愛すべき
スーパーマーケットの中。杉三と蘭が買い物をし終わって、家に帰ろうとする。
と、突然こどもの泣き声。
声「いやだあ!歩きたい!」
蘭「歩きたいのかな。まあ、どこでもあるよね。ショッピングカート。」
杉三「それにしては、泣き方が酷くない?」
蘭「どういうこと?」
杉三「ちょっと、きいてみてごらんよ。」
蘭「え?」
声「早く乗りな!でないと、ひっぱたくよ!」
蘭「ひっぱたく?」
子ども「わあーっ!」
と、同時にピシャン!という音。一瞬、スーパーマーケットにいた他の客もヒヤリとする。
杉三「僕、ちょっと、行ってくる。」
と、車いすを方向転換する。
蘭「杉ちゃん、どこ行くの!」
聞こえていないらしい。
蘭「ああ、文字が読める人だったら、どんなに楽だろう。」
杉三は、全速力で車いすを走らせ、子どもが泣いている野菜売り場にいく。
母親「静にしなさい!泣いたらまた叩くわよ!」
杉三「叩くだけが教育じゃありませんよ!」
母親「誰ですか、あんたは。」
杉三「影山杉三です。」
母親「仕事は?」
杉三「いまはしていません。」
母親「は、そうだとおもったわ。あんたみたいに、国からの援助で生活している人は私は大嫌いなの!健常者に文句つけないでよ!」
杉三「だったら、娘さんに手を出すのを止めて貰いたい。」
母親「育児が出来ない人に、そういわれる筋合いはないわ。」
杉三「娘さんの顔を見てあげてくださいよ。」
母親「考えさせているんだからいいでしょ。自分で考えなきゃ、大人にはなれないわ。」
杉三「そうですかね、考えているのではなく、お母様の顔が怖いから泣いているんじゃありませんか?」
と、娘の方を見る。彼女は、きちんとした食事をしていないらしく、げっそりとやせていて、顔つきも悪い。
母親「光、ママのこと、怖いと思うの?」
杉三「光ちゃんか。」
光「そんなことないよ、」
母親「ほら、ご覧なさい。」
杉三「顔は嘘はつけませんよ。彼女の顔を、もっとみてやってください。」
母親「うるさいわね!母親の私ばかり責められるだけで、なんで光には、みんな優しいのかしら。」
杉三「お母さんだからですよ。」
母親「お母さんになると、そうやって差別するわけ。DVとは、こういうことかしら。あんたみたいに、社会の恩寵で、生活してる人って、ほんと腹がたつわ!じゃあ、これで帰りますから!」
と、泣き続ける光を無視し、カートを押してレジに行ってしまう。
杉三「ちょっと、お母さん!まだ、お伝えしたいことがあるのに!」
杉三も泣き出してしまう。そこへ蘭がやってきて、
蘭「杉ちゃん、もういいだろ、帰ろうよ。でないと、晩御飯の支度に間に合わなくなるよ。」
杉三「お母さんはただ一人なのに。」
蘭「まあねえ、そうはいかない時代になってきたのかなあ。」
杉三「一番の被害者は、子供だよ。」
と、両手で顔を覆って泣く。
蘭「さあ、杉ちゃん、帰ろうよ。早く動かして。」
杉三と蘭は、仕方なく帰って行く。
その数日後、富士警察署。
電話が鳴る。丁度そばにいた婦警が、電話をとる。
婦警「はい、刑事課です。はい、えっ!子供が万引き?はい、わかりました。すぐ行きますので。」
ちょうどそこへ、昼食を食べ終えてきた華岡が、鼻歌をうたいながら、やってくる。
婦警「あ、警視、すぐにセブンイレブンにいってください。四歳の女の子が、万引きをしたそうです。」
華岡「なに、それは本当か!四歳の女の子なんて、親はどこにいったんだろう、すぐに行こう!」
セブンイレブン
いつまでも泣いている光。
店長「何があったかは知らないけど、店のものを勝手に持ち出して、たべるというのは、いけないことなんだよ。君のお母さんの連絡先を、早く教えてくれないかな?」
そこへ、華岡が、部下と一緒にやってくる。
店長「ああ、きてくださったんですか。万引きしたのは、彼女です。いきなり、幽霊のように入ってきまして、ハンバーグを手掴みで食べようとしました。まったく、最近の子供は、甘やかされすぎて、こういうことも、わからないんですな。」
女の子は、涙を流して泣く。
華岡「店長さん、このくらいの年齢で、しかも女の子が、犯罪をすることは、まずありえません。もっと彼女の話を聞くべきでしょう。」
店長「しかし、凶悪な少年犯罪があとをたたないのは、子供のころに、厳しい教育がなされていないからだとおもいませんか?」
華岡「思いません。むしろ、それが原因と思われる犯罪の方が多いですよ、現にあなたは、彼女を傷つけています。」
