第26話 アリス、ハッピーエンド!?

天使から悪魔に戻ったら傲慢のルシファーは死んでいた。アリスは泣き崩れるしかないのだった。その様子を運命の女神ディスティニーちゃんと姪のマリーアントワネット・萌子はただ見守るしかできなかった。


ここは天界。

「私が死せる悪魔を生き返らせてあげましょう。」

泣き崩れるアリスに幸福の女神のハッピーちゃんが言った。

「え!?」

アリスは顔をあげて幸福の女神のハッピーちゃんを見上げる。

「ハッピーでございます。」

幸福の女神のハッピーちゃんは人間を幸せにするための女神である。もしも泣いている人間がいるならば、その涙を止めることが仕事である。

「そんなことができるの!?」

アリスは死人ならぬ死に悪魔を蘇らせるという話に疑いを持つ。

「私、これでも幸福の女神でございます。」

幸福の女神のハッピーちゃんは天高く舞い上がる。

「ハッピー! ハッピー! ハッピーでございます!」

幸福の女神のハッピーちゃんが魔法の呪文を唱えるように、この世界における小さな幸せを集め幸福の光のオーラを、まるで神のように神々しく、深い眠りに着いている悪魔の傲慢のルシファーに向けて放つ。

「光がまぶしい!?」

幸福の光は傲慢のルシファーの体に注がれ、傲慢のルシファーが輝きを放つ。

ドクン、ドクン。

傲慢のルシファーの心臓が動き始めた。

「何この音は? 心臓の音?」

アリスにも傲慢のルシファーの心臓の音が聞こえてくる。そして鼓動は眠りに着いた体全体が脈を打つかのように、少しずつ体全体に生気が戻ってくる。

「う、動いてる!? 心臓が動いてる!?」

アリスは眠っている傲慢のルシファーの胸に耳を当てる。ドクン、ドクンっと止まっていた心臓の音が聞こえてくるのだ。

「生きてる!? 本当に生き返ったんだわ!?」

アリスは止まっていた傲慢のルシファーの心臓が動いているので驚く。アリスはビックリするとともに涙の流れている顔が笑顔になる。

「ハッピーでございますか?」

幸福の女神のハッピーちゃんが幸福の女神の力を見せつけ、傲慢のルシファーが生き返り悲し涙がうれし涙に変わったアリスに尋ねる。

「ハッピーでございます!」

アリスは涙に濡れた顔で笑顔を作り、好きな人が生き返ってアリスは幸せだった。

「ディスティニー。」

幸福の女神ハッピーちゃんが妹の運命の女神ディスティニーちゃんを呼ぶ。

「はい、ハッピーお姉ちゃん。」

運命の女神ディスティニーちゃんは、姉の方を向く。

「あなたは運命の女神なのですから、自分が運命の騎士ディスティニーナイトにした女の子には、運命の変え過ぎに気をつけないといけないと注意しないとだめじゃありませんか。それでも運命の女神ですか。」

幸福の女神ハッピーちゃんは妹に説教を始める。女神とは何たるかということを妹に言う。

「申し訳ありません。ハッピーお姉ちゃん。」

運命の女神ディスティニーちゃんは、素直に反省する。

「私にではありません。アリスさんに謝りなさい。」

幸福の女神ハッピーちゃんは女神である前に、運命の女神ディスティニーちゃんの姉であった。妹が可愛いので、ついつい厳しく怒ってしまう。

「わ、私はそんなに怒ってないから、そんなにディスティニーちゃんを怒らないであげて。こいつも生き返ったことだし。」

アリスは姉の幸福の女神ハッピーちゃんに叱られている妹の運命の女神ディスティニーちゃんをかばった。

「アリス、ありがとうです。」

運命の女神ディスティニーちゃんは、優しいアリスに感謝した。

「うんうん。私の方こそ、ディスティニーちゃんに出会っていなかったら、もう死んでいたのかもしれない。そうしたら恋も知らないまま、あの世に逝っていたかもしれないのよ。感謝するのは私の方よ。ありがとう、ディスティニーちゃん。」

