第10話 運命、変わりすぎだろ!?
秋葉原アリスは16才の高校生。彼女は運命の女神ディスティニーちゃんと出会い、命を助けてもらう代わりに運命の騎士ディスティニーナイトとなることになった。アリスは今日も不幸な運命と戦うのであった。
第5話。
アリスは運命の騎士ディスティニーナイトとして、兄アーサーの不幸な運命を打ち砕いた。兄アーサーは10年ぶりに堂奈津子と奇跡的に再会する。兄アーサーの運命が10年ぶりに動き出した。
ここはドーナツ屋。
「お母さん!?」
ドーナツ屋の店長になった堂奈津子と兄アーサーは引きこもりのダメ人間だったが、妹アリスが兄の不幸な運命を打ち砕き、兄アーサーと堂奈津子は10年ぶりの奇跡の再会を果たす。そして、そこに堂奈津子をお母さんと呼ぶ10才くらいの女の子が現れた。
「このおっさん誰?」
「マリモ! あなたのお父さんよ!」
「えええ!?」
「うえええ~ん! お父さん!」
兄アーサーは何が起こったのか衝撃の展開過ぎて理解不能だった。堂奈津子は1度も結婚はしていない。でも子供はいる。ということは、未婚の母でシングルマザー。俺は10年間も引きこもり生活だった。俺が父親のはずがない。しかし、女の子は泣きながら、俺の足にしがみついている。親子の感動の対面なのに、当初アーサーは頭の中の整理で必死だった。
「は!? まさか!?」
「そのまさかよ!」
「1回だけだよ!?」
「一撃必中よ!」
兄アーサーには心当たりがあった。10年前に1度だけだが、1度だけだが引きこもりのダメ人間になる前に心当たりがあった。俺はスナイパーだったのか・・・ということは目の前で泣きながら抱きついている女の子は兄アーサーの子供だった。
「お父さんが海外のお仕事から帰って来るまで、お母さんとマリモはがんばったんだよ!」
「海外って・・・。」
「そうよ! お父さんが海外のお仕事から帰って来たのよ! マリモ。」
「マリモちゃんって言うの?」
「違う。正式にはマリーアントワネット・萌子。略してマリモ。」
「アーサーさんが秋葉原アーサーだから、秋葉原・マリーアントワネット・萌子にしたのよ。」
「お父さん!」
「マリモ!」
「うえええ~ん! お父さん!」
「マリモ! よしよし!」
悪いお父さんでごめんよ! どうか許してくれ! とでも謝らなければいけないのだろうが、父と娘の奇跡の初対面に謝罪などいらなかった。その様子を見ていたお母さんの堂奈津子ももらい泣きしていた。
「奈津子さん、俺なんかでも、いいのかい?」
「はい。アーサーさんが、いつか迎えに来てくれると信じてドーナツ屋さんで働き続けたのよ。」
「奈津子さん。」
「おかげで店長になっちゃいました。アハハ。」
「奈津子さん、ありがとう。」
「わ~い! お父さんだ! お父さんだ!」
「マリモ! お父さんだぞ! マリモ!」
「アハハハハー!」
兄アーサーは幸せな家族を手に入れた。堂奈津子という奥さんだけでなく、10才になるマリーアントワネット・萌子という自分の子供まで。妹アリスが「私が不幸をぶっ潰す!」と兄アーサーにこびりついていた不幸な運命を打ち崩したおかげである。兄アーサーは失った10年を取り戻した。
ここはアンハッピネス城の廊下。
「おいおい!? 運命、変わりすぎだろ!?」
色欲のアスモデウスに呼び止められた傲慢のルシファーは、自分がひよっ子とバカにしていたアリスが、運命の騎士ディスティニーナイトとして、兄アーサーの不幸の運命を切り裂いて、兄アーサーの運命が不幸から幸せに変わっていく様子を見ていて、ルシファーは思わず本音が出てしまった。
「どうだ? これがおまえがひよっ子とバカにした、運命の騎士ディスティニーナイトの実力だ。」
「まさか!? あんなひよっ子にこんな力があるとは・・・。」
「ディスティニーナイトを放置しておいていいのか?」
「俺が悪いっていうのか? いや! 俺は悪くない!」
傲慢のルシファーは自分が判断をミスしたと知りながらも、自分の失敗は何が何でも認めない。だって傲慢を司る悪魔だからだ。それでも自分の予想を超える運命の騎士ディスティニーナイトの力に動揺を隠せないルシファーだった。
「お、おもしろい! 戦いはこうでなくっちゃな!」
「相変わらず傲慢だな。」
「あは、あは、アハハハハ!」
