霊感課もメンバーが入れ替ったのよ!
私は箕輪まどか。中学三年の美少女霊能者だ。
もう自己紹介で何をどういじっても突っ込まない事にしたからね。
という訳で、今日は恒例の寝て曜日(お父さん談)。
でも、美少女霊能者である私は寝ていられない。
私のバカ兄貴の慶一郎は、とうとう観念して恋人の里見まゆ子さんと結婚した。
新居は里見家の広大な敷地の一角という息の詰まりそうなマスオさん状態の生活が始まり、兄貴は悪霊に取り憑かれたかのように日に日に痩せ衰えている。
でも、今まで散々まゆ子さんに迷惑をかけて来たのだから、それくらいの辛抱は必要なのだ。
兄貴とまゆ子さんは今流行りの「でき婚」なのだ。
「はめられた……」
まゆ子さんに妊娠を告げられた時の兄貴の言葉だ。
「お前ははめた方だろう、箕輪」
兄貴が以前所属していた鑑識課の宮川さんが言った。
どういう意味だろう?
「ま、まどかの前でそういう事は言わないでください、先輩」
兄貴が酷く慌てていたので、きっと都合が悪い事なんだろうと思った。
どちらにしても、根無し草のような生活をしていた兄貴はとうとう籠の鳥になったという事だ。
まゆ子さん、絶対に逃がしちゃダメですからね。
二人は妊娠がわかった時点で入籍をすませ、まゆ子さんはG県警を退職した。
そのため、霊感課の経理事務をする人に欠員が生じたので、本部長がすぐに動いた。
霊感課は刑事部から独立し、本部長直轄になったのだそうだ。
私達が動き易いようにという本部長の気遣いらしい。よくわからないんだけど。
ところが!
その本部長がやってくれたのだ。
「今日から霊感課で働くことになりました。どうぞよろしくお願いします」
本部長が採用したのは、同級生の力丸卓司君のお姉さんで、かつて兄貴と噂にもなったあずささんだったのだ。
しかも、あずささんはかつてあの暴力的な巨乳の小松崎瑠希弥さんが着ていた制服を着させられた。胸の谷間も太腿も丸見えのバージョンね。
それを知ったまゆ子さんは卒倒しかけたらしい。
当然、兄貴は喜ぶと思ったのだが、
「あずさちゃんは、
そうでもなかった。その方がいいんだけどね。
「どうして力丸君のお姉さんが採用されるのよ?」
もう一人問題児がいた。
親友の近藤明菜。彼女はリッキーが苦手。お姉さんと関係ないのであるが、リッキーがそれを理由に霊感課に入り浸ると邪推しているのだ。
ところで、邪推って何?
どうやら、あずささんが採用されたのは経理の能力が高い事と、朽木家と関わりがあるかららしい。
朽木家は以前、邪教集団の復活の会に狙われた事がある。
本部長はあずささんを霊感課に採用する事でつながりを強化したかったようだ。
でも、それって縁故採用ではないだろうかと明菜が心配していた。問題ないのかな?
ところで、縁故採用って何?
現在、霊感課の所属メンバーは、課長の兄貴、捜査員の私、私の彼氏の江原耕司君、明菜、その彼氏の美輪幸治君、江原ッチの妹さんの靖子ちゃん、そしてあずささん。
差し入れ要員として、リッキーもメンバーなのかも知れないが、あずささんが加入したので、彼の役目は終わりだろう。
しかも、リッキーは自分の好物のコロッケとメンチカツしか持って来ないし。
私達を豚にするつもりなのだろうかと思ったくらいだ。
「弟を見捨てないでね、靖子ちゃん」
あずささんは日に日に出荷が近づいているような太り方をしているリッキーを心配してそう言った。
「見捨てませんよ、お姉さん」
靖子ちゃんは笑顔全開で応じた。あずささん、靖子ちゃんはデブ専ですから心配要りませんよ、とは言えない。
「そうなんですか」
あずささんは靖子ちゃんの笑顔に顔を引きつらせていた。
お題目を唱える時は、笑顔は全開でないといけないんですよ、あずささん。
などと言っても、あずささんにはわからない事だな。
日曜なのにメンバー全員が集合しているのには理由があった。
夏休み中に、私が尊敬している西園寺蘭子さん達がH山のオートキャンプ場で復活の会の残党に襲われたのだ。
そいつらは、あのスーパーおじいちゃんの名倉英賢様によってあっと言う間に退治された。
でも、連中はまだ多くの仲間を日本各地に潜ませているらしいのだ。
「今日はその件もあって、お休みのところ申し訳なかったのですが、集まっていただきました」
本部長が言った。あれ? 本部長、いつものあれを忘れてるのかな?