店長「いまいましい。警察官にまでそういわれる時代がきたのか。わしら、年寄りは悪人呼ばわりされていくのもつらいけどな。もう、唖の女を早くこの店から出してくれ。」
華岡「いわれなくても、そうします。」
店長の顔も見ないで、華岡は、セブンイレブンをでる。あとのことは、部下に任せ自分は彼女を連れて、杉三たちの家に向かう。
タクシーの中。華岡はスマートフォンで二言三言交わす。
光「ねえおじさん、どこにいくの?」
華岡「おじさんが、世界一優しいと思うおじさんのところだよ。」
光「優しいって事は、また、叩くの?」
華岡「誰がそう言うの?」
光「ママが。」
華岡は、大きなため息をつく。
華岡「はい、そこでとめてください。」
運転手「毎度あり。900円です。」
華岡「はいよ。」
と、Suicaで払う。タクシーは、自動でドアが開き、二人はタクシーを降りる。
丁度そこは杉三の家の前。カレーのにおいが充満している。子供であれば、大喜びする料理であるが、光は喜ばない。
華岡は迷わずチャイムを押し、
華岡「つれてきたよ、もうカレーはできてるのかな。」
前掛けをつけた杉三がやってきて、
杉三「出来てるよ。小さな女の子ということで、なるべく、辛すぎないようにしたよ。」
華岡「そうしてやってくれ。さあ、光ちゃん、一緒にカレーをたべようね。」
光「だめ。」
華岡「どうして?怖いお母さんより、優しいおじさんたちの方が、楽しいとおもうんだけどな。」
杉三「光ちゃん?あ、もしかして、僕のこと、覚えてる?僕は影山杉三だよ!君のお母さんが、あまりにもきみに厳しすぎたから、注意したんだよ、覚えてないかな?」
光「わあーっ!」
杉三「大丈夫だよ。僕らは怖いおじさんではないからね。さあ、入ってカレーを食べようよ。」
光はそれでも泣き続けるが、あまりの空腹で、座り込んでしまう。
食堂
カレーを食べている光。
光「おかわり。」
蘭「それにしてもすごい食欲だなあ。これで、四杯目だよ。」
杉三「いいんじゃない。育ち盛りの子だもの。このくらいはそれでも食べなきゃ。」
華岡「刑事からみたら、親が全然食べさせていなかったと、いうことだなあ。」
蘭「つまり、虐待か。」
華岡「うん。早く親を逮捕しなければ。」
蘭「でも、彼女をどうする?」
華岡「施設にかな。養女としてくれる人はないのかなあ。」
蘭「そうだなあ。本当はそれがいいんだけどね。今の日本社会では、なかなか偏見の目はとれないし。」
杉三「じゃあ、僕らがやろう。」
蘭「は!」
杉三「だから、蘭とアリスさんのもとでかくまってあげればいい。」
蘭「な、何をいう!」
杉三「しばらく預かってあげてよ。正常な愛情とは、何なのか、教えてあげてよ。蘭。君も大病したことがあるんだからさ。」
蘭「うーん。」
華岡「いや、杉ちゃん、それはナイスアイデア。人間を救うのは人間しかないからね。よし、とりあえず蘭、君の家へ連れて帰ってくれ。」
蘭の家
蘭「と、いうわけでつれてきたんだよ。全く、杉ちゃんは、無責任で困る。
」
アリス「あら、いいじゃないの。」
蘭「お前までそういうのか。」
アリス「蘭、だって一度だけでいいから、お母さんになりたいっていうきもちをね、女であれば持つのよ。」
蘭「そうはいってもさ、経済的にも職業的にも困るでしょ。」
アリス「あら、あんたの師匠の先生だって、息子さんがいるでしょうが。関係ないわよ。」
蘭「そうかな、、、。」
アリス「はじめまして。名前はアリスよ。呼び方は好きなように呼んでいいわ。呼び捨ても、かまわないわよ。」
光「おばさんは、目があおい。ピノキオの仙女みたい。」
アリス「あら、私そんなに偉い人じゃないわ。普通のおばさんよ。」
光「そうじゃないようなきがする。おばさん、よろしくね。」
アリス「はいはい。」
次の日、杉三たちは、光を連れて近所の蕎麦屋にいく。
光「(そばをみて)これ、なんていう食べ物?」
杉三「これはね、そばと言うんだよ。」
光「そば?この灰色のが?なんか、ねずみ色みたい。」
アリス「騙されたと思って食べてみて。すごく美味しいから。」
光は、そばを手掴みで口にする。
光「味しい!」
杉三「よかったね、光ちゃん。」
アリス「じゃあ、次はお箸で食べてみようか。おばさんの持ち方をみて。こうやってはしをもつのよ。」
蘭「君も、日本に来たときは、箸が持てなかったよな。」
光「おばさんも持てなかったの?」
アリス「当たり前よ。おばさんは、お箸を持たない国に生まれたから、箸の持ち方なんてさっぱりわからなかったわよ。
」
光「おばさんは、お箸が持てなくて、怒られたりした?」