アリスは運命の女神ディスティニーちゃんに笑顔を送り、運命の騎士ディスティニーナイトの運命の変え過ぎに気をつけようという注意事項を言い忘れた罪を許した。

「良かったですね。ディスティニー。これからも運命の女神として、がんばるのですよ。」

幸福の女神ハッピーちゃんはアリスと妹が仲が良くて良かったと感心した。

「でも、この悪魔、目を覚まさないわね。」

ふと、姪のマリーアントワネット・萌子が呟く。

「そ、そういえば!?」

アリスも心臓の音は聞いたが、悪魔の傲慢のルシファーの意識が回復していない。眠り続けているままだった。

「やっぱりキス!? キスが必要なのよ!? アリスおばさんの!?」

恋やキスに興味津々の10才のませた小学生のマリーアントワネット・萌子はアリスにキスするように促す。

「おばさん言うな!? キスするヒロインがおばさんでどうする!?」

アリスは照れながら怒る。それでもアリスもお姫様として自分の口づけで、眠れる王子様が目を覚ますならなら、それはそれで悪い気はしなかった。

「キス! キス! キス!」

マリーアントワネット・萌子と運命の女神ディスティニーちゃんが再びキスコールを繰り広げる。

「そこまで言うのなら・・・。」

アリスは傲慢のルシファーに寄り添い、瞳を閉じて唇をペンギンのように突き出す。

「ダメです!」

幸福の女神ハッピーちゃんがアリスの口づけに待ったをかける。思わず、アリス、マリーアントワネット・萌子、ディスティニーの3人は時間が止まったように動きを止める。

「なんで!?」

アリスは幸福の女神ハッピーちゃんにキスを止められて、少し不機嫌そうに聞く。

「子供の前で大人がはしたないことはしないで下さい。」

幸福の女神ハッピーちゃんは、アリスを大人と言い、子供にキスシーンを見せるなという。

「え!? まさか・・・ハッピーちゃんは何才なの?」

疑問に感じたアリスが幸福の女神ハッピーちゃんに年齢を聞く。

「3才です!」

幸福の女神ハッピーちゃんは、姉ではあるが妹の運命の女神ディスティニーちゃんと同い年の3才であった。

「ええ!? ディスティニーちゃんと同い年なの!?」

アリスは女神が3才ばかりなので驚いた。

「はい。女神は年を取らないので、永遠の3才です。」

幸福の女神ハッピーちゃんは、勝ち誇ったように楽しそうに言う。

「恐るべし、変な妖精のぬいぐるみ3姉妹。」

アリスは、ハッピー、ハッピネス、ディスティニーの女神3姉妹に恐れおののく。

「違いますよ。私たちは4姉妹でございます。」

ハッピーちゃんは、ハッピネス、ディスティニーのほかにも姉妹がいるという。

「ええ!?」

それに驚くアリスとマリーアントワネット・萌子。

「本当ですか!? ハッピーお姉ちゃん!? 初めて聞きましたよ!?」

運命の女神ディスティニーちゃんは、4姉妹だと初めて聞いてビックリした。

「初めて言いました。だって聞かれなかったもの。」

幸福の女神ハッピーちゃんも初めて言ったらしい。

「4姉妹目は、隠し子設定で奇跡の女神ミラクルちゃんでございます!」

運命の女神と同じくらい可能性のある4姉妹目の存在を匂わせる幸福の女神ハッピーちゃんであった。

「運命だけでも、これだけ大変なのに、これに奇跡まで加わってもね。」

アリスは女神に振り回される自分の未来が見えているようだ。

「ワッハッハー!」

その場にいた全員が笑顔で笑う。ようやく天界での戦いが終わったのだと、アリスたちは実感する。

「それでは、その悪魔も疲れて寝ているだけなので、アリスが看病してあげなさい。」

幸福の女神ハッピーちゃんは、アリスに幸せになってほしかった。

「分かりました。私が看病するんですから、必ず元気にしてみせます。」

アリスは傲慢のルシファーを連れて家に帰るつもりである。

「みんな! お家に帰るわよ!」

アリスは天界から自宅に戻ろうとする。

「おお!」

マリーアントワネット・萌子と運命の女神ディスティニーちゃんも地上に帰って行く。

「さようならでございます。」

幸福の女神ハッピーちゃんは、いつもおいしいところを持っていくハッピーでございました。

「あれ? 何か忘れているような・・・。まあ、いいか。」

アリスは何か大切なことを忘れているような気がした。でも、思い出さないということは、大した用事ではないのだろうと思った。


ここは天界の別の場所。

「私たちはいったい、いつまでこの調子で待機していればいいのかしら?」

幸せの女神ハッピネスは、悩んでいた。

「ハッピネス様、戦いも終わったみたいですし、我々も、そろそろ魔界に引き上げてよろしいのではないでしょうか?」

憤怒のサタンがハッピネスに助言する。

「私たちもずっと首に剣を当てられていても困るんですけど。」

悪魔に捕まった天使ミカエルたちも、トイレにも行きたいし、もう戦いを終えたかった。

「ハッピーお姉ちゃんに聞いてみよう。ハッピネス・ハッピネス!」

幸せの女神ハッピネスちゃんはお姉ちゃんの幸福の女神ハッピーちゃんに姉妹テレパシーを送ってみた。

「なに? ハッピネス?」

幸福の女神ハッピーちゃんが姉妹テレパシーに出た。

「ハッピーお姉ちゃん、もう戦いは終わったの? 私たち悪魔と天使がもめてるんですけど。」

幸せの女神ハッピネスは姉に現状を伝えた。

「あ、忘れてた。」

