をとうと
杉三の家。
朝食を食べている杉三と美千恵。杉三は食欲もなく、ぼんやりしている。
美千恵「どうしたの?ぼけっとして、リンゴくらい食べたら?」
杉三「歯が痛い。」
美千恵「あら、虫歯にでもなったかな。虫歯は歯医者さんに治してもらわなきゃ。でも、この近所には歯医者さんって一軒しかないのよね。しかも、私、大事な会議で八時くらいまでかかるから、閉まっちゃうわ。わかった、じゃあ、蘭さんに頼むから。」
と、電話をダイヤルして、何回かやり取りしたあと、
美千恵「どうもすみませんね。じゃあ、お願いします。」
と、電話を切る。
美千恵「蘭さん、九時に迎えに来るから、いってきなさいね。」
杉三「わかったよ。」
美千恵「これ、歯医者さんの診察券と保険証。」
と、赤い巾着袋を渡す。
美千恵「くれぐれも、なくさないでね。」
杉三「わかったよ。」
美千恵「じゃあ、仕事にいってくるから。」
杉三「いってらっしゃい。」
九時になり、蘭が迎えにやってくる。幸い歯医者は車いすでも、あまり気にしないでいける距離である。
杉三「ちょっとこわいな。」
蘭「たしかに、あのキーンという音はいやだよね。僕も苦手だよ。でも、ここの先生はとても優しくて、いい先生だと聞いているから、大丈夫だと思う。」
二人は自動ドアから、建物の中に入っていく。
受付「ご予約の方ですか?」
蘭「いや、先ほど電話したのですが、影山です。」
受付「はいはい、承っております。しばらくお掛けになってお待ちください。」
蘭「僕らはイスなんていらないんですけどね。」
と、診察室のドアが開く。
看護師「偉かったねえ、正輝君。一回も泣かなかったもんねえ。」
五歳くらいの少年がにこにこして出てくる。となりには、少し太り気味の中年の女性で、母親であるのは、まちがいないが、少し年が多い気がする。
正輝「うん、僕はなかないよ、お兄ちゃんなるんだから。」
看護師「そうかあ、いいお兄ちゃんになってね。次の方、影山杉三さんどうぞ。」
蘭「ほら、いってきな。」
杉三「うん。」
と、診察室に入っていく。
正輝「おじさん、ここの先生は、とても上手にやってくれるから、大丈夫だよ。」
杉三「そうか、ありがとう。」
母親「あんまり、人に口を挟むもんじゃありません。失礼になるわよ。」
杉三「僕はバカだから大丈夫。お兄ちゃんになるんだもんね。」
診察室のドアが閉まる。
蘭「正輝君だっけ?君は強いな。たしかに、お兄ちゃんだ。楽しみだね。」
正輝「今の人のお兄ちゃん?」
蘭「ちがうよ。」
正輝「おじさん、お兄ちゃんみたいなんだもん。」
母親「すみません、この子、他人の会話にすぐ口を出す悪癖がありまして。」
蘭「子供らしくて良いじゃないですか。もうすぐ妹か弟が生まれるみたいですね?」
母親「ええ、五年間待ち望んだ末です。」
蘭「羨ましい限りです。うちみたいに、いつまでたってもダメだったという悲しみを解消してくれるわけですからね。」
母親「ええ、私も姑にかなりお咎めされましたけど。」
蘭「取り敢えず、喜ばしいことだから、いまは思いっきり喜べばいいんですよ。」
診察室のドアが開く。
蘭「終わったの?」
杉三「うん。虫歯になったのは、一本だけだから、大丈夫だって。」
蘭「一本だけか。」
看護師「杉三さん、ほんとに過敏なんですね。普通の人であれば、なかなか気がつかないほど軽いですよ。
」
受付「いまから、支払しますけど。」
蘭「あ、僕がやります。杉ちゃん、計算が全然できないから。」
母親「計算ができないのですか?」
蘭「ええ、自閉症なんですよ。」
母親「自閉症?ですか?」
蘭「はい。さっきみたいに、痛みに過敏だったり、銭勘定もできないし、漢字の読み書きもできないんですよ。」
母親「そ、そうなんですか!それでは、お兄さんもたいへんでしょう?」
杉三「僕は蘭の兄弟じゃないよ。友達だからね。」
母親「まあ、まあ、まあ、、、。これは驚きです。本当に、大変ですね。私はテレビ番組で見たことしかないですが、、、。」
蘭「あ、お代はいくらですか?」
受付「1000円です。障害者割引がありますので。」
蘭「はいどうぞ。」
と、1000円支払う。
蘭「次はいつですか?」
受付「もう、大丈夫ですよ。」
蘭「わかりました。じゃあ杉ちゃん、帰ろう。」
正輝「また会いに来てね!」
杉三「ご縁があったらね。」
手の甲を向けてバイバイし、建物を二人で出ていく。
蘭の家。
アリス「お帰り。ご飯食べよ。」
蘭「作ってくれたの?」
アリス「うん、フォーを買ってきたから。」
蘭「じゃあそれをいただこう。」
三人、テーブルに座る。