アリス「怒られたわ。でも、やり方を知らないから何回も質問したわ。だれだって、一度や二度じゃわかるもんじゃないわよ。やり方がわからないから、おしえてくれというと、甘ったれてると言われる方が多いけど、本当に知らないんだから、わからないって、主張するのは、大切よね。」
蘭「外国人らしい発想だなあ。」
アリス「関係ないわよ。じゃあ、光ちゃん、お箸の持ち方、練習しようか。」
と、アリスは光に箸の持ち方を説明してやる。
杉三「よかったね、おばさんが教えてくれたね。」
光「うん、ありがとう。」
杉三「そうやって、たくさん誉めてもらいな。そうすれば、大人になっても、楽にいきられるから。」
蘭「杉ちゃんは、いつも楽に生きているよね。」
杉三「まあね。」
全員に笑いが飛ぶ。
光「このあとは、もううちに帰るの?」
蘭「あ、まだ二時間以上ある。どこかへ寄るか。」
アリス「そうね。道路が心配で、こんな早く来たのよね。こんなに流れているのは、初めてだったわ。」
杉三「じゃあ、あそこへつれていってあげようよ。」
蘭「あそこってどこに?」
杉三「カールおじさんのとこ。 光ちゃんに着せてあげたい。」
蘭「着物をか。」
杉三「うん。きっと、七五三とか、やってないと思うから。」
アリス「いいわね、いいわね!日本の伝統行事は、あたしも大好きだし!」
蘭「そういうことならいこう。」
全員、蕎麦屋を出る。
カールおじさんの呉服店。
杉三「こんにちは、カールおじさんいる?」
カール「おう、杉ちゃん。いま暇だから入りなよ。」
杉三「お邪魔します。」
と、がらがらと戸を開ける。中は、着物が山のように積まれている。
光「わあ、すごくきれい!」
アリス「いわゆる、アンティーク着物ってやつね。」
カール「うん。ちょうどアンティーク着物特集があってね。今月一杯は、アンティーク着物半額セールをしているんだ。」
光「あたしも、着てみたいな。」
カール「うん、子供さんのも、こないだ仕入れてきたよ。かわいい顔立ちだから、この着物はどうだろう?」
と、子供用の着物を差し出す。光はすぐ袖を通す。
アリス「ちょっとじみよ。もっと明るいのはないの?」
確かに、その着物は、地色が茶色であり、綺麗ではない。
カール「そうかそうか、じゃあ、思いきってこれはどうかな?みんな、けばいといって、買ってくれないんだけど。」
と、光の着物を脱がせ、別のものを着せる。薔薇色に、白い花が刺繍された小紋。
杉三「かわいい!」
蘭「少しはでかもだけど、帯を控えめにしたら大丈夫だと思うよ。」
アリス「じゃあ、帯も頼むわ。」
カール「了解。じゃあ、このグリーンはどうかな?子供さんだから、経古帯で。」
と、光の胴に巻いてみる。
光「うれしい!涙がでちゃう!」
現に涙が流れ出て来ていた。
カール「なかなくてもいいんだよ。じゃあ、着物と帯で、会わせて1080円。」
アリス「ああ、私が出すわ。」
と、現金を手渡す。
光は、踊り子になったかとおもったらしく、くるくると回っていた。
蘭「光ちゃん、かえろうか。」
アリス「いいわよ。嬉しい気持ちはうんと、味会わせてあげましょ。」
蘭「そうだね。」
杉三「光ちゃん、そんなに嬉しい?」
答えはなかった。
杉三「答えが出ないほど、嬉しくてしかたないんだな。」
全員、少しため息をついた。
次の日。富士警察署。華岡が出勤すると、
部下「警視、光ちゃんの母親なんですけどね。」
華岡「なんだ、何があったんだ。」
部下「一応名前は確認しました。名前は安部桂子です。」
華岡「で、どこに逃亡しているとかわかったか?」
部下「いや、まだ行方は掴めていません。と、いうより、この女は、経歴がすごいんですよ。」
華岡「へえ、どんなふうにだ?」
部下「なんとも、父母は、すでに海外にいっていて、帰らぬ人なんですよ。」
華岡「海外?」
部下「はい、彼女の父母は、発展途上国で、医療や福祉を教授していたそうです。そのために、桂子は、母方の祖母に育てられたそうですが、祖母が亡くなってからは、ほとんどの生活費を娼婦として、賄ったようです。そのため、いつも寂しい思いをして育ってきていて、結婚を二つ返事でうけたそうです。」
華岡「で、光ちゃんの父親は?」
部下「はい、もうとっくに亡くなっているそうで。不慮の事故だったとか。」
華岡「なるほど。では彼女はシングルママということか。」
部下「まあ。そうですね。」
華岡「友人知人で、彼女を慰めたり、アドバイスしてくれる人もないのか。光ちゃんもかわいそうだ。」
