第4話 聖女親衛隊

 聖女交代式から一週間が過ぎた頃、ウリッツァ、マギヤ、トロイノイ、プリストラ、

 そして新聖女ヴィーシニャは学校の進級式に出ていた。

 新十年生代表マギヤ・ストノストが誓いの言葉を述べた後、新十年生の面々が、今後の正装に使えるマントを受け取る。


 この日を境にウリッツァたちは我々で言うところの高校一年生になり、

 特にウリッツァ、マギヤ、トロイノイ、プリストラは正式に聖女親衛隊日常警護部実働班の一員となる。



 聖女親衛隊とは聖女を世間の悪意から守り、救うために作られた組織である。

 中でもウリッツァ、マギヤ、トロイノイ、プリストラらの属する日常警護部実働隊は、聖女の日常に溶け込むため、聖女と同年代の者たちで構成されている。

 もちろん、ただ聖女と同年代というだけでは実働隊は務まらない。

 知能、魔法力、戦闘力、これらの全てとは言わずとも、いずれか一つ以上に秀でた精鋭たち、あるいは聖女本人が直々に任命した者たちがここに集っている。



 例えばマギヤ・ストノスト。

 マギヤは九年生修了時点の男子一般座学(我々で言う、国語・数学・理科・社会)成績ランキング一位、男子魔法座学成績ランキング一位、男子魔法実技成績ランキング一位の優等生である。

 ただ男子一般実技(我々で言う、美術・音楽・体育・家庭科)成績ランキングは十位、男子総合成績ランキングは五位。

 美術(実技)の成績の低さが足を引っ張っているのだ。

 マギヤの作る作品はなんというかとんでもなく下手というより、

 学校の成績で計れないほど独創的なのである。

 体内魔力マナ量は58で魔力50以上110未満ハイマナ

 魔力50以上110未満ハイマナは十年生の進級式で受け取るマントがロングマントである。

 マギヤを入れて十数名以外の魔力マナ量が50に満たない生徒らが受け取るのはハーフマントである。



 それからプリストラ・ストノスト。マギヤの二卵性双生児ふたごの弟にして魔王因子の持ち主。

 魔王因子とは聖人因子と対になる因子で三十年に一人、ある一組の多胎児の二番目以降の子供が持つ因子である。

 聖人因子持ちと同様、多くの魔王因子持ちは生まれながらに魔法とは別の特殊な能力を持っている。

 それから魔王因子の能力を行使しているとき目をつぶれないのも聖人因子の能力と同様である。

 九年生修了時点の男子一般座学成績ランキング二位、男子魔法座学成績ランキング二位、男子魔法実技成績ランキング三位、男子一般実技成績ランキング三位、男子総合成績ランキング三位と優秀といえば優秀なのだが、どことなく中途半端な成績であることは否めない。

 体内魔力マナ量は48。あと少しで魔力50以上110未満ハイマナになれただろうに、やはり中途半端である。



 それからトロイノイ・ロクエ。

 九年生修了時点の女子一般座学成績ランキング一位、女子魔法座学成績ランキング一位、女子魔法実技成績ランキング一位、女子一般実技成績ランキング一位、女子総合成績ランキング一位の超優等生。

 その優秀さから過去に最終的な男子全成績ランキング一位を修めた男の、娘と噂されてしまう程である。

 体内魔力マナ量は28。


 そしてウリッツァ・サンクトファクトル。

 孤児同士、新聖女ヴィーシニャと姉弟同然に育ち、その縁ゆえに聖女ヴィーシニャ直々に聖女親衛隊日常警護班ウリッツァ班班長に指名され、マギヤ、トロイノイ、プリストラを率いることになった。

 優秀な三人と比較すると正直体育の成績以外、勝てる点がない。

 座学はそれなりの成績をとっているが、家庭科の実技と魔法実技の成績があまり高くない。

 ウリッツァの魔力マナ量は平均体内魔力マナ量25に対してたったの10。

 また、ヴィーシニャと同様、聖人因子の持ち主だが、自分の能力も分かっていないのである。



 ウリッツァ班の面々を説明するうえで多用した、体内魔力マナ量について説明しよう。

 体内魔力量、それは読んで字のごとく生まれた時から持っている魔力マナの量のことである。

 この体内魔力量の十倍の数が一日に使える魔法の回数だ。

 また、魔力量が50に満たない者たちは魔力50以上110未満ハイマナと区別して魔力50未満ローマナと呼ばれている。


 ちなみに、現在行方不明扱いになっている先代聖女マナは魔力量150の魔力110以上マナオーバーである。

 魔力110以上マナオーバーとは抱えている魔力の量が多すぎるあまり、一部体外に漏れてしまっている者のことを指す。

 訓練を積めば漏れる魔力を制御し、それを自由に操れるようになる。

 今年の新十年生の中にはいなかったので触れなかったが、魔力110以上マナオーバーは進級式でフード付きロングマントを受け取る。

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