蘭「杉ちゃん、保険証受け取った?」
杉三「そんな覚えないよ。」
アリス「きっと、看護師が出し忘れたのね。変な歯医者だわ、ずさんよ。」
杉三「僕が悪いの?」
蘭「ちがうよ。」
杉三「ど、どうしよう!わあ、わあああ!」
と、テーブルをバシバシたたく。
蘭「治まるまで待とう。杉ちゃん、本当に大丈夫だからね。」
と、そこへインターフォンが鳴る。
アリス「あ、あたしが出るわ。」
と、玄関に向かう。
アリス「はいはい、なんでしょう。」
ドアを開けると、一人の太り気味の女性がいた。普通の人からみたら、単なる太り気味のなのかも知れないが、また違う事情があるんだな、と、アリスは何となく感じ取った。
アリス「あなた何者ですか?」
女性「あの、杉三さんに、これを渡してください。看護師さんが、出し忘れたそうです。とても忙しそうでしたので、私が代理で届けに来ました。」
手には、杉三の診察券と保険証が入った巾着。
アリス「あ、あ、そういうことでしたのね。ちょっと、本人に聞いてきます。ここで待ってて。」
と、食堂に走っていく。
アリス「ねえ、蘭、太ったおばさまが、杉ちゃんの保険証を持ってきてくれたんだけど。」
蘭「ああ、正輝君のお母さんか。悪い人じゃないから、受け取って。杉ちゃん、保険証が戻ってきたよ。もうなかないでいいよ。」
杉三「本当?」
蘭「そう。こうなるんだから、なんとかなるさで片付ければいいの。まあ、それができないのが杉ちゃんなんだけどね。」
アリス「ああ、歯医者さんでお会いした人だったんだ。行きなり来たからなんだと思ったわ。」
と、玄関に戻り、
アリス「すみません、お待たせしちゃいまして。ちょっとバタバタしてたんです。持ってきていただいてありがとう。」
と、巾着を受けとるが、その女性の不安そうな表情をみて、
アリス「よかったら、お茶でもしていきませんか?」
女性「私、コーヒーとか紅茶は、飲めないのですが。」
アリス「だったら、緑茶にしますから、うちでちょっと気晴らしくらいしてください。」
女性「わかりました。お邪魔します。」
二人、食堂にいく。
食堂
女性「素敵なお宅ですね。和風の物がいっぱいあって。皆さん、お着物きていらっしゃるし。」
蘭「大したことないですよ。それよりなんで僕の家がわかったんですか?」
女性「ええ、保険証に書いてあった住所を、カーナビに打ち込んで調べたんです。」
蘭「ああ、なるほど。そういう使い方もありますね。」
杉三「僕なんて、テレビすら持ってないよ。」
女性「あの、、、つかぬことをお聞きしますけど、お二人はご夫婦ですか?」
蘭「はい、そうですが。」
女性「子供を持ちたいとか思いますか?」
蘭「いや、もうこの歳では、無理でしょう。」
女性「おいくつですか?お二人は。」
蘭「もう、四十越えました。でも、いったい何を聞きたいんです?僕みたいに歩けない人が、子供をもっても、どうかとでも?」
女性「いいえ違います。悩んでいることがありまして。」
蘭「よかったら、ききますよ。他言する相手もいないし。」
女性「はい、、、。私は、杉田初音と申します。現在、第二子を妊娠中で、歳は39なんですが。」
アリス「あら、おめでたいことじゃないですか。」
初音「だけど、困ったことがあるのです。先日、産婦人科で羊水検査を受けてきました。ところが、生まれる子は、男の子で、奇形があるといわれたのです。どんな感じなのかは追々検査していくそうですが、私は中絶しようと思っているんですよ。」
杉三「ぜったいだめ!そんなの、人殺しと一緒だ!正輝君だってかわいそうじゃないか!」
初音「だから、正輝のためでもあるんです。重い障害がある子供が生まれたら、そっちに気をとられて、あの子の学力の遅れが気になりますし。」
蘭「学力なんかより、生まれた弟から学ぶことのほうが、もっと役にたつと思いますよ。いい大学へいくとかしかわからない、今の子供には、素晴らしい薬だと思います。ましてや、教師だってそれを処方箋にはしてくれません。僕の意見としては生むべきだと思います。」
初音「本人の前で失礼ですが、私も、障害のある人に接したこともないし、育て上げる自信もないです。正輝も、思春期にはいったら、何か問題を起こすかも知れないし。そうしたら、母親の私の責任ですし。」
蘭「責任を取り違えていませんか?それは、責任にはなりませんよ。障害のない子供を人間の力で作ることはできませんよ。それよりも、そうなったらどうするかに視点を持っていってください。」