部下「警視がため息をついてどうするんですか、だから、富士の警察は甘いといわれるんだ。光のこともそうですが、桂子を逮捕する事をまず考えて下さい。」
華岡「ふいー。」
部下「ため息つかないでくださいよ。もうちょっとしっかりして下さい。」
スーパーマーケット。杉三と、光が買い物をしている。
光「杉ちゃん、このヨーグルトでいいの?」
と、カスピ海ヨーグルトを彼に渡す。
杉三「これは、なんて書いてあるのかな?」
光「カスピ海ヨーグルトだよ。」
杉三「カスピ海ヨーグルト。うん、それでいいよ。そのヨーグルトが一番おいしいんだ。次にどこかでマンゴーを。」
光「じゃあ、杉ちゃん、こっちだよ。押していってあげる。」
杉三「悪いね。」
光「悪くなんかないよ。だって、杉ちゃん、歩けないでしょ、歩けない人を助けるのは、当然だって、じいじがいってた。」
杉三「そうかそうか。君のじいじも偉いんだね。」
同じマーケットにあるカフェで、蘭と懍が話している。
蘭「実に感性が良い方です。ああして杉ちゃんを手伝えるんだから、奉仕精神があります。だからこそ」
懍「そうですね、うちの製鉄所は、もういっぱいですし、たたら製鉄は、女の子には向かないでしょう。」
蘭「教授、どこかに良い施設はありませんか。単に適当に施設にいかせたら、彼女の感性はつぶされてしまい、彼女は、病気にかかってしまうでしょう。そんなおもい、させたくないです。」
懍「本当は、実の親が子供を愛さないなんて、あり得ない話でしたけどね。間引きということはありましたが、いまのようにごみのように捨てることは、ありませんでしたよ。」
蘭「確かに、昔であれば、医療が発達してないし、子供が元気に育つことも難しかったわけですから、七五三なんて、本当に神聖だったんだろうな。」
懍「はい、まさしくその通りですよ。本題に戻りましょう。結論からいうと、光さんは、里親にだすが、養女にだすべきでしょう。」
蘭「お母さんのもとに返すことは、」
懍「難しいと思います。実の親だからこそ、発生する弊害も甚だしい。ひどい確執が、発生してしまい、かえって悪化してしまう可能性もあります。本来、子供をもつということは、それなりに覚悟がなきゃいけないんですが、それがない人が、あまりにも多いので。」
蘭「そうですか、、、。」
と、杉三の方をみる。
光「杉ちゃん、マンゴーかってきたよ。あと、ナタデココも。これでいい?」
杉三「ありがとう。じゃあ、支払いにいこう。」
レジにて、商品をチェックしてもらい、
店員「はい、1080円です。」
光「このお金でいいですか?」
と、五千円を手渡す。
店員「はい、確かに受けとりました。」
杉三「ありがとうございます。」
店員「しっかりした子ね。杉ちゃんの方が、年齢が逆みたい。」
杉三「そうかもね。ははは。」
そのやり取りをみていた蘭と懍は、大きなため息をついた。
蘭の家。光が、アリスと一緒にピアノを弾いている。
アリス「そうそう。上手よ。」
光「おばさん、他の曲もやりたい。」
アリス「はいはい。じゃあ、これをやってみようか。ちょっと難しいかな。」
光「やってみたい。」
アリス「じゃあ、やってみましょう。きらきら星。」
光は、いきなり両手をだして、弾き始める。
アリス「片方ずつやった方が、、、。」
と、いいかけるが、言葉をとめる。光は、初見で、きらきら星を弾きこなしたのであった。
アリス「上手ね。光ちゃんは。ママにピアノ習いたいって言ってみたら?きっと、すごい上手に弾けるようになるわ。」
光「でも、ピアノは役にたたないってママが。」
アリス「役にたたないことはないわ。誰かの前でひいてあげることだってできるわよ。」
光「でも、だめなの。」
そこへがちゃんと、ドアを開ける音。
蘭「ただいま。」
アリス「お帰り。」
蘭が部屋に入ってくる。
蘭「いま、きらきら星が聞こえたけど、誰の音?」
アリス「光ちゃんよ。」
蘭「ほ、ほんとに?」
アリス「ええ。もちろんよ。あたしは弾いていないわ。」
蘭「それにしてはうまかったな。光ちゃんは、すごい才能を持っているよ。」
アリス「でしょ。気持ちがやさしいのね。感性が本当にいい。音大でも行かしたら、首席で卒業できたりして。 」
蘭「そうなると、実母と暮らすのは、余計に、難しいだろうなあ。」
アリス「そうかもね、、、。音楽家の家の養女になるとか。」
蘭「かわいそうだけど、彼女のこれからの才能を潰さないためには、そうするしかないのかな。」
アリス「最終的には、本人の意思になるのかしら。」
蘭「どうなんだろう。あーあ、昔はこんなことなかっただろうな。親が子供に、愛情が持てないなんて。」
