瑠希弥さんが東京に帰るのよ!
私は箕輪まどか。中学二年の霊能者だ。
この前、変態先生が代理で来て一時騒然とした我が校だったが、それも一件落着し、私の彼氏である江原耕司君のお母さんの菜摘さんの取り成しで、新に代理の先生が来た。
椿直美先生。二十四歳。
私のお師匠様の小松崎瑠希弥さんほどではないけど、巨乳で美人。
いや、年齢が上なだけ、美という点に関して言えば、椿先生の方が上かも。
瑠希弥さんは美人だけど、まだ二十歳だから、色気はないとクラス担任の藤本先生が言っていた。
あの先生、亡くなった奥さん一筋かと思ったら、瑠希弥さんと椿先生をしっかり観察していた。
本当に、男って奴は!
ある日の下校デートの時。
いつになく江原ッチが元気がない。
「どうしたの、江原ッチ? 元気ないね?」
心配になって尋ねると、何故か江原ッチはビクッとした。
どういう事? 素早く心を覗こうとしたが、さすが江原ッチ、すぐにガードしてしまう。
「いや、何でもないよ」
「何でもないのに、どうして心をガードしたのよ?」
私は江原ッチに詰め寄るが、周囲の視線を感じてやめた。
そこはコンビニだったからだ。
「ここでは話せない。家まで来てよ、まどかりん」
江原ッチは悲しそうな目で言った。
「わかった」
何を隠しているのかわからないけど、どうやらあまり嬉しい話題ではないようだ。
江原ッチの家に行くと、何故かボクッ娘の柳原まりさんが先に来ていて、江原ッチの妹さんの靖子ちゃんと話していた。
「あれ、まりさん、どうしたの?」
私はまりさんがいるとは思わなかったので、つい尋ねてしまった。
「うん、ちょっとね」
まりさんも悲しそうだ。靖子ちゃんも私を見ないようにしている。何だろう?
まさかとは思うが、私に内緒で最終回ではないでしょうね?
嫌な予感がする。
あれほど九月が誕生日だとアピールしていたのに、誕生日エピソードはなく十月になってしまったくらいだから、考えられない事ではない。
「揃ったみたいですね。こちらにどうぞ」
すると邸の奥から菜摘さんと雅功さんが現れ、私達は道場へと案内された。
道場に入ると、そこには瑠希弥さんと椿先生がいた。
二人は仲良く歓談している。知り合いなの?
「お待ちしていました、まどかさん、まりさん」
瑠希弥さんは笑顔で言った。私とまりさんは思わず顔を見合わせてから、もう一度瑠希弥さんを見た。
「私の姉弟子の、椿直美さんです」
瑠希弥さんが椿先生を紹介した。私はまたまりさんと顔を見合わせてしまった。
「私、西園寺先生のところに戻る事になりました。それで、直美さんにお願いして、こちらに来ていただいたのです」
瑠希弥さんのその言葉は、最終回以上に衝撃的だった。
「ええ?」
私とまりさんはほぼ同時に叫んでいた。
「まさか、瑠希弥ちゃんがG県の江原先生のところにいるとは思わなかったけど、偶然とは思えないこのお話に、私は強い宿命を感じました」
椿先生は微笑んだままで話す。私とまりさんと江原ッチは真剣な表情でそれを聞いた。
「サヨカ会は私達の村でも脅威でした。それが壊滅してくれたので、私は今こうして教職につけているのです。だから、瑠希弥ちゃんと
椿先生の住んでいた村は、サヨカ会の大きな施設があり、村にいた霊媒師の皆さんが監禁されていたのだそうだ。
そのサヨカ会の大元を私達が潰したので、椿先生達は解放されたらしい。
「今度は私が貴女達を守ります、まどかさん、まりさん」
椿先生は真顔になって言ってくれた。私とまりさんは感動して目を潤ませた。
江原ッチは、椿先生にうっとりしているようだ。まあ、今日は大目に見ましょうか。
「まどかさん、まりさん、ごめんなさいね。本当はもっとずっと一緒にいたかったんだけど」
瑠希弥さんが涙ぐんで言ったので、靖子ちゃんが泣き出してしまった。
そうなると、私とまりさんも堪え切れない。声を上げて泣いてしまった。
「ごめんなさいね」
瑠希弥さんは私とまりさんと靖子ちゃんを抱きしめてくれた。
それを江原ッチが羨ましそう見ていたのを私は後で知る事になる。
「そんな、謝らないでください。瑠希弥さんが蘭子お姉さんのところに戻りたいのは、私も知っていた事ですから。それなのに、あの時も残ってくれたから、本当に嬉しかったんです」
私は涙を拭い、嗚咽を抑えながら言った。靖子ちゃんはまだ泣いていて、まりさんが慰めている。
「まどかさん……」
瑠希弥さんはウルウルした瞳で私を見つめた。何だかそんな気はないのにドキッとしてしまう。
そして私達はまた抱き合って泣いてしまった。
菜摘さんと椿先生ももらい泣きしていたのを江原ッチに後で聞いた。
と同時に江原ッチにお説教したのも事実だ。
「直美さんは、私以上に力があるから、きっとまどかさんとまりさんのためになるわ。頑張ってね」
瑠希弥さんが涙を拭って言った。私とまりさんは黙って頷く。
「よろしくお願いします、椿先生」
私とまりさんは、椿先生を見て頭を下げた。
「こちらこそよろしくね、箕輪さん、柳原さん」
椿先生は涙を拭ったハンカチを後ろ手に隠して言ってくれた。
そんな私達のすぐ近くに、すでにサヨカ会の残党の魔の手が迫っていた。
それに気づかず、号泣したまどかだった。
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