殊な敗北条件がある。
特権とは遠距離武器の他に近接武器を一つだけ持てること、特殊な敗北条件とは相手の頭や心臓に矢や弾などを当てることである。
マギヤがウリッツァに使用した魔法を自白した後に放った矢がウリッツァの戦闘服の腕部分を裂く。
ウリッツァはこの試合で使用する矢が本物の矢じゃなくてよかったと冷や汗をかいた。
マギヤの矢や剣撃や魔法を、回避と受け流しをした末にウリッツァが見たものは、うつ伏せで倒れるマギヤだった。
マギヤは最後の魔法を放つと同時に倒れていた。マギヤの魔力切れでウリッツァの勝利である。
休息を経て、試合会場に入ったウリッツァ。
そこには同じく決勝まで勝ち進んだプリストラが待っていた。
「まさかウリッツァがあのマギヤに勝つなんてね……」
「オレも予想外……。オレが負けて、お前とマギヤの兄弟対決になるってずっと思ってた……」
「けど、相手がウリッツァだからって僕は負けるつもりはないよ! ヴィーシニャに僕の方が強くてかっこいいってことを見せるんだから!」
試合開始の合図と同時にプリストラは構えて、自らの周囲に握りこぶし大の火の玉を四つ生み、それらをウリッツァに襲いかからせる。
「ちょっ! プリストラも、無詠唱で、魔法、使えんの?!」
ウリッツァは炎と、迫ってきたプリストラの物理攻撃を避けたり、剣で攻撃を止めたり流したりしながら言う。
「なんか! 何度も! 結界に! 魔法を! 付与する、うちに! 身に! 付いてた! みたい!」
プリストラの武器は、手甲と、脛にスパイク付きで爪先やかかと部分を金属で強化したブーツで、いつもの眼鏡は目を潤す魔法をレンズの目側に付与したゴーグルになっている。
『因子の能力を使う際は、いやでも目を閉じられない』という法則は知っているだろう。
プリストラは、その弱点を克服する策として、あのゴーグルを思い付いたのである。
ゴーグルに毒魔法を付与して目潰しさせれば……と思うかもしれないが、実技試験の際に毒魔法を使うのはご法度だし、そもそもウリッツァは毒魔法を使えない。
あれは土属性魔法の適性が一定以上ないと使えないのである。
プリストラの因子の能力は、本人も言ったように結界を生み出す能力で、いつだったかヴィーシニャの夜を守る用に作った球体があるだろう。
あれはプリストラの因子の能力によるものである。
しかもこのプリストラ、ウリッツァにとことん容赦がない。
ウリッツァが攻撃する番になれば、自分を包むカプセル結界を展開して攻撃を完全ガードするし、結界を解除した隙にウリッツァが放つカウンターすら回避する。
因子の能力の使用自体はルール違反ではないが、プリストラにあの超ガードをされた相手は、次回からプリストラのみ使用制限を設けるようルール裁定者に言う準備を整えてある。
その時、タイムアップのブザーが鳴った。
装備の損傷ポイントがより少なかったのは……ウリッツァであった。
え、なんで?! というプリストラの声にダメージ解説の映像が流れる。
プリストラは硬い結界の中で動いたり、ウリッツァに一撃したりするたびに装備の損傷ポイントが上がっていく。
対してウリッツァは回避を優先して立ち回っていたので装備の損傷ポイントが少なく済んだのだ。
こうしてウリッツァは一位に、プリストラは二位に、そしてマギヤはウリッツァ戦後の三位決定戦で三位になった。
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