第9話 兄の運命を変える!?
秋葉原アリスは16才の高校生。彼女は運命の女神ディスティニーちゃんと出会い、命を助けてもらう代わりに運命の騎士ディスティニーナイトとなることになった。アリスは今日も不幸な運命と戦うのであった。
第4話。
アリスは運命の女神ディスティニーちゃんと一緒に兄アーサーの不幸な運命を見てきた。なぜ兄が引きこもりになったのかを知ったアリスは衝撃を受ける。運命の騎士ディスティニーナイトととして兄の不幸な運命に立ち向かう。
アリスは兄の不幸な運命を見た。
「酷い!? あんまりだわ!? お兄ちゃんは何も悪くないじゃない!?」
「そうです。悪いのはお兄さんのアーサーの周りにいた人間です。」
「お兄ちゃん・・・。」
アリスは兄アーサーの過去を知り頭の中が混乱する。やはり兄アーサーが引きこもりのダメ人間になったのはそれなりの理由があったのだ。それを知ってしまったアリスは兄を心配し、何とか兄アーサーを立ち直らせたいと思う。
「ディスティニーちゃん。」
「はい。」
「お兄ちゃんを立ち直らせる方法はないの?」
「ありますよ。」
「どうすればいいの?」
「お兄さんに絡みついている大手KK出版社の編集長やドーナツ屋の店長の傲慢や憤怒で出来ている不幸な鎖をアリスが断ち切ればいいんです。」
兄アーサーの心には世の中の不条理、悪魔のような人間の負の感情が鎖のように絡まっていた。編集長や店長の怨念ともいえるだろう。この不幸の鎖を断ち切らなければ兄アーサーが引きこもりのダメ人間から抜け出すことはできない。
「よし! 私やるわ! お兄ちゃんを元の優しいお兄ちゃんに戻してみせる!」
アリスは兄アーサーを不幸な運命から解き放つために、ディスティニーソードに幸福な運命を集中させる。ディスティニーソードが光り輝き、剣から幸福が輝き溢れる。そしてアリスはディスティニーソードで不幸な運命を切り裂く。
「ディスティニーブレイク!」
アリスは兄アーサーを引きこもりのダメ人間にしていた不幸な運命を打ち砕いた。アリスは昔の優しくてカッコイイ兄に戻ってほしかった一心で、運命の騎士ディスティニーナイトとして、兄の運命を変える。
「あれ? 俺は何をやっていたんだ?」
「お兄ちゃん。」
兄アーサーの不幸な運命が妹アリスによって打ち砕かれ、兄アーサーの幸せな運命が動き始めた。兄の様子をアリスは心配そうに見つめている。アーサーの幸福の運命が動き始めた。
「そうだ! 俺が悪い訳じゃない! どうして自分が悪いと思い込んでしまったんだ!?」
「お兄ちゃん。」
「そうだ。気晴らしに外でも散歩してこよう。」
兄アーサーは引きこもりのダメ人間を脱出した。家に閉じこもっていた人間が外にお出かけするまでに回復したのである。その様子に安堵したアリスの瞳から自然に涙がこぼれだした。
「良かった。うるうる。」
「アリスがお兄さんの運命を変えたんです。」
「私がお兄ちゃんの運命を変えた。」
「そうです。アリスがディスティニーナイトとして不幸な運命と戦って勝利したです。これでアーサーは幸せになります。」
「よし! これからも不幸の運命と戦って、不幸を幸せに変えてみせる!」
アリスは運命の騎士ディスティニーナイトの本質をやっと理解した。この荒んだ世の中で不幸を幸せに変えることができる。それがディスティニーナイトである。その様子をヒッソリと見ていた者が姿を現す。
「ハッハハハ!」
「なに!?」
「運命の騎士ディスティニーナイトとやらを見に来たのだが、まだまだ生まれたての子供だな。恐れるに足らず。」
「あなたは何者!?」
「傲慢のルシファー。」
「だ、男装の魔女です!?」
「男装の魔女!?」
「お姉ちゃんのアンハッピネスちゃんの配下です。」
現れたのは運命の女神ディスティニーちゃんの双子の姉、不幸の女神アンハッピネスちゃんの配下の男装の魔女のリーダー傲慢のルシファーだった。戸惑うアリスを気にもせず、アリスをバカにしたように笑い転げる。
「厄介なら殺してしまおうと思ったんだが、こんなひよっ子じゃあ、我々の脅威にはならないな。」
「なんですって!? 不幸な塊のくせして!?」
