先代聖女って……。

第13話 定例報告

 トロイノイが現聖女ヴィーシニャに違和感を抱いてから九日後、聖女親衛隊日常警護班の面々と聖女親衛隊の各部署の代表らや、我々で言う警察組織の代表者らが会議室に集っていた。

「これより春の初節末の報告会を開始する」


 そういえばモンス島の暦について話していなかった。モンス島の一年は四ヶ月、三百六十六日である。

 四ヶ月とは春の月、夏の月、秋の月、冬の月のことである。

 さらにこの月から初節、中節、終節の三節に分かれ、一節は二十九日から三十一日である。

 春の月が我々の太陽暦に換算して四月から六月、夏の月が七月から九月、秋の月が十月から十二月、冬の月が一月から三月である。


 ついでに言っておくと現聖女ヴィーシニャの誕生日は春の初節の二十日、我々の暦に換算して四月二十日。

 先代聖女マナの誕生日は冬の中節の最終日である二十九日で我々の暦に換算して二月二十九日である。

 そして今日は春の初節の最終日たる三十日、つまり四月三十日である。



 今回の報告会で報告されたのは、ヴィーシニャの誕生日の翌日こと、春の初節の二十一日に、先代聖女マナの行方が分かったことである。

 通行人が道で先代聖女マナが倒れていたのを発見し通報したが、病院に着いた頃にはもう死んでいた。


 死因は餓死。報告会にいたほとんどの者たちは、見つかったのはよかったが、守れなかった……、という空気に包まれていた。


 モンス島では生き物は死ぬと霊になって、この世をさ迷ったり、思い出深い地に留まったりするという。

 その霊は、因子所有者かつ霊を感知する能力を持つ者や魔力110以上マナオーバーの一部がそれを認識でき、警察組織では霊を追う専門の部隊があるほどだ。


 だが、警察組織の霊能力部隊の代表は、霊能力部隊に属する者らや協力してくれる霊能力者らに、死んで霊になったであろうマナを探させるようにさせたところ、誰もマナを感知したという報告がないそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る