杉三「ダイヤの檻の被害者か、親も。いくら進路指導を受けても、こういう進路指導はしてくれないし、外部の侵入を拒み続ける。まさしくダイヤだ。」
蘭「ご主人は何か言わないんですか?それにたいして。」
初音「妊娠がわかる前に亡くなりました。過労というものですね。倒れた時はもう手遅れでした。私も葬儀やなんやらで生理がないのも気がつかず、見つかった時はもう、四ヶ月すぎていました。」
アリス「へえ、つわりなんかは?」
初音「あったかも知れませんが、主人が亡くなったショックや、葬儀に忙しすぎたのが原因だと思っていました。」
アリス「はあ、全く!わがまますぎるわ!やったことは、受け入れなきゃだめよ!」
杉三「それに、正輝君だってかわいそうだよ。あんなに、お兄ちゃんになると、楽しみにしているのに。おろしたりしたら、ほんとにがっかりするよ!」
アリス「一番の被害者はその正輝君じゃないかしら。いずれにしても、あたしは、おろすなんて認めない。杉ちゃんのほうが、正しいと思う。一緒にいるのは命だから。それを簡単に消しちゃうってのが、信じられないわね。」
蘭「二人とも、声が大きいよ。初音さん、もう一度考え直してくれませんか?僕たちもそうですが、お兄ちゃんになる、正輝君のためにもです。」
初音「みなさんは、綺麗事をおっしゃいますけど、正輝を五歳まで育てるのだって、本当に辛かったんですよ。それも、考えてください。」
杉三「ずるい!ぜったいだめ!逃げないでください!」
蘭「杉ちゃん、少し声を落として。」
杉三「人殺し!人殺し!ぜったいだめ!」
蘭「杉ちゃん、」
アリス「今回は杉ちゃんの勝ちよ!」
初音「そうですか、わかりました!」
と、泣きながら部屋を出てしまう。
アリス「あーあ、やけくそだわ。まったく、ああいう人がいるから、虐待とか増えるのよね。赤ちゃんが産まれるっていったら、あたしの国では、家族全員で大喜びして、みんなでパーティーとかしていたんだけどなあ。」
蘭「ヨーロッパと日本は、全然違うよ。ヨーロッパでも、少子化は酷いらしいが、しっかりと、対策をやってくれているもんね。」
杉三「嬉しくないっていうのがおかしかった。」
蘭「確かに。なんだか、おかしな時代になったなあ。日本は。」
と、大きなため息をつく。
夜の道。
とぼとぼと歩く初音。
初音「人殺し、か。そんなはずじゃないんだけどな。」
突然、腹に違和感を覚える。胎動、というものだった。と、同時に強い罪の意識が彼女を襲った。
初音「私、、、。」
涙が溢れる。
初音「別の人間が宿ったんだ。やっぱり人殺しになるんだわ。でも、人殺しをしないと、私は、楽になれない。」
ごん、と不意に鈍い音。気がつくと、電柱にぶつかっていた。
声「あら、大丈夫ですか?」
初音「え、あ、あの、、、。」
そこにいたのは美千恵だった。
美千恵「おでこ、こぶができてますよ。」
急いで触ってみると、確かに小さなこぶができていた。
初音「すみません、私の不注意で。」
美千恵「うちに来ませんか?貼り薬さしあげますよ。」
初音「あの、あなたは、」
美千恵「はい、影山美千恵ともうします。」
初音「影山?もしかしたら、あの、杉三さんの、」
美千恵「はい、母です。」
初音「もう、どうして、、、。」
と、泣きそうになる。
美千恵「ああ、うちの杉三と会ったのね。大丈夫、このくらいの時間では、ひたすらに和裁をしてますよ。」
初音「えっ、彼が和裁をするんですか?みてみたい。」
美千恵「じゃあ、いらっしゃいよ。」
初音「そんな意味では、、、まあ、行きます。」
二人、方向を変えて、道路を歩いていく。
杉三の家。
美千恵は、玄関のドアを開ける。
美千恵「ただいまあ。」
声「おかえりなさい。」
初音「お邪魔します、、、。」
美千恵「気にしなくていいわよ。あがんなさい。」
初音「はい、、、。」
と、美千恵に続いて居間にはいる。杉三が一生懸命大島の着物を縫っている。
美千恵「座って。いま、珈琲入れるから。」
初音「あ、私、珈琲は、」
美千恵「ああ、そういうことね。じゃあ、他にするから、そこへ座って。」
初音「はい、」
と、いすに座る。
美千恵「はいどうぞ。昆布茶よ。赤ちゃんにも、という意味をこめて。」
初音「どうしてわかったんですか?」
美千恵「まあ、一回だけだけど、経験したからね。飲みなさいよ、ほら。」
初音は、一心不乱に着物を縫っている杉三をみる。
初音「杉三さんって、いつもああなんですか?」
美千恵「そうよ。こういう子は、夜更かしなのよね。あんまり寝れなくても、平気なのよ。」
初音「杉三さんがこどものころ、酷く振り回されたりしましたか?」