幸福の女神ハッピーちゃんは、アリスたちが幸せに人間界に帰って行ったことに感動して、天使と悪魔のことを忘れていた。

「お姉ちゃん!?」

幸せの女神ハッピネスは本気で怒る。

「天使さんたち、戦いは終わったので幸せに暮らしましょうね。」

悪魔たちに囚われている天使たちに言う。

「は~い。」

天使たちは幸福の女神ハッピーちゃんのいうことには絶対服従であった。

「ということで、悪魔のみなさん。私たちも魔界に戻りますよ。」

幸せの女神ハッピネスちゃんは悪魔たちに言う。

「は~い。」

悪魔たちは天使たちを解放し、魔界に帰ろうとする。

「ハッピネスさまは、せっかく不幸から幸せに変わったのに天界に残らないのですか?」

憤怒のサタンが幸せの女神ハッピネスに言う。

「天界にはハッピーお姉ちゃんがいるし、私はあなたと別れてしまうと不幸になってしまいます。」

幸せの女神ハッピネス、推定年齢3才のプチ告白である。

「ハッピネス様。」

憤怒のサタンは自分は悪魔で、ハッピネス様は幸せの女神。叶わない恋かもしれないがうれしかった。

「女神が悪魔に恋をして魔界に居たっていいでしょう。」

自分の心に素直な幸せの女神ハッピネスちゃん。

「悪魔が幸せの女神を好きでもいいですか?」

女神と悪魔の属性を越えた恋があった。

「はい。2人で不幸な魔界に幸せをおすそ分けに行きましょう。」

幸せの女神ハッピネスは笑顔で答える。

「いるでも私が側にいてお守りします。」

憤怒のサタンは幸せの女神ハッピネスに愛を誓うのだった。その様子を悪魔たちと天使たちは見ていた。

「いいな、うらやましい!?」

嫉妬のレヴィアタン。

「お腹空いた。」

暴食のベルゼブブ。

「まさかサタンが俺より恋上手とは!?」

色欲のアスモデウス。

「儲からない・・・。」

強欲のマモン。

「アイン様は何をしているかしら?」

怠惰のベルフェゴール。

「これからは悪魔が魔界を幸せにしていくのか・・・。」

無のベリアル。

「俺たち天使は何しに登場したんだ!?」

天使ミカエル。

「いいじゃない、私たちなんかでも、エンドロールで一言もらえるなんて、幸せな作品よ。」

天使ガブリエル。

「僕の炎の剣と光の剣の出番が!?」

天使ウリエル。

「ラファ子、幸せ大好き。」

天使ラファエル。

「悪魔のみんな、帰りますよ。天使のみんな、さようなら。」

幸せの女神ハッピネスの号令で悪魔たちは天使に手を振って天界から去って行く。

「バイバイ。」

天使たちも戦っていたのがウソのように笑顔で手を振って見送る。こうして天界での激戦は幕を閉じた。


数日後の地上。

「イザベラ・ディスティニー・ナイト!」

「ウジュ・ディスティニー・ナイト!」

アリスが傲慢のルシファーの看病をしている間に、アリスのクラスメートの伊集院イザベラと宇多田ウジュが運命の女神ディスティニーちゃんの手によって、運命の騎士ディスティニーナイト3、4として活躍していた。

「不幸な運命を変えてやる! 全品半額! ディスティニー・ブレイク!」

もちろん運命の騎士ディスティニーナイト2として、姪のマリーアントワネット・萌子も不幸な運命を笑顔溢れる幸せな運命にするために頑張っていた。

「やったわね、マリモちゃん。」

「すごいぞ! アリスとは偉い違いだ! マリモ!」

イザベラとウジュはマリーアントワネット・萌子の活躍を絶賛していた。

「マリモって言うな!? 私の名前はマリーアントワネット・萌子だ!?」

相変わらずマリモと名前を略されるのは嫌だった。

「まったく、これもアリスおばさんのせいよ!」

マリーアントワネット・萌子は運命の騎士ディスティニーナイトをサボっているアリスに起こっていた。


その頃、アリスは自宅にいた。

「あ~ん。」

傲慢のルシファーは意識を回復し、アリスの家で安静に暮らしていた。布団の上でお粥を食べている。

「自分でお粥ぐらい食べれるでしょ?」

アリスにお粥を食べさせろとアピールする悪魔の傲慢のルシファー。

「俺は病み上がりだ。お粥ぐらい食べさせろ。」

傲慢のルシファーは病み上がりでも傲慢だった。

「仕方がないわね。今回だけよ。あ~ん。」

アリスは傲慢のルシファーの口にスプーンでお粥を運んだ。傲慢のルシファーはおいしそうに食べている。

「ハワイでいいわよ。」

唐突にアリスが言う。

「何が?」

傲慢のルシファーは聞き直す。

「結婚式。」

アリスは狙いすましたかのようにしたたかに言う。

「ゴホゴホ!?」

傲慢のルシファーは思わずお粥を喉に詰まらせてむせてしまう。

「ちょっと!? 大丈夫!?」

アリスは苦しそうにむせている傲慢のルシファーの背中をさすって心配する。

「俺を殺す気か!?」

傲慢のルシファーはアリスを攻め立てる。

「私のために死ねるなら本望でしょう! ワッハッハー!」

アリスの悪魔の傲慢さに負けない笑い声が響き渡る。

「相変わらず、高飛車だな! ワッハッハー!」

傲慢のルシファーもアリスの傲慢な所が気に入っている。いつの日か人間と悪魔の傲慢な子供が生まれる日が来るかもしれない。高飛車なアリス・・・いや、運命の騎士ディスティニーナイトはロマンチック恋愛小説の運命になりました。


めでたし、めでたし。


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