第2話 委員長-Class president

 束縛された時間は長くなかったとはいえ、一秒が勝負の分かれ目となる購買部である。職員室で担任から解放され、その足で向かうが、時既に遅し。近くに食堂もあるが席取り戦争にも不戦敗。まぁ食堂の雰囲気は好きではないので行くつもりは毛頭なかったのだが。そんな訳で仕方なしに売れ残りか余り物かのパンを買って教室へと戻ったのだったが、

「あれ?早かったね、庶迂しょう

 己の席も占領されていた。

「どういう意味だ?委員長様」

「てっきりきつく搾られてくるものだと」

「本当に意味を聞いた訳じゃないからな」

「冗談だよ。庶迂は良い子だから」

 なぜ嬉しそうな表情を浮かべているか分からない。小さく溜め息をついてから、ぶっきらぼうに聞くことにした。

「他の連中はどうした?」

 他の連中とは、彼女の昼飯の時に所属しているグループのメンバを指す。

「あれだよ。新人戦の為の応援の練習」

「そりゃご苦労なことで」

「うんうん。それで一人ぼっちになって寂しくなったから席借りちゃった」

 入学してまだ2週間。座席の順番は出席番号を基準に窓際から昇順に並んでいるのだが、そうである限り『分目わんめ』の姓を持つ庶迂は常に廊下側の最後列だった。その鉄則は前の席の渡辺さんですら「マジかよ…」と唸らせる程の強固なルールだった。まぁそれは良いとして…、彼女に言わせればこの座席位置と言うのはソファーの裏側に居るような、はたまた押し入れの中に居るような(これは賛否両論だと思う)そんな気持ちになって落ち着くとのことだ。

「あ、席どこうか?」

「いいよ、渡辺の席借りるから」

 パンの封を開けながら答えた。

「なら遠慮なく」

 小学校の頃に庶迂が彼女のいる学校に転校して来た時、転校生と言う珍しさのレッテルが剥がれても尚、親しく声を掛けてきたのが彼女だった。彼女はその時からテニスが上手く、中学では三年連続で全国大会に出場した。頭も良く、人当たりも良いので現在でもテニス部の期待の大型新人と周りから持てはやされている。彼女と性格は真逆だってのに、腐れ縁と言うのは本当に不思議なものだ。

「なぁ」

「んー、なんだい?」

「俺達って幼馴染、とは言えないよな」

「へっ?」

 彼女のキョトンとした表情は印象的だった。

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