美千恵「まあ、多少はあったわよ。でも、ああいう能力があるってわかったら、もう後は本人に任せてる。その方が、私もあの子もずっと楽。私は、その間は自分のことすればいいし、あの子はあの子で大島に触ってれば、おちついてくれるから。」
初音「でも、他に兄弟がいたとしたら?」
美千恵「ああ、それはわからないわ、経験がないから。」
初音「だったら、私は、どうしたらいいんでしょう?」
美千恵「どうしたらって何を?」
初音「この子が生まれたら、です。実は私、高齢のため、いま身籠っている子は、確実に障害をもっていると言われてしまいました。でも、私はすでに五歳の息子が一人おります。もし、障害のある子供が生まれてしまったら、上の子にてがかけられなくなって、上の子の学力が遅れてしまう可能性がでてしまうのです。
あの子は、名門の学校へ行かせようと思ってるんです。幼稚園の先生にも、勧められましたし、亡くなった夫の両親が、学費を出してくれるという約束もしているのに、障害のある子供が生まれたら、すべてぶち壊しになってしまう。そうなったら私は、どうやって生きていけばいいか、、、。」
美千恵「ちょっと待って。それは本当に息子さんのためになるのかしら。名門の学校にいって、何になるの?あなたが、満足したいだけじゃないの?」
初音「息子には、辛い人生は送らせたくありません。」
美千恵「それはないわ。辛いことってのは、必ずあるわよ。どうしても変えられないことだってある。幸せまでもう少しと思っていたら、いままで以上に悪いことが起こったというのは、よくあることよ。もうそうなるって、はっきりとわかっているんだったら、内定された幸せは、取り消さなきゃいけないと考える覚悟も必要なんじゃないかしら。」
初音「そうなんですけど、それは、私のためじゃありません。息子にそうなってほしくないんです。」
美千恵「それは、曲がった愛情よ。困難を避けたいなんて、絶対無理なんだから。あのね、親子ってね、一緒に成長していくもんなのよ。親が完璧で、子供を引っ張っていけなきゃいけないと思ってるみたいだけど、そんなことは絶対無理。親が成長すれば子供だって成長する。それを、お互いによかったねと顔を見合わせて笑える瞬間っていうのが一番幸せなんだから。」
初音「でも、杉三さん育てるのに、後悔したりしませんでしたか?もし、彼が回りに迷惑をかけちゃったとかしたら、」
美千恵「まあ、そういうことも確かにあるわよ。そういうときは、謝るしかできないわ。そして、向こうの方の判断に任せる。すべての人が許してくれる訳じゃないけど、そうするしかできないときも、確かにあるわよ。だから、捨てる技術も、必要ね。」
初音「捨てるなんて、、、そんなこと、」
美千恵「もし、よかったら実験してみましょうか。うちの杉三で。」
初音「杉三さんで実験?どういうことですか?」
美千恵「実はね、昨日うちに広告が入ってたんだけど、沼津に呉服屋がオープンしたのよ。塩川呉服店よ。近いうちに杉三を連れていってやろうと思ってたんだけど、私、明日は仕事なのよ。オープンセールのときなら、大島が安く買えるからときいたんだけど、セールは明日で、最終日なのよね。だから、息子さんに、道案内をさせてみる実験をしてみない?」
初音「一人、でいかせるんですか!そんな、絶対無理です!」
美千恵「大丈夫。このチラシをご覧なさい。沼津駅北口より五分。ロータリーをでたら、真っ直ぐいくだけよ。それに、セールの旗なんかもあるだろうから、すぐわかるわ。」
初音「で、でも、お値段が。」
美千恵「ああ、大丈夫。リサイクルの着物であれば、数百円でいけるわよ。大島って高いけど、オープンしたばかりだから、せいぜい、五千円程度かな。」
初音「そんな、高級な着物ばかり着てるんですか?」
美千恵「ええ。子供のころから、洋服は一枚も着たことがないのよ。あの子が小さいときは、無理矢理洋服を着せようとすると、パニックになって大騒ぎ。すぐビリビリに破いてしまったわ。」
初音「直そうとは、しなかったんですか?」
美千恵「そんなことしたって、むだよ。大島きて、落ち着いてくれるなら、毎日ビリビリに破られるより、余程、経済的だわ。」
初音「大変ですね、、、。」
美千恵「まあね。でも、私は母親だから。明日、九時に息子さんを連れて、富士駅に来てちょうだい。」
初音「え、、、。」
美千恵「きっとよ。」
初音「は、は、はい。」
美千恵「杉三よかったね。明日は、小さな男の子が迎えに来てくれるからね。また、大島買ってこれるわよ。」
返事はなかった。
美千恵「大丈夫、返事はなくても、通じてるから。」
