第16話 学校も不幸な運命がいっぱい!?

秋葉原アリスは16才の高校生。彼女は運命の女神ディスティニーちゃんと出会い、命を助けてもらう代わりに運命の騎士ディスティニーナイトとなることになった。アリスは今日も不幸な運命と戦うのであった。


第10話。


兄アーサーと弟アインを不幸な運命から救い出した運命の騎士ディスティニーナイトのアリス。やっと学校に行くのだった。学校の名前は秋葉原高校(仮)にしておこう。



ここは秋葉原アリスの家の朝。


「おはよう。」

「おはよう。」

「おはよう、アリスおばさん。」

「もう、おばさんでいいわよ・・・。」


とりあえず朝の挨拶から始まるアリスの1日。少し前までは挨拶すらなかった家庭に朝の挨拶がある。それだけでアリスは幸せだった。これもアリスが運命を変えることができる運命の騎士ディスティニーナイトになったからである。


「アリス、おはようです。」

「おはよう、変な妖精のぬいぐるみ。」

「いや、そこは普通にディスティニーちゃんと言ってほしいです。」

「あはは・・・。」


朝食のテーブルには、兄アーサー、兄妻の奈津子、娘マリーアントワネット・萌子、弟アイン、変な妖精のぬいぐるみがいた。そして、なぜかもう1人、秋葉原家でご飯を食べる居候がいた。


「どうして怠惰のベルフェゴールがいる? おまけに朝食も食べてるし!?」

「アリス様、傲慢のルシファーも呼びましょうか?」

「呼ばなくていい!」

「ベルちゃんは僕の友達だからいいんだ。」


怠惰のベルフェゴールは魔界のアンハッピネス城に戻らずに、秋葉原家に住み着いていた。弟アインの側が居心地が良いらしい。楽しく騒ぎながらも学校があるので忙しく朝食を食べているアリスであった。


「お兄ちゃんの今日の予定は?」

「俺は仕事を探し。なんてったって、妻と娘のためにがんばらなくっちゃ!」

「あなた! ステキ!」

「お父さん! カッコイイ!」

「チッ、引きこもりのダメ人間だったくせに・・・。」

「兄貴は奇跡の逆転サヨナラ満塁ホームランだ・・・。」


例え兄アーサーのことであっても、素直に喜べない妹アリスと弟アインであった。10年の引きこもりのダメ人間が妻と子供を手に入れるとは、我が兄ながら恐ろしい。さらに仕事まで決まったら、兄アーサーに盆と正月が一緒に来たようものだ。


「あなたは仕事をしなくても、私のドーナツ屋の店長の給料だけで暮らしていけるわよ?」

「それはダメだ!? 俺が奈津子さんとマリモを食べさせていくんだ!」

「あなた! ステキ!」

「お父さん! カッコイイ!」

「付き合ってられませんな・・・。私は16才だし。」

「僕もまだ13才・・・。」

「マリモ、10才だよ。」

「マリモ様の勝ち。」

「ワッハッハー!」


家族団らんの楽しい朝の朝食だった。小中高の子供がいる秋葉原家は笑顔の溢れる家族に生まれ変わった。そして、ついにアリスは第10話にして、初めて学校に登校する。


「行ってきます。」

「いってらっしゃい。」


アリスは高校へ。兄アーサーは仕事探しに。弟アインは中学校へ。姪マリーアントワネット・萌子は小学校へ。兄妻の奈津子はドーナツ屋へ。それぞれ人間は家からおでかけをした。


「掃除と洗濯と夕飯の買い出しをするです。」

「部屋に帰ってゲームの続きをやります。」

「え!? 同じ居候同士、家事を手伝ってくれていいんですよ!?」

「私は怠けたいから、ここにいるんです。家事はよろしくお願いします。」

「分かりました・・・こら!? 家事をしなさい!」

「逃げろ~!」


家に残されたのは変な妖精のぬいぐるみの運命の女神ディスティニーちゃんと、男装の魔女で悪魔の怠惰のベルフェゴールだった。運命の女神も人間界では、ただのお手伝いの家政婦メイドに過ぎなかった。



ここはアリスが学校に向かう通学路。


「おはよう、アリス。」

「おはよう、イザベラ。」


アリスを待つていたのは伊集院イザベラだった。2人は東京スカイツリーの展望台から落下し、奇跡的に助かり、病院で検査を受けた。同じ時間を共有した2人は学校に登校する待ち合わせをするぐらい仲良しになった。


「なんだかアリスって言うの・・・慣れないわ。やっぱりアリスちゃんじゃダメかな?」

「ダメよ!? イザベラ! 私たちは友達でしょ!? 私たちの友情のためにも、私のことはアリスって呼んでね! お願いよ! イザベラ!」

「わ、わかったわ。アリス。」

「そうよ! それでいのよ! イザベラ! 私たちは親友よ!」


イザベラはアリスの迫力に押され負けた。アリスの考えはこうである。私の魅力にイザベラが嫉妬して、また不幸な運命に憑りつかれて、高度666メートルの上空から突き落とされては適わないからである。