アリス「ある意味、日本が豊かすぎて、糖尿病にでもなっているのかしらね。」
蘭「うまいこというな。おまえも。」
一方。様々な男と寝たことにより、大金をてに入れた桂子は、ある高級マンションに住んでいた。いわゆる、妾であった。
ある日。インターフォンが鳴った。
桂子「なによ。」
華岡「警察ですが、ちょっとお話を。」
桂子「警察?あたしがなにか、したとでも?」
華岡「何かって、娘さんを置き去りにして、出ていったじゃありませんか。」
桂子「むすめ?」
華岡「はい。安倍光ちゃんです。娘さんでしょ、あなたの。」
桂子「ああ、あんなの、誰かにくれちゃって構わないわ。どうせ、金にならないことばっかりに興味もってたから。」
華岡「とにかくですね、署まで来てもらいます。そこでゆっくりと、話してください。」
と、ドアを無理矢理開けて、桂子をつれだす。
杉三の家
蘭「そうか。ついに逮捕したか。」
華岡「まあ、しかし、ひどい女だな。あんなのが、母親になっていいのかな。」
蘭「やっぱり、養女に出すべきなんじゃないのか?」
華岡「そう思わざるを得ないよ。何十にんの男から金を巻き上げて、その度に高級品ばかり買っていたんだから。」
蘭「つまり金遣いが荒いと。」
華岡「ああ。なんとも、豪華客船にまで乗っていた。」
蘭「すごいな。そんな大金があったのか。売春の世界と言うのは恐ろしい。」
華岡「これから取り調べをしていくが、彼女の素性も明らかになっていくとおもうけど、恐ろしい女だぞ。」
蘭「確かにな。」
杉三の家
蘭「杉ちゃん、なかないでよ。これは、ほんとに仕方ないことなんだから。いまは、血は繋がっていても、心が通じない関係って本当に多いって、懍教授が言っていたんだよ。」
杉三「だめ!絶対!」
蘭「じゃあ、杉ちゃん、どうやればあの母親は光ちゃんの方を向くようになるのか、わかる?」
杉三「光ちゃんの側にいれば、すぐわかることじゃないか!」
蘭「わかってたらとっくにあの二人は仲良く暮らしてるよ!こんな事件には至らないはずだよ!」
杉三「僕はバカだけど、幸せに生きてるよ。それに気がつかないだけだよ!」
蘭「そうか!じゃあ、杉ちゃん、彼女にそれ教えてあげなよ。僕にはとてもできないけれど、君には出きるんだろ、あ、、、。」
と、胸を押さえてうずくまる。
美千恵「蘭さんごめんなさい。二三日すれば戻りますから、体調をくずしてしまわないよう。」
杉三「わかった!行ってくる。」
蘭「ど、どこに。」
杉三には聞こえなかったらしい。蘭は次第に頭がふらついてくる。
美千恵「ああ、蘭さん、布団を敷きますから横になったほうが。」
蘭「すみません。では、お言葉に甘えて。」
美千恵「こちらにいらしてください。」 と、車いすを押していく。
一方、道路を移動している杉三。そこへ婦警が自転車でやってくる。
と、目の前に財布が落ちている。彼女は、警察らしく自転車をとめ、財布を拾い上げる。
杉三「婦警さん。」
婦警「はい?」
杉三「いま、お財布拾っちゃった、ラッキーと、言いませんでしたか?」
婦警「えっ?」
杉三「もうちょっと、しっかりしてくださいよ。悪い人を退治するしごとなんですから。」
婦警「あなた、誰にむかって、そんなこと。」
杉三「部下の方が財布を拾って喜んでたと、華岡さんに言おうかな。」
婦警「えっ、警視とは、どういう関係で?」
杉三「友人です。毎日僕の家で、晩御飯食べてます。僕は、影山杉三です。名前をいえば、すぐわかってくれるはずですよ。」
婦警「あなたみたいな人と、警視が付き合っているとは、思えないわ。あなた、警視の名を語る、犯罪者?そうなら、今すぐ署まできてもらえますか?」
杉三「それを狙っておりました。連れていってください。華岡さんに会いたいと、お伝えください。」
婦警「警視から、こっぴどく叱ってもらいますから。」
と、自転車を動かし始める。杉三もついていく。
刑事課
華岡「まだ、黙秘ですか?」
部下「はい。うんともすんともいいません。いつまで続くんでしょうにね。」
部下「女ってのは、感情で動いちゃうから、わからないですよね。」
そこへドアがあき、婦警が入ってくる。
婦警「失礼します。あの、すみません。変な男が、華岡警視に会いたいと言ってきかないんですが。」
華岡「どんな人ですか?」
婦警「はい、歩行不能で、文字の読み書きもできない男です。」
華岡「ああ、杉ちゃんですか。大切な親友ですよ。すぐお通しください。で、皆さんは、取り調べは一旦中止して、彼女のバックグラウンドを、聞き込みしてくるように。」