「違うね、不幸をばらまいているんだよ。分かる? ひよこちゃん。」
「ムカつく! あなたの不幸な運命も、私が幸福な運命に変えてあげるわ!」
「どうぞ。ただし、できるものならね。」
「不幸の塊! これでも食らえ! ディスティニー・ブレイク!」
「傲慢のアンハッピネス!」
「キャア!?」
「アリス!?」
アリスの放った必殺技ディスティニー・ブレイクは、ルシファーの必殺技の傲慢のアンハッピネスの前にかき消され、反対にアリスがルシファーの攻撃を受けて吹きとばされる。まるで大人が子供の相手をしているみたいだった。
「ハッハハハ!」
「いたたたた。」
「アリス、大丈夫!?」
「今日は挨拶だけにしておくよ。精々、我々を楽しませてくれ運命の騎士ディスティニーナイトよ。さらばだ! ハッハハハ!」
「傲慢ルシファー、なんて恐ろしい奴。」
ルシファーは笑いながら姿を消していた。アリスは尻もちを着いたままだったが、この世の中に不幸な運命をまき散らし、人間を不幸な運命にする悪魔を見たみたいだった。今の自分では不幸の塊のような傲慢のルシファーには勝てないので、アリスは正直なところ目の前からいなくなってくれてホッとした。
ここはアンハッピネス城。
「おっと、これは皆さんお揃いで。」
地上界からアンハッピネス城に戻って来たルシファー。不幸の女神アンハッピネスに運命の騎士ディスティニーナイトのことを報告しようとお城にやって来たのだが、男装の魔女が7人勢揃いしていた。
「遅いぞ! ルシファー。」
「憤怒のサタン。」
「いいな! 地上に行けて。」
「嫉妬のレヴィアタン。」
「面倒臭い! どうでもいいけど。」
「怠惰のベルフェゴール。」
「この世は金が全てですよ!」
「強欲のマモン。」
「お土産はなに!?」
「暴食のベルゼブブ。」
「いい女はいたかい?」
「色欲のアスモデウス。」
「夢と希望の無い時代、無神経、無関心、無神経。」
「無のベリアル。」
この7人にルシファーを入れて、男装の魔女は全員で8人いる。そのリーダーが傲慢のルシファーである。ルシファーは他の男装の魔女を傲慢に無視して、玉座に座っている不幸の女神アンハッピネスに地上の様子を報告する。
「ただいま戻りました。アンハッピネス様。」
「ご苦労でした。運命の騎士ディスティニーナイトはどうでしたか?」
「ハッハハハ!」
「ルシファー!? アンハッピネス様に対して失礼だぞ!?」
「いいんだよ。だって俺は傲慢なんだから。」
「ルシファー、さっさと報告しろ。」
「運命の騎士ディスティニーナイトは埋めれたばかりのひよっ子でした。簡単に不幸な運命に吹き飛ばされて、我々の脅威などにはなりません。しかも1人しかいないんですよ!? 思わず笑ってしまいました。」
「そうか、それを聞いて安心したぞ。」
ひよっ子とはアリスのことで、傲慢のルシファーからするとアリスなどピヨピヨ鳴いているひよこの雛みたいなものだった。玉座に座っていたアンハッピネスちゃんが立ち上がり、男装の魔女たちに号令をかける。
「いいか! 皆の者! 笑顔は泣き顔に! 健康は不健康に! 金持ちは貧乏に! ありとあらゆる幸せを不幸に変えるのだ! この世を不幸のどん底に落とすのだ!」
「はは! アンハッピネス様の望む世界に!」
ルシファーたち男装の魔女は不幸の女神アンハッピネスに忠誠を誓っているフリをして、不幸な運命を集めて魔王の復活を目論んでいた。男装の魔女たちはアンハッピネスの前から去って行く。
「おい、ルシファー。」
「なんだ? アスモデウス。」
「いいのか? 運命の騎士ディスティニーナイトを放置していて。」
「ひよっ子のことか? 気にしない、気にしない。」
「相変わらず傲慢だな。これを見ろ。」
「なにか見えるのか? こ、これは!?」
傲慢のルシファーは色欲のアスモデウスに呼び止められた。そしてアスモデウスの能力で地上界の様子が手の平の上に映し出されている。それを見て驚くルシファーだった。いったい何を見たのだろうか。
ここは地上界。
「10年ぶりの外の世界か・・・町並みが変わりまくっているな。」
