嘘つきは登りの始まり
「オーイ!」
耳元で叫ぶ...うるさいなぁ
「聞いてる?連打?」
「聞いてる聞いてる、3試合目だろ?」
ふぅ...
風が心地よい、木の下でよこになる。
「なぁ」
「ん?」
「俺に教えてくれたもの、お前と戦った時間、全部、叩き込んでくる。」
「緑!お前のぶんまでな」
そして必ずあいつに、あいつに勝って緑の仇を討つ。
「あぁ、頼んだよ」
緑はどこか、悔しい目をしていた。
この大会は、一度に10試合ほど行われる、能力を持っているものが集い、対決し、上位3名が県大会へ行ける。
だが、そう簡単じゃない...
「おい、来たぞ!!」
カメラのシャッター音が、響き渡る。
「誰だよあれ」
モブは目を大きく開けて言った。
早く帰れ。
「亜ん罪泰成(あんざいやすなり)、前大会では、関東突破した強者だぜ...」
上には、上がいる。
だが財閥の息子は進化するよなぁ。
俺は今年で一年、初の大会だが、同じ地区に亜ん罪がいるのは、心が躍るな。
「てか、どーに勝つの?」
やはり気になるか、モブの分際で。
「ほら子には通じた、カードすり替えもここじゃ通じないんじゃ...」
「黙れ!モブ!」
1試合目が始まった、それと同時に椅子から立ち上がった。
「お前の知らない俺の能力、見してやる。」
「イカサマだろ?」
「違うな」
すぐに言葉を跳ね返す。
「俺のイカれたサマーだぜ。」
今はギリギリ夏じゃない。
「やったっ!勝ちぃー」
片桐は飛び上がっていた。
「相手が雑魚だったんだろ」
俺の時間だな
「いや、違うしー」
逃げるようにロビーを離れ、会場の会場に入る。
Bの4、このテーブルか...
「どーも」
噛身早記連打が口を開いた。
腕を組み座っている。
前回は、県に入ったが負けたらしい。
「どーも」
返すのが礼儀だな...
「3試合目、間も無く開始でーす!」
始まるぜ、ダセェ服の若い男が、二つのトランプをシャッフルし、52枚へ、そして交互に配っていく。
「初めて見る顔だから、実力は知らない。」
急に喋り出した。
「だが、能力ないな、お前。」
余裕そうだ、その余裕は、どっから出てくんだよ。目の前の俺にたいして。
「では、始めます。」
最初のじゃんけんが始まる。
「こっから始まってるぜ。俺の、天国への道(ヘヴンロード)はよぉ。」
俺の握りこぶしは、紙切れごときで砕け散った。
「先行」
そう言った噛身早記は手札から一枚のカードを引き抜いた。
「1」
「2」
「ダウト」
は?こんな序盤じゃほぼダウトは...
スペードの2、黙って噛身早記は、2枚を手札に戻した。
なんだこいつ。
「3」
「4」
「ダウト」
そしてめくり、4のカードと確認した彼はまた黙り、手札に2枚を加える。
なんだ、な、なんなんだよ。
「ダウト」
なぜだ、
「ダウト」
確実にダウトじゃないはずなのに。
「ダウト」
彼はいったい...
そしてついに、噛身早記は手札があんだろーが40枚へ、きっと意味がある行動なはずだ、だが様子見だな。
「もう登りは終わりかな...」
なんだ、こいつから漂う、この邪悪な感じは...ついに始まるのか、攻撃が!
「7、8枚」
俺は耳を疑った。
なに、8枚だと...確かにトランプを2個使用している。だが、そんな奇跡が。ダウトと放つべきか...
「どうした?固まっちまったな!」
あ、ありえねぇんだろーがぁ!んなもんっ!!
「ダウトっ!!」
「ふぅー」
噛身早記は1枚1枚手に取り、めくりだした。
8、8、8、8、8、8、8、8...
は!
そうか、登れば、登るほど降るスピードは、とても早い。
それが、それが、こいつの能力。
「俺は強いぜ。能力がねーんなら、どうせセコい手法で戦ってくるんだろーな。」
「負ける気でこいよ!!じゃないと気がラクになんねーぜぇー!」
「負けるか...味わってみたいもんだぜ。」
よくも、コケにしてくれたな...
勝つのは、勝つのは、この俺だ!
「8」
「9、3枚」
「10」
「11を4枚」
そのまま奴は降下していく。
残り、宇素月嘘男、20枚
噛身早記連打、12枚
捨て札が、山のようだ。
俺は16、噛身早記は、8枚。
どっちかがしくったら完璧にアウト。
「4、8枚」
一歩ずつだったはずの噛身早記が、ジャンプしてきた。
「なんのひねりもない素人だったな。」
「ダウト」
「は?まーしょうがないよな。言いたくなるよなぁ。ダウトってさ」
「ほら、みてみろよ。」
「見た方がいいのは、お前だぜ。」
「は?」
噛身早記はあわてて、8枚のカードをめくった。
「は?全部4じゃないかよ」
「ほら、俺のあがりだよ」
「違うな、1枚は俺が3の時に出したもんだぜ。」
「いや、意味が...」
「カメラさん!後ろから撮ってたからわかるよね!その映像見してよー」
噛身早記連打の試合だから、カメラが用意されていた。
そして俺が3の時に4を出す俺が映されていた。
「いや、待て、俺はしっかりだした!」
「あれ、俺は、セコい手法で勝っただけだぜ。」
ビデオを見るために噛身早記が座っている後ろにいる。
そこから、耳元でこう言った。
「俺のイカサマ、わかんなかった?」
「カメラあってよかった。」
噛身早記は降下していき、そのまま降下し続けた。
「くっそがぁー」
俺は立ち去った。
「えーあの噛身早記負けたの?」
「無能にらしいぜ」
「マジか」
「どーせ、カードすり替えしか使わないクズだろ。」
「いや、秘めてるのかもしれないぞ。」
ど真ん中に座る彼はそう言った。
バカでかい部屋にたった8人が座り話し合う。
「誰が来るのかな...楽しみだ。」
「俺だろ」
「僕だ!」
「私」
「あっしだよ」
「私だから」
「僕ちんだ」
「オーレダァー」
偉そうな笑い声。
偉そうな態度。
偉そうな顔面。
その男は全てが嘘にまみれてる。
「次に戦う奴誰だか知ってんの?」
「う、うん」
「飛鳥ぁ!もっと自信持ちなよ!あんたは強いよ!」
泣きそうになっている。
「違う!たまたま勝っちゃっただけ...それだけ...」
私は強くもなんともない。
なのに無理矢理こんな大会出されて...
「もうヤダよおー」
「おい泣くなよー」
そよ風が吹いている。太陽がきらめいている。 勝つのは誰だ。
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