部下「わかりました。」
部下「いってきます。」
と、足早に出ていく。
華岡「杉ちゃん、どうしたの?用があるなら、電話でもしてくれれば迎えにいったのに。」
杉三「僕には、電話なんかできないです。婦警さんにつれてきてもらいました。婦警さんが、財布を拾って喜んでいました。」
華岡「警察も、人間か。で、どうしたんだ?なんでわざわざここに来たんだよ。大変だったでしょ。」
杉三「光ちゃんのお母さん、どうしてる?」
華岡「ああ、取調室にいるよ。」
杉三「ちょっとお話させていただいてもいいかな?」
華岡「そうか。いいところに来てくれたな。杉ちゃんなら、何かを語ってくれるかも知れない。何しろ、ずっとだまったままだから。所謂黙秘ってやつだ。」
杉三「じゃあ、つれていってくれ。」
華岡「一緒に来てくれる?なら頼む。」
華岡は、杉三の車椅子を押して、取調室につれていく。
取調室
華岡「失礼します。」
桂子「また、取り調べですか?さっきもいいましたけど、私、何もしゃべりませんから。」
杉三「杉三です。僕にお話をさせてください。」
桂子「あなたは、、、。あのときの。」
杉三「はい。おかあさん、光ちゃんがかわいい?」
杉三「お母さん、身籠るってどういう感じなの?」
桂子「何を言っているの。とっくに生まれてしまったわ。それに、男であるあんたが、そんなこと聞くべきじゃないわ。」
杉三「まあ、そうかもしれないね。僕の近所に、子供がいる人がいるけど、その子は、本当にそのお母さんから生まれて来たのかな?と、疑問を持ってるんだ。もし、お母さんの体の中から生まれてきたのなら、あんな冷たく扱いはしないと思うんだ。それを説得したいから、女の人に聞いてみたかったんだよ。はじめのころは、食べつわりというのかな、それで随分苦しむでしょ。」
桂子「そう。ご飯の湯気も気持ち悪いとかして。」
杉三「やっぱりね。でも、しばらくすると、赤ちゃんの動きも解ってくるんだよね?」
桂子「あたしは、そんなに感じなかったけどね。」
杉三「へえ、何で?」
桂子「あたし、それよりも中毒症の方がひどかったから、あんまりよい思い出は、なかったのよ。医者も、光よりあたしの方が心配だといっていたから。」
杉三「どうしてそんなに?」
桂子「あたし、妊娠して、すぐに体調をくずして入院したの。そうしたらこう言われたのよ。赤ちゃんを出産した場合、あなたが助かる確率は、六割だと。」
杉三「えっ、それはまた大変だったね。どうしてそんなに?」
桂子「医者によれば、子宮の一部の機能が果たされてないからって。理由はわからないんだけど。」
杉三「そんなに!じゃあ、光ちゃんは。」
桂子「自然分娩ではなかったの。予定日より一月はやく。」
杉三「そ、そうだったんだね。光ちゃんだけではなく、お母さんも助かったなんて、神様が助けてくださったんだね。」
桂子「そんなこと、、、ないわ。光だけ助かればよかったのよ。」
杉三「なんで、、、?お母さんはたった一人なのに。」
桂子「昔だったらよかったのよ。親孝行したい時分に親はなし、これが続いていればいいのに。あの年よりたちときたら!」
杉三「言わなくていいよ。もうわかったから。言ったらもっと怒りが倍増するだろうから。そうだよね、命がけで生んだ子を、お年寄りにとられては、たまらないよね。」
桂子「生まれてすぐからそうだった。いまでも覚えてるわ。私が、友人に勧められたベビースイミングに光をつれていったんだけど、光は、水を怖がって、なきかたが激しくてね。まだ初めてのころは、水を怖がるのは当たり前と、インストラクターの先生はおっしゃったの。でも、年よりたちが、光をお風呂に入れられないからって、強制的にやめさせて。それから、幼稚園や、お稽古や、日常着の調達まで、みんな年寄りがやって、私は出る幕がない。だから、私、光をつれて家を出たけど、、、なぜか、、、光が、光がものすごく憎たらしい存在に変わったの。私もよくわからないのよ。それなのに、なんで?怒りをもってはいけないと、他の人から、さんざん言われてきたのに?」
杉三「光ちゃんの、おとうさんは?」
桂子「この世にはいないわ。電線の張り替え工事をしていたとき、誤って作業台からおちたの。本当はね、あの二人を、夫が止めてくれると期待していたんだけど、その前に死んじゃった。」
杉三「傷ついて、いるんですね。だれかに期待してしまうのも、その現れではないかと。」
桂子「どうしたらよかったというの?あたしが、みんな悪いのよ。」