ここは魔界のアンハッピネス城。


「た、退屈だ。」


傲慢のルシファーがイスに座って、何もすることが無いので机に上半身をもたれさせて溶けていた。その場に同じくイスに座って、のんびりしている嫉妬のレヴィアタンと無のベリアルがいた。


「退屈にも文句を言うなんて、相変わらず傲慢だな。」

「暇だ! レヴィアタン! 何か楽しいことはないか?」

「そうだな、憤怒のサタンと戦ってきたら?」

「やめろ!? あいつと戦ったら、こっちが消される!?」

「・・・。」

「ベリアル、おまえは退屈とか、暇だなとか感じないわけ?」

「無関心、無神経、無表情、俺、現在の人間病だから。」

「おまえに聞いた俺がバカだった。何かないのか!? この退屈を終わらせられるものは!?」

「そういえば。」

「なんだ?」

「おまえのお気に入りのひよっ子が学校という所に行くそうだ。」

「なに!? お気に入りという所は多少引っ掛かりを覚えるが、おもしろそうだ! 行ってやろうじゃないか! 学校とやらに! ワッハッハー!」

「完全に好きな子をいじめに行くいじめっ子だね。」

「そうだね。」


こうしてアリスの学校に興味半分の退屈しのぎに傲慢のルシファーが遊びに行くことになった。もちろん嫉妬のレヴィアタンと無のベリアルもおもしろそうなのでついて行くことになる。



ここはアリスの通う秋葉原高校。


「アリス! 大丈夫!」


学校の自分の教室に着いたアリスとイザベラ。イザベラを無視して、1人の少女がアリスに駆け寄ってくる。簡単に登場人物を比較すると、アリスは可憐なヒロインの高飛車娘。イザベラは内気だが心の中は他人と自分を比べてしまう典型的な日本人の嫉妬娘である。


「・・・ウジュ。本気で心配してる?」

「してるしてる。アリスが東京スカイツリーから飛び降りて死んでくれたら、私が学園のトップアイドルになれる! これ以上、私の人気があがったらどうしましょう!」

「あなたはそういう人よね。」

「アハハハハ!」


宇多田ウジュ。アリスの学校のクラスメートである。ウジュの性格は、自分がトップになりたいが、どうしても才色兼備、文武両道、成績優秀のアリスがいる性で何をやっても1番になれないので、アリスを目の敵にしている。


「あれ? 学校に敵だらけのアリスちゃん。」

「今度は何?」

「いつも1人で気高く孤立してステルスいじめにあっている孤高な存在なのに、どうしてイザベラちゃんと一緒にやって来たの?」

「私とイザベラは友達になったのよ!」

「なんですって!?」

「ね、イザベラ。私たち友達よね。」

「うん、アリス。」

「いいの? イザベラ? アリスと仲良くしてると学校中からいじめられるわよ?」

「ええ!? アリ友やめる!」

「早っ!?」

「全員、席に就け!」

「やばい!? 先生だ!?」


先生がやって来て、生徒は席に就いて静かになる。昔、家から出れば外には7人の敵がいるというのがあった。しかし、アキバで圧倒的な人気を誇るアリスではあるが、学校では全生徒からの妬みを受けていたのだった。良いこともあれば悪いこともあり、アリスの存在は目立ち過ぎるのであった。


「おはようございます。」

「おはようございます。」

「今日は新しい先生をお呼びしました。」

「ザワザワ。新しい先生!?」

「カッコイイ先生だといいわね。」

「ハゲとデブは嫌だね。」


新しい先生がやって来る。生徒たちは期待と不安でザワザワする。自分の好みの先生がやって来てくれることを願っている。そして、ついに新しい先生が教室に招かれる。


「それでは先生、お入りください。」

「はい。」

「キャア! 男前!」

「キャア! カッコイイ!」

「ゲゲッ!? なんであいつが!?」

「先生、自己紹介を。」

「はい、ルシファーです。」

「キャア! ルシファー先生!」

「キャア! キャア! キャア!」

「ルシファー先生は魔界から人間界の教育現場を視察するためにやって来られたました。くれぐれも外交問題になることはしないように。いいですね。」

「はい。」

「ルシファー先生も生徒に手を出してはいけませんよ。」

「分かりました。」

「それでは後はお願いします。」

「はい、お任せください。」


傲慢のルシファーが新しい先生として学校にやって来た。ルシファーのことを男装の魔女、悪魔、不幸な運命の元凶と知らない生徒たちは、ルシファーの見た目のかっこよさだけを見て、キャアキャアと興奮の黄色い声をあげる。


「ルシファー先生! 結婚はしてるんですか?」

「ルシファー先生! 好きな食べ物はなんですか?」

「ルシファー先生! お家に行ってもいいですか?」

「キャー! キャー! キャー!」

(人間共、なんてチャラいんだ。まあ仕方がない。俺のルックスがあれば人間の小娘共を洗脳するなど、朝飯前だ・・・1人を除いて。ひよっ子! おまえだ!)