ルシファーは男前な発言をしながら自身の失態を笑いで隠し去って行った。残された色欲のアスモデウスは、ルシファー、あなたが要らないなら、こちらで運命の騎士をもらいますよと言わんばかりにニヤッと笑った。
ここはアリスの自宅。
「初めまして! おばさん!」
引きこもりのダメ人間であった兄アーサーが10年ぶりに外に出かけた。そして夜になって自宅に帰ってきた。1人ではなく3人で帰ってきた。兄アーサーと妻堂奈津子と2人の子供マリーアントワネット・萌子を連れて帰ってきた。
「お、おばさん!?」
帰ってきた兄アーサーを迎えに玄関に出迎えに行った妹アリスは鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をしていた。10年の引きこもり生活から抜け出したとはいえ、兄アーサーの運命は不幸から幸福に初日から変わり始めた。
「こちらは俺の奥さんの奈津子さんだ。」
「どうも、奈津子です。よろしく。」
「そして俺が10年前に作っていた娘、マリーアントワネット・萌子。長いので略して、マリモだ。」
「マリーアントワネット・萌子!?」
「これが妹のアリスだ。」
「アリスおばさん、よろしくお願いします。」
「また言った!? おばさん!?」
アリスは16才のカワイイ女子高生。それなのにおばさんと呼ばれる日がやってきた。アリスは呼ばれなれない言葉に抵抗を感じる。兄アーサーの運命が幸せになった分、妹アリスの運命が少しだけ不幸になった。
「入って入って、何もない家だけど。」
「お邪魔します。」
「わ~い! 」
「ちょ、ちょ、ちょっとお兄ちゃん!? どういうこと!?」
「こういうこと。詳しいことは俺にもまだ分からない。」
「え!?」
おばさんと言われることには抵抗があるが、まるで春風のように冷え切っていたアリスの秋葉原家に、お父さんとお母さんが生きていた時のように温かい家族のぬくもりを感じた。
「お兄ちゃん、よかったね。」
「ありがとう。アリス。おまえにも苦労をかけたな。これからは俺ががんばるからな。」
「うん・・・うるうる。」
「アリス、今までありがとう。」
妹アリスは引きこもりのダメ人間から立ち直った兄アーサーを見て、自然に涙が流れてきた。そんな妹アリスを見て、兄アーサーは自分が10年間も引きこもり生活をしていた間に妹に苦労をさせていたと感じるのだった。
アリスは1度自分の部屋に帰って来て扉を閉めた。
「運命、変わりすぎでしょ!?」
アリスは吠えた。傲慢のルシファーに負けないくらい自分の部屋で吠えた。兄アーサーの引きこもり生活が終わらせた。すると兄アーサーは優しくカッコイイお兄ちゃんに戻り、10年ぶりに家から出たかと思うと、妻と子供を連れて帰ってきた。
「なんで私が、おばさんなのよ!?」
「それはアリスがお兄さんの運命を変えたからです。」
「え!? 私!?」
「アリスが運命の騎士ディスティニーナイトとして、お兄さんの不幸な運命を打ち砕き、幸せな運命の時間が進み始めたんだよ。10年分の引きこもり生活で不幸を使い切ったから、きっとお兄さんには、これから幸福な運命の幸せな時間が進みます。」
「へえ~、そうなんだ。」
「幸福と不幸の運命は表裏一体の関係です。」
「ところで、マリモにおばさんと呼べれるのをお姉さんに変えることはできないかしら?」
「今のアリスでは無理ですね。外科手術のように1部の運命だけを変える手術のように運命を変えるには、アリスのディスティニーナイトとして、レベルが低すぎます。」
「ええ~!? これからも私はおばさんと呼べれ続けるのね・・・。」
「はい。」
「ガク・・・。」
アリス16才カワイイ女子高生・・・おばさんと呼ばれることが確定した。おばさんと呼ばれるたびにアリスの目元がピクッと動き、若いのに目元の小じわが増えるのだった。
「待てよ!? お兄ちゃんが引きこもりのダメ人間になったのは不幸な運命の性ということは、弟のアインもゲームばっかりやって腐っているのも、不幸な運命が原因なのでは!?」
アリスはふと気づいた。兄アーサーと同じく、弟アインにも不幸な運命が絡みついているのではないかと。しかし、アリスは兄アーサーの変わり過ぎた運命だけでお腹一杯だった。
「そうかもしれないですね。」
「だったら私がアインの運命を変えなくっちゃ!」
「がんばれ、アリス!」
「でも疲れたから、もう今日はやめておこう。だって私はおばさんだから。」