兄アーサーは10年ぶりに自宅の外に散歩に出た。これも妹アリスが運命の騎士ディスティニーナイトとして、兄の不幸な運命を壊したおかげである。今のアーサーには外の理不尽な社会を怖いと思う気持ちはなかった。
「そうだ。生きたい場所もないし、会社にでも行ってみるか。」
兄アーサーは過去の記憶をたどるように、引きこもりのダメ人間になる前に新入社員として働いていた大手KK出版社を目指して歩いていく。道中、不幸な運命から解き放たれたアーサーは不安など何もなかった。
「やっぱりあったか、倒産していれば良かったのに。」
大手KK出版社は今も健在だった。大手ということで日本国の出版事業も受注して、税金から利益を出し、他の大手企業との談合、公務員の天下りを受け入れるなど体質は変わらず、ブラック企業のままだった。ちなみに当時の編集長はパワハラで他の社員に訴えられ会社をクビになっていた。
「もう、俺には関係ないか・・・。」
兄アーサーは会社の高層ビルを眺めるが、もう自分とは関係のなくなった大手KK出版社に関心はなかった。アーサーは会社に背中を向けて、新たな人生を踏み出そうと思った。
「あ!? ドーナツ屋もまだあるのか。久しぶりにアリスとアインにドーナツでも買って帰るか。」
兄アーサーには、いろいろな思い出のあるドーナツ屋である。恋もし失恋もした、10年経った今では笑って気軽に立ち寄れる、何の縁もないドーナツ屋になってしまった。
「いらっしゃいませ。」
「ドーナツを3つ下さい。」
「ドーナツの種類は何にしますか?」
「たくさん種類があるんですよね。」
「はい。ありますよ。」
「ハッハハハ。10年ぶりにここに来たので。」
「え?」
「はい?」
ドーナツ屋の店員とお客さんの普通の会話をしていたはずだったのだが、ふとした会話にお互いの顔を見合わせた。お客さんは10年間も引きこもりのダメ人間をしていたので10年目とほとんど顔は変わっていなかった。しかしドーナツ屋の店員さんは10年の間、苦労をしていたのだろう、顔つきは10年の歳月を感じさせた。
「アーサーさん?」
「もしかして奈津子さん?」
「アーサーさん!? アーサーさんなのね!?」
兄アーサーとドーナツ屋のお姉さんの堂奈津子は10年ぶりに奇跡のの再会を果たした。これも2人の愛を引き裂いた不幸な運命を、アリスがディスティニーナイトとして打ち砕いたからである。
「そうだよ。お久しぶり、お元気でしたか?」
「はい。アーサーさんは?」
「俺も・・・元気でなんとかやってるよ。」
「私はドーナツ屋で正社員になって、今はこの店の店長をやっているの。」
「へえ、すごいね。結婚もして、仕事もしてるんだ。」
「え!? 私、結婚してませんけど。」
「え!? 前の店長さんが奈津子さんは結婚が決まって辞めたって言ってたよ?」
「ええ!? 私は1度も結婚なんてしてないわよ!」
「なんだって!?」
「前の店長さんは会社のお金を使い込んで警察に捕まったのよ! ニュースにもなってたじゃない!? 知らなかったの!?」
「そ、そんな・・・実は奈津子さんが結婚して辞めたと聞いて、ショックで10年間、引きこもりのダメ人間をしていたんだ。」
「え?」
堂奈津子は結婚なんてしていなかった。それがとどめの1撃で引きこもり生活に突入した兄アーサーは嘘を吐かずに正直に自分が10年間もの間、引きこもりのダメ人間だった話した。全て自分の独りよがりだったのだ。アーサーは自分が情けなくて空を仰いだ。
「ああ~今日は来てよかったな。奈津子さんが元気そうで。俺もこれから、がんばるよ。」
「アーサーさん・・・。」
兄アーサーがさり気なく堂奈津子に別れを告げた。やはり運命は10年間も引きこもりのダメ人間をしていた男を許さない。アーサーがドーナツ屋を去ろうとした時だった。1人の10才ぐらいの女の子がやって来た。
「お母さん、お弁当を持ってきたよ。」
「え?」
明るく元気な女の子は、堂奈津子のことをお母さんと呼んだ。それを見て驚く兄アーサー。奈津子は結婚はしていないと言っていたのに、女の子のお母さんだった。果たして結末は?
つづく。
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