第15話 先代聖女とは

 先代聖女マナの訃報を受けて、とぼとぼ歩くウリッツァ班一同。

「……屋敷の外で餓死なんて一体なぜ……」

「マナ様は寝ずの番の子を二人以上配置するのが常だったらしいのにどうやって外に出たの……?」

 ストノスト兄弟がそんなことを話しているとウリッツァが呟いた。


「……なあ、実はオレ、コルドー司令官に『マナ様を探せ』って言われた時からずっと思ってたんだけどさ、

 オレたち、先代聖女マナ様についてほとんど何も知らなくね?」


「あー、言われてみるとそうね。

 せいぜいさっきプリストラが言った話と、あたしたちが生まれた年にマナ様が辱められて、その翌年に聖女になった、ってことくらいじゃない?」

 トロイノイの中盤の言葉にウリッツァ班男子が、え?! と驚きの声をあげた。


「え、って……ああ、そういえば言えてなかったわね。マナ様捜索とか新しい授業とかでバタバタしてたし」

 その時、ウリッツァ班一同の腹が鳴る。

「……まずお昼にしましょう、話はそれからね」



 食堂で昼飯を食べ終わり、トロイノイが話し出す。

「えーっとね、去年の夏が終わるぐらいにヴィーシニャが今後聖女を務めるのに支障はないかの検査入院があったでしょ?

 で、あたしたち女子はその時、聖女の寝ずの番の予行練習ってことで集められたんだけど、その時に『二度とマナ様の悲劇が起こらないように』って言われたの」

「その『マナ様の悲劇』というのが例の……その……」


「ええ、マナ様が検査入院をしていた日、番をするべき子が一人もいなくなってしまったわずかな時間、マナ様だけが眠る部屋に医師が入ってそのまま……ね……。

 ただ、その医師は別の女性の名前を泣きながら呼んでいたそうだし、

 他の医師に止められて色々聞かれてもその名前しか答えなかったらしいし、

 医師としての腕の高さから働きづめで精神的に疲れがたまっていたのだろうって、二年の医業停止にとどまったのよね」

 ウリッツァが戸惑う表情で「ず、ずいぶん詳しいな」と返す。


「後半はあたしが小さい時、母さんに、どこにいるか分からない父さんのことを聞いたら言われた話よ。

 それに母さん、こうも言ってた、自分が父さんを追い詰めたんじゃないかって。

 聞いたときは何のことか分からなかったけど、五歳の誕生日から母さんの姿を見なくなって聖女親衛隊になってマナ様のことを調べてびっくりしたわ、

 マナ様の検査入院の日があたしの誕生日だったから……」


「トロイノイは悪くありません」

 突然のマギヤの言葉にトロイノイは、へ? と言わざるをえなかった。

「トロイノイは何も悪くありません。

 自分が生まれた、ただそれだけで悪者呼ばわりされる不幸を感じる必要なんてありません」

 マギヤのいつになく熱い言葉にみんな静まり返ってしまった。

 そんな中、プリストラが話を切り出した。


「え、えっと話変わるけどさ、マナ様人形が作られていたとき、本人は作られてる現場にいたってヴィーシニャは言ってたよね。作られてからはどうだったんだろう?」

「今度ヴィーシニャに聞いてみるか」

 今度が今になり、ウリッツァ班一同に尋ねられたヴィーシニャは、マナ人形が作られてからのマナについては、人形が記憶していないので分からないと答えた。

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