第9話 ヴィーシニャ異変?
トロイノイがヴィーシニャの寝姿を見守って夜が明けた。
起きて、自分に声をかけてきたヴィーシニャに少し違和感を覚えたトロイノイ。
寝ぼけまなこでヴィーシニャを見つめても何もわからない。
トロイノイはヴィーシニャの滑らかな手を取り、聖女の寝室から出て階段を降りる。
トロイノイとヴィーシニャが階段を降りてきたところ、ウリッツァ班男子こと、ウリッツァ、マギヤ、プリストラと出会った。
「おっはー、トロイノイ、ヴィーシニャ。早速だけどトロイノイ、今日の授業どうする? 休む?」
聖女に寝ずの番をした者には、その日の授業を休む権利が与えられる。
ウリッツァ班には女子がトロイノイしかいないので、日付が変わってから皆が起きだす朝六時までずっと聖女を見張らなくてはならない。
日々の業務に加えて、六時間も寝ないでいるのはさすがにきつかろうと、
トロイノイをはじめ、聖女見張り当番になったもう一つの逆ハーレム班の女子は、その日の授業を免除する権利がある。
ちなみに女子が二人いる班は午前中の授業を免除する権利があり、
三人以上の班はいやらしくない夜伽に参加した者のみ午前中の授業を免除する権利がある。
先のウリッツァの問いかけに対してトロイノイはこう答えた。
「ん~……、午後から出るわ。本当は朝から出たいんだけど、ちょっと眠くて……」
「無理はよくないですよ、トロイノイ。けれども、出たい理由って何かあるのですか?」
「……えっと、なんとなーくなんだけど、今日のヴィーシニャ、なんか雰囲気違わない?」
トロイノイにそう言われてウリッツァ班男子がヴィーシニャを見る。
「え? 別にいつも通りじゃね?」
「……ウリッツァと同意見なのは少し癪ですが、言われて気になる点はございませんね」
ヴィーシニャをまじまじと見つめていたプリストラが口を開く。
「……髪、七ミリぐらい切った?」
プリストラの言葉を聞いてトロイノイはヴィーシニャを見やる。
「え? ……言われて見たら少し短い気はするけど……細かすぎない?」
「なあ、ヴィーシニャ、どうなんだ?」
ウリッツァにそう聞かれてヴィーシニャは、にこやかに答えた。
「いつも通りよ。心配しないで」
本人がいいならいっか。そうウリッツァが言った後、ウリッツァ達は聖女邸の食堂へ向かった。
食堂で歓談していると女達がトロイノイに絡んできた。
女達、という言葉から察しは付くだろうが、トロイノイに絡んできたのは日常警護班で唯一女子しかいない班の面々である。
女子の成績ランキングで全科目一位を取り続けているトロイノイ、そんなトロイノイを女子班はこう呼ぶ。
「ちょっと、無視しないでよ、
「はぁ……。よく飽きないわね、その長ったらしい呼び名」
我々で言う小学生から高校生にかけて、一般座学、魔法座学、魔法実技で優秀な成績を修めた者を
例えば三大科目全て一位を取った
三大科目どころか一般実技も全て一位になったらパーフェクトの前にオーバーが付き、
つまり
そんな伝説の
しかし、トロイノイはこう呼ばれるのを、あまりよく思っていない。
「本当ですよ、その長い称号を言っている暇があるなら目の前の食器を片付けて欲しいです。
それにトロイノイをあんな冷血漢と一緒にするなんて失礼にもほどがあります。ねえ、プリストラ?」
「冷血漢って……。成績のために遊びの誘いを断りまくったとか、聖女親衛隊のスカウトを蹴ったとか聞いたけど……。うん、トロイノイと一緒ではないよね」
「まあ、トロイノイはトロイノイだよ。ていうか、オレたちも食器片付けないと、コルドー指揮官にどやされる!」
上司の怒声を恐れてウリッツァ達は食器を片付けた。
ヴィーシニャについて、ウリッツァ班の誰も納得のいく答えが見つからないまま夜になった。
さて、ここは聖女邸にある、トロイノイとそのルームメイト、アイン・ミーチャンの部屋である。
シンプルで大人っぽく整頓されたトロイノイのスペースと、少女趣味なアインのスペースのコントラストが映える空間である。
今日、聖女を見張るのはアインが所属するドン・カセ班である。
「じゃあ、先に寝るわね。おやすみなさい」
二段ベッドの上段で壁を向いて寝ようとするトロイノイ。
二段ベッドと学習机の間の床辺りから声がする。
「おやすみ、トロイノイ。それじゃ聖女様の寝顔を見てきまぁす」
「侵入者がいないか、見てきなさい」
はぁい、というアインの返事の後、トロイノイは眠った。
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