あずささんはホッとしているようだけど。
「私、怖い」
明菜が震えて美輪君にしがみつく。
「大丈夫だよ、アッキーナ。俺が守るから」
美輪君は明菜をしっかりと抱きしめた。相変わらずのバカップルだ。
でも、明菜が怯えるのは仕方がない。彼女は一度復活の会に利用された事があるからだ。
卑劣な連中だから、どんな方法で仕掛けてくるかわからないのだ。
「俺も絶対にまどかりんを守るからね」
江原ッチが言ってくれたのだが、その視線はあずささんのエロい服装に向けられていた。
「江原耕司様、後でゆっくりとお話致しましょう」
私は舌を噛みそうになりながら江原ッチに告げた。
「ひいい!」
江原ッチは蒼ざめていた。
「そこで、皆さんにお渡ししたいものがあります。三ヶ月あまりの時間をかけてようやく完成したのです」
本部長はその手に身代わり地蔵をたくさん持っていた。
「これを肌身離さず、入浴時にも必ず持っていてください。そうすれば、復活の会の連中に身体を乗っ取られる事はありません」
明菜とあずささんが我先にと身代わり地蔵に飛びつこうとした。
「ダメ、明菜、それに触っては!」
私は江原ッチと顔を見合わせてから叫んだ。
「何でよ?」
明菜は涙目で私を睨んだ。あずささんはキョトンとしている。
「本部長はもう身体を乗っ取られているわ! 離れて!」
私の言葉に仰天した明菜だったが、腰が抜けてしまったのか、その場にへたり込んだ。
「アッキーナ!」
美輪君が素早く動き、明菜を抱きかかえて本部長から離れた。
「あずささん!」
江原ッチがあずささんを助けようとしたので、
「あずささん、こっち!」
靖子ちゃんと連携して、江原ッチの「魔の手」からあずささんを守った。
ある意味、本部長に取り憑いた復活の会のメンバーより危ない可能性がある。
「まどかりん、靖子ォ……」
自分の信頼度が失墜している事に気づいた江原ッチは泣きそうだ。
「よく気づいたな、箕輪まどか。成長したのは胸だけではないようだな?」
本部長に取り憑いた復活の会のメンバーが言った。
「う、うるさいわね!」
私は思わずその豊満な胸を手で隠しながら応じた。
な、何よ、文句あるの? いいじゃない、誰にも迷惑かけていないんだから!
何だ、こいつ? いつもと雰囲気が違うぞ。
「いつも入って来るなり、あずささんの制服姿を誉めるのが本部長の日課なのよ。それがないので、おかしいと思ったの」
私はドヤ顔で名推理を展開した。
「なるほど。こいつはそんなセクハラオヤジだったのか。それは気づかなかったよ」
本部長に取り憑いた奴の霊体が本部長から離れて姿を見せた。
その途端、本部長はドスンと床に倒れた。顔からいったので、相当痛かったかも知れない。
「女?」
そう、本部長に取り憑いていたのは女性の霊体だったのだ。
結構な吊り目で茶髪のロングヘアをボリュームアップしている。唇は血のように赤く、
その上、服装があずささん以上にエロい。蘭子お姉さんの親友の八木麗華さんといい勝負。
上下共に漆黒と表現するのが一番合っている妙な形の服だ。強いて言えば、装束?
胸は谷間どころか、半分くらい見えており、履いているスカートも少し屈むと丸見えになりそうだ。
「手強そうだな」
緊張感のある言葉を口にする江原ッチだが、その鼻の下はみっともなく伸びていた。
後で厳重注意ね。
「今回は挨拶に来ただけだから、安心しな。私は
エロ姉ちゃんはそれだけ言うとフウッと消えてしまった。
「何が起こってたんだ?」
美輪君がまだふらついている明菜を支えたままで尋ねた。
「実はな……」
江原ッチは早速神田原明鈴の姿形を克明に美輪君に説明し、
「強敵だろ、美輪?」
「確かにな」
ダブルエロコウジになってしまった。
後で明菜とダブルお説教をしないと。
「本部長、しっかりしてください」
優しいあずささんが本部長を揺り起こした。
「あれ、私は一体?」
鼻を赤く腫らした本部長は涙目で起き上がりながら、しっかりとあずささんの胸と太腿を凝視していた。
大丈夫なのだろうか、こんな事で?
先行き不安なまどかだった。
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