初音は、困った顔をした。
美千恵「よろしくね。」
と、初音の肩を叩く。
翌日、富士駅。
杉三「ほんとに来てくれるのかな。」
美千恵「ま、気楽に待つことね。」
杉三「あ、車の音がする。」
一台の軽自動車が二人の前にやってきた。しかし、停車はしたものの、降りてこない。
杉三「正輝くんの声がするよ。」
美千恵「あ、そういうことね。」
と、車のドアを叩く。
美千恵「おはようございます。」
杉三「よろしくです。」
正輝「ほら、杉ちゃんいるんだから、ちゃんと行ってくるよ。ママは心配しなくていいよ。」
初音「私がいうのは、そんなことじゃなくて、」
美千恵「いらしてくれてありがとう。杉三をよろしくです。」
正輝「いってきます!杉ちゃん、エレベーターにいこう。」
と、無理矢理車のドアをあけ、降りてしまい、杉三の車いすを押して、エレベーターに乗ってしまう。
初音「影山さん、あなた何を、、、。」
美千恵「大丈夫。沼津なんてすぐなんだから、いざとなれば、駆けつけることもできるわ。」
杉三と正輝は駅に入る。
正輝「まず、切符を買わないとね。」
杉三「僕は、何が書いてあるのかわからない。」
正輝「沼津は、340円だ。でも、僕、届かないや、ちょっと待ってて。」
正輝は、窓口に入っていく。
正輝「駅員さん、沼津まで、子供一人、大人一人ください、往復で。」
駅員「君はどうしたの?うちから逃げたの?」
正輝「お手伝い。沼津の呉服屋さんまで。」
駅員「へえ、着物に興味持つなんて不思議だね。」
正輝「そんなこと言わないで、早く切符を頂戴。この一万円でお釣り頂戴。」
駅員「はい、これ、切符ね。気を付けていってきな。」
と、切符を四枚渡す。
正輝は、切符を受け取って、窓口を出ていき、杉三に切符を手渡す。そして、車いすを押しながら、改札口を通過していく。
正輝「沼津熱海方面だから、電車はここだ。」
駅員「どちらまでいくのかな。」
正輝「沼津まで。」
駅員「はいよ。」
杉三「よろしくお願いします。」
全員、エレベーターで、ホームにいく。
正輝「次の電車は?」
駅員「もうすぐきますよ。」
アナウンス「間もなく、四番線に普通列車沼津行きが、三両編成で到着いたします。」
杉三たちは、駅員の介助で電車にのる。電車は、通勤ラッシュが終わったため、がらがらに空いている。
アナウンス「間もなく、終点、沼津に到着いたします。どなた様もお忘れもの、落とし物の無いようにご注意ください。本日も、東海道線をご利用いただきまして、ありがとうございました。」
正輝「さあ、杉ちゃん降りよう。」
駅員「少しお待ちくださいね。」
電車が止まる。少ない他の乗客を出して、二人は車掌に手伝ってもらいながら、電車を降りる。正輝はすぐに車いすエレベーターを探しだし、二人は改札階にあがり、北口から出る。
正輝「このロータリーをいって、まっすぐいけばすぐだよ。塩川呉服店って、看板があるから。」
二人はロータリーを回り、道路を歩く。
杉三「空がくらいね。」
正輝「来たときはいい天気だったのに。あ、杉ちゃん、この店だ!」
指さした方向を見ると、着物が大量にハンガーに吊りさげられておいてある、一軒の店が見える。正輝は、早足で車いすを押していき、店の前にたつ。
正輝「こんにちは!はじめまして!」
店主「はい、いらっしゃいませ。」
正輝「僕たち、富士からきました。この人、杉ちゃんが、大島のお着物をほしいといっているのですが。」
店主「大島ですか、村山大島もありますが、どちらでしょう?」
杉三「村山じゃない方。柄は麻の葉でおねがいします。」
店主「麻の葉ですか。色はどうしますか?」
杉三「黒です。」
店主「黒の、麻の葉の奄美大島ですね。わかりました。では、こちらにいらしてください。在庫を確認してきます。」
二人、店の中にあるテーブルの前に座る。
正輝「杉ちゃん、大島っていうけど、なんで大島っていうの?」
杉三「沖縄の奄美大島というところで織られたからだよ。」
正輝「今着ているのも大島?」
杉三「一番落ち着いて着られる着物だから。泥染めの黒が好きなんだ。」
正輝「泥染め?」
杉三「そうだよ、大島というのはね、植物から採ったものと、泥んこで染めるんだ。」
正輝「だから、黒くなるんだ!」
杉三「そう。洋服では、ぜったいできないよ。錬金術があったとしても、あの美しさは再現できない。」
店主「お客さん、持ってきましたよ。お客さんは体が小さいから、女性ものでも、十分すぎるくらいですね。多分、男性ものですと、腰の辺がブカブカになってしまうかもしれないから、女性もので試してみますか?」