杉三「そんなことありません。だって、光ちゃんのお母さんはお母さんです。だから、これからもっと、お母さんをやればいいんですよ。ほんとに、単純なことじゃないですか。」
桂子「具体的にどうしたら、」
杉三「だから、光ちゃんが好きだから、命がけで生んだ、と、思ってあげればいいんじゃないですかね。」
桂子「ずっと思っているのに。みんな、年寄りに盗られて。」
杉三「盗られることは、ないんじゃありませんか?むしろ、お母さんが盗むべきです。」
桂子「ぬ、盗む?」
杉三「はい、だって年よりは、はじめっから年寄りじゃありませんよ。その前は、おんなじようにお母さんだったんですから、盗んでしまえばいいのです。」
桂子「もう時代がちがうのに。」
杉三「そうかな。赤ちゃんだけは、変わらないと思うけど。」
桂子「何がですか?」
杉三「なにも知らないってことです。」
桂子「杉三さん、あなた、、、。」
杉三「まあ、男である僕が言ったとしても、仕方ありませんね。」
桂子「そんなことありません。光は、いまどこにいるのですか?」
杉三「蘭たちが、養女に出そうと計画していますけど。」
桂子「養女に出す?」
杉三「僕は、反対ですけどね。」
桂子「あの!すみません!私を一度だけでいいから、光に会わせてくれませんか!お願いです!」
華岡が入ってくる。
華岡「残念ですが、あなたは、光ちゃんに、虐待を繰り返した罪を償わなければなりません。光ちゃんが受けた心の傷は計り知れないでしょう。」
桂子「私、私、わたし、、、。」
と、机をバンバンと叩きながら泣き叫ぶ。
華岡「あの、机が、、、。」
杉三「落ち着くまでそっとしてあげようよ、華岡さん。」
華岡も頷く。桂子はいつまでもなき張らしていた。
蘭の家。
蘭「よかったね。光ちゃん。新しいお母さんとお父さんができて。」
光は黙っている。
水穂と、懍が来ている。
懍「君はきっと、あれだけ酷い虐待を乗り越えたんだから、きっと幸せになれるよ。」
光「はい、、、。」
と、黙っていた水穂が、いきなりせき込み、血が口に当てた手を汚す。
光「おじさん、大丈夫?」
懍「奥で寝ていてもいいですよ。」
水穂「いえ、結構です。いつものことだから。」
光「おじさん、、、。」
懍「光ちゃん、君には生きる権利があるんだ。本来ならお母さんはそのことを知っていないといけない。それを間違えるから、こうした事件にあってしまったわけで。だから、あんなお母さんのことは忘れるんだよ。」
インターフォンが鳴る。
蘭「そろそろみえるかな。きっと、うれしいでしょうね。跡取りもできるし、ピアノを教えることもできるし。」
懍「ええ、不妊治療はきついですからね。そういう夫婦も救えるし、光ちゃんも健全に育てられるでしょうから、一石二鳥でしょう。」
声「うれしくなんかないよ!」
蘭「誰ですか今のは?」
声「光ちゃんを道具にしないで!」
蘭「杉ちゃん!どこに行ったかと思ったら、なんで今更こんな大事な時に来るんだよ!」
バン!という音がして玄関のドアが開く。
杉三「さあどうぞ入って!今ならまだ間に合いますから!」
と、靴も履き替えないで、桂子が飛び込んでくる。
桂子「光を返してください。私の子供です。ほかの人に譲渡したくはありません。」
蘭「貴女、何を言うんですか。食事も与えないし、子育てなんか当分無理ですよ。そんな人に、子供を預けたくはありませんね。一番の被害者は誰なのかを、忘れないでください。」
桂子「そんなことはしません。もう、金輪際しないって誓いました。私は、罪を償いますから、光を私のもとに返してください。お願いします!お願いします!お願いします!」
蘭「そうだけど、光ちゃんの将来を思うと、無理ですね。彼女が思春期にはいったとき、そのような状態では、確実に悪化するでしょうから。そんな、親の元へ置くより、養女としてしっかり育ててくれる環境へやったほうが、彼女は間違いなく幸せになれるでしょう。考えてみてください、彼女は貴女よりも、ありすぎるくらい時間があるんです。いずれは、就職したり結婚したりするでしょう。そのときに、家庭の状態がしっかりしていないと、それが円滑にできない可能性がでるのです。心に傷を残すということは、一生かかっても解決できないことのほうが多いんです。それを、わからないで子供を作るから、世の中がおかしくなるのです。それだったら、しっかりと、愛情をかけて育ててくれる家庭に預けたほうが、よほど彼女は幸せになれるでしょうから。」
桂子「もう、、、どうして私は、子供さえもなくしてしまうのでしょうか。」