(傲慢のルシファー!? なんで、あなたが学校にいるのよ!?)


見つめ合うアリスとルシファー。運命の騎士ディスティニーナイトと男装の魔女という立場を越えて、新しい学園ドラマが繰り広げられようとしていた。傲慢のルシファーはクラスメートの不幸な運命を見渡してみた。


(ん? なんだこれは? 全体の半分が無の不幸な運命だと!? こいつらスマホばかりやってるから、歪んだ自分の世界を持ったコミュニケーション障害ばかりじゃないか!?)


イマドキの学校は、休憩時間に友達が集まって、世間話をするという微笑ましい光景はなかった。誰もが自分がいじめられないように、目立たないように1人でスマホをいじったり、スマホで音楽を聞いたりゲームをしたり、嫌な奴のことはメールでやり取り。これが最新の不幸な学校事情であった。


(どいつもこいつも、いじめにビビって傲慢な奴がいないじゃないか!? これは俺のエネルギーの源の危機だ!? 憤怒のサタンは初期設定が高いとして、このままでは無口な無のベリアルにも抜かされてしまう!? どこかに傲慢な奴はいないのか!? 傲慢な奴は!?・・・いた!? 俺の味方だ!? なんてカワイイ奴なんだ!)


傲慢のルシファーは教室中を見回す。どこかに傲慢な奴はいないのか、俺を応援してくれる奴はいないのかと願いながら。そして最前列、窓辺の先頭に恐ろしく傲慢そうなオーラを見つける。


(ゲゲッ!? ひよっ子!? 確かにひよっ子は傲慢だ。ということはひよっ子は俺の不幸な運命を持っているというのか!? 嫌!? ひよっ子は高飛車で生意気だ! 俺の傲慢とはスタイルが違うはずだ!? ああ!? 分からん!?)

(見てる!? なぜ私を見つめるの!? やっぱり学校に乗り込んできたのは、私に嫌がらせをするためなのね!? )


見つめ合うアリスと傲慢のルシファー。運命を変えることができる運命の騎士ディスティニーナイトのアリスと傲慢の不幸な運命を司る悪魔のルシファーの運命は素直に向き合うことができるのだろうか? そして新任教師ルシファーは生徒たちの出席を撮り始める。


「それでは出席をとります。秋葉原アリス・・・秋葉原!? ひよっ子の名字は秋葉原だったのか!?」

「そうよ!? 悪い!? 名前なんだから仕方がないでしょう!?」

「ザワザワ。」

「聞いた!? ルシファー先生、アリスのことを、ひよっ子って呼んだわよ!?」

「あの優等生のアリスが先生に楯突いているわ!?」

「あの2人、知り合いなんじゃないの!?」

「まさか!? 教師と生徒の禁断の恋!?」

「怪しい!?」

「イザベラちゃん、アリスと先生は知り合いなの?」

「知らない。だって、アリ友やめたもん。」


クラスメートがアリスと新人教師のルシファーの2人の関係を怪しがっている。周りの生徒は面白半分に茶化すが、アリスとルシファーは天敵同士だった。改めて傲慢のルシファー先生が点呼をとる。


「秋葉原アリス。」

「はい。」

「声が小さい。」

「え?」

「やり直し、秋葉原アリス。」

「はい!」

「声が多い。やり直し。」

「はあ!?」

「ひよっ子。先生に歯向かう気か?」

「・・・いいえ。」

「ラストチャンスだ。秋葉原アリス。」

「はい。」

「やればできるじゃないか。最初からやれ。」

「な、な、なに!?」

「次、伊集院イザベラ。」

「はい。」

「声が小さい。もう一度、ひよっ子からやり直しだ。」

「はあ!? どうして私からなのよ!?」

「連帯責任だ。」

「ここは軍隊か!?」

「知らないのか? 最近のいじめは教師が率先してやるんだぞ!」

「教育委員会にチクるわよ!?」

「残念、教育委員会は強欲のマモンに支配される、お金が好きな連中のことか? ひよっ子、おまえが死んでも学校でいじめがあったなど認めんぞ!」

「なら警察に行ってやる!」

「あくまでも俺と戦うというのか!?」

「やってやろうじゃない!? 」


キンコーン・カーンコーン! 運命の騎士ディスティニーナイトのアリスと新任教師、傲慢のルシファー先生の戦いが始まろうとした時に、授業の終わりのチャイムが鳴った。


「フッ、チャイムに救われたな。」

「待ちなさい! 逃げるの!?」

「逃げる? 誰がひよっ子を相手に逃げるか!? 俺には、次の授業の準備があるんだ!」

「ええ・・・ええ・・・それでも悪魔かよ・・・。」


挨拶と点呼をしただけで授業を終えたルシファー先生は教室から去って行った。新任教師、傲慢のルシファー先生は、意外に真面目だった。退屈から解放されて、本人は楽しく教師生活を始めた。ただ、アリスは言葉を失い立ち尽くした。   


つづく。

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