杉三「そうですね。とりあえず試着を。」
店主「はい、こんな感じですね。」
と、杉三を鏡の前に移動させ、一枚の着物を彼の前でら広げる。小さな麻の葉が、びっしりと織られている。
杉三「いいですね。女性ものというけど、大きすぎますね。」
店主「よろしければ仕立て直ししましょうか?」
杉三「自分でも縫えますよ。あと、ひとつかふたつ、買いたい。」
店主「わかりました。じゃあこちらはいかがですか?」
今度は、大きな麻の葉をいれたもの。
杉三「こっちの方がサイズはちょうどいいんじゃないかなあ。」
と、突然ドアが開く。
正輝「あ、他のお客さん、こんにちは。」
店主「はい、いらっしゃいませ。」
他のお客さんは、女性二人だった。多分母娘だと思われるが、着物にはあまり縁のない顔をしている。
母親「すみません、こちらはリサイクル着物ということですが、」
店主「はい、なんでしょう?」
母親「リサイクルというのは、お安いのでしょうか?」
店主「はい、通常でかうよりは、かなりお安いと思いますよ。」
母親「実は娘が成人式になるのですが、うちは収入がありませんので、こちらに伺った次第でして。」
店主「ああ、それはよくあります。こちらに振り袖がご用意してありますので、ご覧になってみてください。」
と言い、杉三たちの方に戻る。
店主「失礼しました。まだ他にも入用ですか?」
杉三「とりあえず、この二着をいただきたいです。おいくらですか?」
店主「はい、どちらも4000円です。」
正輝「やったあ、一万円しないでできた!おじさん、これでおねがいします。」
と、一万円札を渡す。
店主「おつり、二千円ね。いま、包装しますので、もうちょっと待っててね。」
娘「ねえお母さん、こういう柄じゃなくて、もっと華やかなものはないの?あたしの友達は、牡丹とかバラとか、そういう派手なのを着るっていってたわよ。」
杉三「いいじゃないですか、吉祥紋様ってのは、昔からある、素晴らしいもんですよ。」
娘「でもなんか古くさいわよ。そんなじみな振り袖で成人式に出たら、また貧乏垂れと言われていじめられるわ。」
母親は、どう答えたらよいのか、わからないようだ。
杉三「着物ってのは、古い方が格好いいんですよ。紬の着物だってそうでしょ。あれなんかは、単純素朴な柄だけど、着ている人はみんなかっこよく見えますよ。若いかたは、パワーがあるはずですから、じみな着物であったとしても、充分カバーできます。」
娘「貧乏神がついているとか、言われちゃうような気がしてならないんです。だって、高校時代、貧乏神、貧乏神と言われていじめられ続け、自殺したくなったこともありました。だから、華やかな振り袖で、見返してやりたいのよ!」
母親「いい加減にやめなさい!確かにいじめられたことはあったけど、仕方ないことだとして、受け入れなければならないことはいっぱいあるのよ!それに対して、いちいちいちいち文句ばかりいっているようでは、成人式どころか、大人にさえなれないのよ!あなたも、歩けないみたいだけど、高級品を身に付けているようでは、あたしたちのような人間の気持ちなんて、わかるはずがないわ!余計なことを挟まないでよ!」
杉三「僕は、そんなことをいった覚えはないんですが。」
母親「いいえ、大人になろうとしている娘を、そうやって甘やかしてタブらかしている人には、預けたくありません。」
杉三「単に、古い柄の着物でも、着方を変えればなんぼでも美しくなれるということを伝えたいだけなんですが。」
母親「変える、となればまたそれでお金がかかる。歩けないんだから、あたしたちの税金で食べているようなもんでしょう?少し、払ってる人たちの身にもなってください。もう、こんな変な店、二度ときませんよ!いきましょ。」
娘「待って!わたし、彼の話に興味が、、、。」
母親「いいえ、かえって高級品を押し付けられるだけ!いきましょ!」
と、娘のてを引っ張り、出ていってしまう。
杉三の目に涙が浮かんだ。そして、顔を覆ってすすりないた。
正輝「杉ちゃん、僕らも行こう。」
店主は、何も言えずに唖然としている。
正輝「迷惑をかけました。こんど、お詫びにきますから。僕たちも帰ります。」
店主「は、はい。品物はこれね。しっかりした息子さんを持って幸せな方ですな。」
杉三「息子ではありません。友達です。」
と、紙袋に入った着物を受けとる。
店主「そ、そうですか、、、。」
正輝「ありがとうございました。またきます。」
と、無理矢理車いすを押して、店を出る。
どしゃ降りの雨が降っている。
杉三「雨だ、、、。」