「都合のいい時だけ、おばさんなんですね。」
「下に行って、マリモと遊ぼう。お姉さんって言わせてみせる! だって私は運命の騎士ディスティニーナイトなのだから!」
アリスは自分の部屋を出て、兄夫婦が楽しそうにしている食堂に行った。この日は帰りに兄夫婦が買ってきたお寿司を食べた。家の中で家族の楽しい会話があることを、アリスは嬉しく思った。
「ハハハハハー!」
「マリモ! おばさんじゃない! アリスお姉ちゃんと言いなさい!」
「やだ! おばさんはおばさんだもん!」
「くー悔しい!?」
「おばさんがマリモのことをマリーアントワネット・萌子とロイヤルネームで呼んでくれるなら、アリスお姉ちゃんと呼んであげてもいいよ。」
「長過ぎる!?」
「ハハハハハー!」
やっぱりアリスはおばさんのままだった。軍配は10才の小学4年生の女の子にあがった。これだけ和やかに楽しくしているのだが、弟アインは自分の部屋から出てくることはなかった。
ここは弟アインシュタインの部屋の中。
「お客さんかな・・・うるさいな。」
カーテンも閉め切り薄暗い部屋でネットゲーをしている中学1年生の弟アイン。ゲームに夢中で、兄アーサーが引きこもりのダメ人間をやめたことを知らない。友達はいない。仲間はネット上の架空のゲームや掲示板の同士だけと思われた。
「少し様子を見てこい。」
「はい、アイン様。」
アインの部屋に誰かがいる。アインは部屋の中で1人ボッチではなかった。アインに命令された黒い影はアインの部屋の扉をすり抜け、楽しそうに過ごしているアリスたちの様子を覗き込んで、そして、アインの部屋に帰って行った。
「どうだった?」
「お兄様が引きこもりのダメ人間をやめたようです。」
「なに!?」
「お兄様は奥様とお子様を連れてきて、結婚されたようです。」
「け、結婚!? ダメ兄貴は10年以上も引きこもり生活を送っていたんだぞ!? どうやって結婚できるんだ!?」
弟アインのゲームをする手が止まる。黒い影の方を振り向くと激昂し、兄アーサーに何が起きたのか理解できなかった。いったい何があったというのだとアインは怒りの感情を生み出してしまう。
「そんなに怒らないでください。アイン様。怒ってると憤怒のサタンまでやって来てしまいます。」
「おまえこそ、地上界で油を売っていていいのか? ベルフェゴール。」
「いいんですよ。私は怠けるのが仕事なんですから。」
「それでも悪魔か!?」
「はい、悪魔です。それに私がいなくなったらアイン様は寂しくなりますよ。」
「そんなことはない。」
「はいはい。」
なんと! 弟アインの部屋にいたのは、不幸の女神アンハッピネスちゃんの配下の8人の男装の魔女の1人、怠惰のベルフェゴールだった。実は堕落していたのは弟アインではなく、悪魔の方だった。
そして就寝時間。
「今日はお星さまが、いつもよりもきれいに見える。」
アリスは自分の部屋に寝るために帰ってきた。今日の1日が楽しかったからかアリスは興奮して眠れそうもなかった。アリスは自分が引きこもりのダメ人間の兄の不幸な運命を打ち砕き、兄アーサーを幸せな運命に導いたことが嬉しかった。
「お兄ちゃん、奈津子さんとマリモと幸せになってくれるといいな。」
「お兄さん、よかったですね。」
「この世の中には不幸な運命に縛られている人もいるけど、誰だって生まれてきたからには幸せな人生を過ごしたいはずだわ。」
「不幸より幸せの方がいいです。」
「私は運命を変えられる! 私がみんなを幸せにしてみせる!」
「そうです。アリスは運命の騎士ディスティニーナイトなんですから。」
「運命の騎士、最高! ディスティニーナイト、最高! ワッハッハー!」
「・・・人選を間違えたかな。」
後悔先に立たず。運命の女神ディスティニーちゃんはヒロインとして、アリスを選んだのは良かったが、少し悪ノリする性格が今後の心配だった。笑い疲れたアリスは温かい布団に入って眠るのだった。
「zzz。ド・・・ド・・・ドーナツ大好き・・・。」
アリスの休日は朝4時起きである。午後21時には眠らなければ睡眠不足でお肌に悪いが今日の就寝時間は日にちが変わってからだった。アリスはアリスの作るドーナツが好きな秋葉原のファンのために、がんばって幸せになれるドーナツを作る。
つづく。
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