杉三「蘭、彼女もお母さんになりたかったんだけど、ほかの人が邪魔したから、虐待してしまったんだ。本当は光ちゃんを誰よりもかわいがってるのに、それが彼女はうまくできないんだよ。それでいいんじゃないか。まだまだ彼女には時間があるよ。少しづつ親子をやり直せばいいんだ。僕のほうからみたら、光ちゃんは大人の道具にされているに過ぎない。道具にしないで彼女を扱ってくれるのは、やっぱり、、、産んでくれたお母さんなんだよ。それしかいないんだ。だから、お母さんのもとに、彼女を返してあげてくれないかな。」
懍「杉三さん、君の言うことはいつも素晴らしいと感じるが、彼女の年齢をよく考えなければ。それに、彼女は音楽について、天才的な才能をもっています。その才能を伸ばしてあげたほうが、彼女はその才能を頼りにして生きていくことも可能です。だから、その才能を伸ばしてくれる家庭に住んだほうがいい。」
桂子「光が、才能?」
懍「はい。初見でキラキラ星を弾きこなしたそうですよ。たった一発でここまでできる子はそうはいませんね。きっとあなたは、音楽なんて知らないはずだ。それでは、彼女の才能がつぶれてしまうと思うのです。」
桂子「それは、、、。それは、、、。」
杉三「どうしたんですか?」
桂子「私のせいなんです。私、毎日洗濯物を干しながら、キラキラ星を口ずさんでいたんです。嘘じゃありません。私、毎日毎日洗濯物を干していた時、必ず歌っていましたから。あの子が生まれてから、この年になるまで、ずっとそうだったんです!」
一瞬、全員の顔が凍り付く。
杉三「やっぱり、お母さんの愛情だったんですね。お年寄りに、彼女を盗られて、悔しかったかもしれないけれど、彼女への愛情は、あったということですね。だから、きっと、お母さんはつながっていたんですよ。光ちゃんに。」
懍「わかりました。」
蘭「教授、わかったって何が?」
と、蘭の後ろから激しくせき込む音。
杉三「あ、水穂さんが!」
桂子は、急いで立ち上がり
桂子「どうしたんですか!お苦しいのですか!」
たちまち彼の手は血に染まる。
蘭「ああ、手ぬぐい、もってきましょうか。」
と、台所へ移動しようとするが、
桂子「私のハンカチを使ってください。すみません、横になったほうが。どこかに休ませてもらえる場所はありませんか?」
水穂はさらにせき込む。桂子は彼を背負って、居間のソファーに彼を寝かせてやり、ソファーのカバーをかけてやる。
水穂「ごめんなさい、、、汚してしまって。」
蘭「ああ、いいよ。また新しいのをかえばそれでいいから。つらいようなら客間で寝てろ。」
桂子「(水穂の脈をとり)平脈ですよ。大丈夫。」
懍「どこで、そんな言葉を覚えたのです?」
桂子「あ、私、今はしてないけど、看護師の資格取っていたんです。」
杉三「それなら、きっと、光ちゃんを育てられます。看護師は、弱い人を守れる仕事でもあるし、悲しいときもあるけれど、嬉しいこともたくさんある仕事ですよ!」
懍「光ちゃんが、弱い人に手を出すのは、お母さんがそうだったからですね。」
杉三「そうですよ。こんなバカな人間を、彼女は大切にしてくれました。お母さんって、自分はなんでこんなきつい生活なんだろうと思うけど、意外にそうでもないんですよ。それに、気が付けるかは、別の問題だけど。」
蘭「しかし、それがあるからといって、光ちゃんと暮らすことは可能なんでしょうか。まだ問題もありますし。」
懍「いえ、そうなら、水穂さんをあそこまで介助することはできないでしょう。それに、お母さんであることは、光ちゃんにしっかり伝わっている。僕は大丈夫だと思いますよ。」
と、客間から、アリスと光が現れる。
アリス「ごめんね、蘭。ママに会いたいって聞かないから、連れてきちゃった。」
光「ママ!」
桂子「光!ごめんね、本当にごめんね!ママちゃんと罪を償って、絶対に帰ってくるから。それまで、このおじさんたちと待っててくれないかな。」
光「うん、待ってる!」
桂子は光を抱きしめる。二人はすぐに涙が出て、泣きはらす。そこへ、パトカーの音。華岡がやってきたのだ。
桂子「じゃあ、行ってくるから。本当に待っていてね。ほんとうに、すみませんでした。」
と、杉三たちに向かって最敬礼し、玄関から出て行った。
光「ママ!」
振り向く桂子に
光「ママ大好き!」
杉三も涙が止まらなくなってしまう。
桂子はパトカーに乗り込み、パトカーは静かに走り出す。まるで、悲しみを象徴するかのような、赤い夕焼け空のなかへ。
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