アナウンス「市内に大雨警報が発令されました、、
、。」
正輝「警報だ!もしかして、電車がとまってしまうかも!それなら、僕らも帰れないよ!どうしよう!」
疲れてしまったのか、みるみる涙が溢れて、泣き出してしまう。
雨はさらに強くなり、車軸をながしたようになる。幸い都市部なので、土砂崩れの心配はないが、きっと駅はごったがえしているだろう。
と、呉服店のとなりにある建物の、ドアがあく。
声「うちで、ラーメン食べて、雨宿りしてったら。」
優しそうなおじいさんが、二人をみていた。
杉三「ラーメン?」
正輝「まだ、お昼を食べてなかった。」
声「入んな。こういうタイプの雨はね、一時間すれば必ずやむから。それまでゆっくりしていきな。段差も何もないよ。」
と、おじいさんは入り口のドアをあけてくれたので、二人は入らせてもらった。
確かに敷居はなく、車いすでも余裕で入れるようになっていた。しかし、その部屋数に比べると、座席は少ないような気がした。二人がテーブルにつくと、セルの着物を身につけたおばあさんが、お品書きを持ってきてくれた。
正輝「杉ちゃん、注文、、、あ、読んであげなきゃいけないのか。」
おばあさん「まあまあまあ、、、。私が読んであげる。醤油ラーメン、味噌ラーメン、チャーシュー麺、、、、。」
杉三「じゃあ、味噌ラーメン。」
正輝「僕は醤油ラーメンにします。」
おばあさん「しっかりした子ね。うちの子にも、こんな風にしっかりした子がいたらよかったのに。」
杉三「うちの子って誰ですか?」
おばあさん「私たちの、息子。もう星になっちゃったけど。元気なときは、この店をつぐんだって、はりきっていたわ。寸前まで店を手伝っていたの。」
おじいさん「歩けなくなって、車いすになっても手伝っていたから、こうして店を改築したんだけど、さあできたと言った時に逝ってしまった。」
杉三「何かの病気とか?」
おばあさん「ALSって知ってるかしら。」
正輝「僕、なんとなくわかる。体がだんだん動けなくなって、最期には、、、。」
おじいさん「はじめのうちは、親より先に死ぬとは思わなかったからね。本当に頭の中が空っぽになってしまった。いつも来てくれるお客さんのおかげで、何とか店をやってるけど、本当はね、もう少しはやく、見つけてやれたら、もっと楽にしてやれたんだろうなあ。」
杉三の家
初音「ああ、大丈夫かしら。電車が遅れているって、ラジオでやってたから。」
蘭「大丈夫ですよ。避難勧告とかでた訳じゃないし、土砂崩れがどうのこうのとかでもなければ、雷も、風もないじゃないですか。」
初音「せめて、お宅にテレビがあれば、今のことがすぐわかるんですけど。」
美千恵「いますぐわかるんだったら、そとを見てみるのが一番よ。あたしがみる限りでは、もう、三十分くらいで止むんじゃないかな。」
ラーメン店。ラーメンを食べている二人。
正輝「どうしたの杉ちゃん。泣いたらラーメンがまずくなっちゃうよ。」
杉三「だって、こんなおいしい味が、もうすぐなくなるんだな、と思うと、悲しくて仕方ないんだ。亡くなった人は、もうかえってこないけどさ。だれか、継いでくれる人がいてほしいくらいに美味しいんだもの。」
おばあさん「ほんとうは、いたんですよ。」
杉三「へ、誰が?」
おばあさん「もう一人、娘がいたんです。」
杉三「娘さんももしかして。」
おじいさん「そうなんだよ。」
杉三「なんでまた。」
おじいさん「わしらは、子育てに失敗したんだよ。弟だった息子にばかりとらわれていて、姉の娘はまったく、てをかけてやれなかった。よく、二人で病院に泊まり込んだりしたから、一人で留守番もあったし、寂しかったんだろうね。息子が死んだあとは、葬儀やらなんやらで、あいつを使ってしまったから、息子が死んだ次の年に、飛び降りて逝ってしまった。男ならなんとかしたかもしれないが、女の子はそうはいかなかったんだろうね。そのあたりを、わしらも、しっかりすればよかったな。」
おばあさん「娘には、店をついでほしいのではなく、嫁にいくように育てたのが、間違いだったのかもしれませんね。」
杉三「そうだったんですか、なくなってほしくないものが、なくなるなんて、ほんとに世の中は悲しいことばっかりなんですね。どこかで、このラーメンがなくならないでいてほしいと思いますけど、そうもいかないのが、人間は無力と言いますか、なんといいますか、、、。」
おばあさん「ほんとうは、息子を育てるというより、娘を育てるべきでしたわ。」
正輝「僕は違うもん!弟ができたら、ちゃんと手伝える子になる。」
おじいさん「いやいや、難しいもんだよ。」
正輝「でも、僕、男だよ!僕の弟が生まれたら、ちゃんと手伝ってあげられるようになる!だって、ラーメンの味が消えるのは嫌だから!」
おじいさん「偉い!よく気がついた。」
正輝「だってね、、、。」
おばあさん「頑張んなさい。あたしたちは、応援してるから。」
正輝「うん!僕、これからも頑張って、優しいお兄ちゃんになるんだ。」
回りの音が、急に静かになる。
おばあさん「ほら、もうやんだ。大丈夫。そのうち電車も開通するわよ。」
おじいさん「ちょっと窓を開けてみようか。」
と、店の窓をあけて、外を見る。
おじいさん「うん、雲ひとつない青空だ。気を付けて帰りなよ。」
正輝「うん、わかった!ごちそうさまです。」
おじいさん「訳ありのお客さんだから、半額にまけてやる。二人あわせて、1000円でどう?」
正輝「うん、大丈夫!杉ちゃん、帰ろ。」
杉三は天井を見上げていた。
おじいさん「天井に何かいいこと、書いてあったか?」
杉三「いや、雨が止むか心配で。」
全員、大爆笑になる。
正輝「はい、こちら千円です。ほんとに、ごちそうさまでした。」
と、おばあさんに千円を手渡す。
おばあさん「はい、こちら領収書。帰るまで、なくさないでね。」
正輝「はい、わかりました、じゃあ、杉ちゃん、帰ろう。」
杉三「ごちそうさまでした。」
正輝は、杉三の車いすを押して店をでる。
杉三の家。そわそわして落ち着かない初音。
美千恵「雨がやんだから大丈夫。そのうちかえってくるわよ。そんなに、ざわざわしなくても。」
初音の携帯電話がなる。
初音「もしもし、正輝!正輝なのね!いまどこ?雨は大丈夫!体にかわりない?」
蘭「やっときたか。」
声「大丈夫だよ。いまから電車にのるから、あと少しで到着するよ。無事に大島もかえたし、美味しいラーメンやさんにも行けた。杉ちゃんも大丈夫だから、安心してね。あ、電車がきたから、切るよ。」
初音「正輝!ま、まだ、」
電話は切れてしまう。
初音「大丈夫かしら。」
蘭「大丈夫ですよ、幸い電車は平常運転になってますから。僕が調べた限りでは。」
初音「そうなんですね!ほんとに、大丈夫なんですね!」
蘭「そうですよ。すこしばかり、声が大きいですよ。」
初音「だって、本当に心配なんですから!変な事件に巻き込まれるとか、よくあるでしょうが!」
美千恵「もう、テレビの見すぎです。現実問題、この周りで事件なんか何もないでしょうが。遠く離れたところの事件をみて、おんなじことがおこったらどうしようなんて心配しても無駄遣いですよ。だから、テレビというものは、好きじゃありません。」
初音「それでも、、、。」
と、部屋の中をぐるぐると回る。と、そのとき、インターフォンが鳴った。
正輝「ただいまあ!」
杉三「ただいまもどりました。」
初音は正輝のもとにかけよる。
初音「たいへんだったし、怖かったでしょ。うちにかえって、ゆっくり休もうね。」
正輝「ううん、僕、お兄ちゃんだから、大丈夫!」
初音「またそんなこと、考えなくていいのよ、もう、
、、」
杉三「僕は正輝君に感謝してます。でなかったら、大島もかえなかったし、親切なラーメン屋さんにも、出会えなかった。みんな、みんな、みんな、正輝くんの、力だと思います。」
美千恵「彼の才能だと思えばいいのよ。初音さん、きついことを言うようだけど、あなた、その才能を今の時世にこじつけて潰そうとしてないかしら?才能をもぎ取られると、彼は幸せにはなれないのよ。」
初音「でも、正輝は、」
美千恵「本人は、十分覚悟できているはずよ。杉三を率先して連れていったんだから。」
初音「覚悟しているといっても、正輝の将来が、」
美千恵「なら、彼の顔をみてごらんなさい!」
初音は、息子の顔をまじまじとみた。その顔は、少年というより大人の顔に近づいている様にみえた。
初音「考え直してみます。」
正輝の顔がパッと変わる。
正輝「よかった!」
杉三「がんばれ、お兄ちゃん。」
初音「じゃあ、もう、夕食だから帰ろうか。」
正輝「ありがとうございます。杉ちゃん、また一緒に遊びにいこうね!」
初音「ほら、もう杉ちゃんはいいから、はやく帰りましょう。」
と、てを引っ張り、そそくさと帰ってしまう。
杉三「ほんとに、彼はお兄ちゃんになれるかな。」
蘭「どうなんだろうね、あの態度では。でも、今回のようなことは、子供でなければできないよ。大人では、必須条件がなきゃ、できない。」
美千恵「そうね。」
と、ため息をつく。
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